inti-solのブログ

inti-solのブログ

2011.01.02
XML
カテゴリ: 環境問題
チリの太平洋沖に、イースター島(パスクワ島)という島があります。モアイ像で有名ですね。
イースター島は面積が約160平方キロ、小豆島より少し大きく、利尻島より少し小さいくらいの大きさです。人口は、現在は約4000人。
このイースター島に人間が初めて足を踏み入れたのは、西暦4~5世紀頃のことだったとされています。タヒチ島方面からカヌーでやってきた、ポリネシア人たちです。その人数は、おそらく十数人から、せいぜい数十人程度だったはずです。
彼らがこの島に足を踏み入れたとき、この島は椰子を中心とする熱帯雨林の深い森に覆われていたことが、今日の花粉分析で分かっています。
しかし、その後島の人口は数百年の間にどんどん増えた。人口が増えれば、森がどんどん切り開かれます。
更に、8世紀か9世紀頃からは有名なモアイ像が作られはじめます。作ったモアイ像を運ぶのに、丸太を並べて、その上を転がしていったと考えられており、そのためにも大量の木が伐採されました。
島の人口は、16~7世紀頃には、1万人近くとも、2万人近くとも言われる(正確な人数は不明)数に達しました。しかし、そのときには島の森は丸裸にされていたのです。モアイ像作りは宗教的な意味合いがあって、人口が急増して食糧事情が厳しくなり、森がどんどん姿を消していく中で、人々はモアイ像作りを自重するどころか、むしろ間合い像造りが加熱して、森林の伐採に一層の拍車をかけていったようです。
ポリネシア人は、非常に優れた航海技術を持っています。何しろ、広い太平洋をカヌーで漕ぎ渡っていった人たちです。おそらくは、それまで住んでいた島で食糧事情が厳しくなると、住民の一部がカヌーで漕ぎ出して、新天地へと渡っていったのだと思われます。イースター島に最初に渡ってきた人たちも、おそらくはそういう経緯で故郷を離れて太平洋を漕ぎ渡ったのでしょう。
しかし、イースター島の人口が増えすぎてしまったとき、彼らはもう他の島に向けて脱出することは出来なかったのです。なぜなら、船を造るのに必要な木が、もうなかったから。


この島にヨーロッパ人が初めて足を踏み入れたのは、1722年のことです。島の人口が最大を記録したときから、おそらく100年かそこらしか経っていなかった時期と思われますが、そのとき島の人口は600人ほどになっていたそうです。遺棄された多くのモアイ像の高度な建設技術とは裏腹に、生き残っていた人々は、石器時代の生活水準まで退行していました。それでもなお、島に到達したオランダ船は、島内でまだ部族間の戦争が行われていることを目撃しています。そして、島内はそのとき、一面の草原で、樹木はまったくなかったというのです。

-----

いろいろな意味で示唆に富む話です。イースター島という限られた大きさの島で、人が生態系の許容力を超えるほど増えてしまった結果、あるところを契機に、一挙に破局的な事態に至ってしまった、ということです。
これは、地球全体、人類全体の将来についても当てはまる話かも知れません。

もちろん、地球はイースターよりずっと巨大ですから、生態系の許容力もまたイースター島よりずっと巨大です。でも、宇宙から見れば地球だって実にちっぽけな存在、とも言えるのです。また、現代人が消費する資源・エネルギーはイースター島の人々が使っていたそれよりも、遙かに巨大になっているでしょう。

イースター島の人口は、最盛期には1万人か、ひょっとすると2万人にも達した可能性があると書きました。冒頭に、イースター島の大きさを、小豆島より少し大きく、利尻島より少し小さいと書きましたが、その小豆島の人口は約3万2000人、利尻島は約6000人です。利尻島はまだしも、小豆島は破滅的事態に陥ったときのイースター島より更に人口が多いのです。
イースター島が破局的事態を迎えたときの人口を2万人と仮定すると、島の人口密度は1平方キロあたり125人ほどになります。1万人とすれば63人に過ぎません。一方、日本の人口密度は、1平方キロあたり340人あまりに達しています。
もちろん、世界全体の人口密度はこれよりはずっと少ないです(1平方キロあたり約50人)。また、いくら自然破壊が進行していても、さすがに地球上から森林が全部姿を消す事態は、当面のところ想像しがたいものはあります。でも、これからもどんどん人口が増え、資源エネルギーの消費がひたすら増大する一方だったら、それも保証の限りではありません。

このまま人類が増え続け、資源エネルギーの消費が右肩上がりで増大する一方だったら、いつかイースター島の悲劇が地球規模で再現されることになりかねません。
でも、数日前の記事でも書きましたが、世界でも有数の資源エネルギーを消費している日本は、人口が減り始めています。日本に限らず、先進諸国(=資源エネルギーの消費量が大きい)は、米国を例外としていずれも出生率が下がっており、人口の増加もほぼ止まっているか、減り始めています。経済成長著しい中国やインドも、出生率はどんどん下がっている。
全体としてみても、世界の人口は増加し続けていますけれど、増加のスピードは1990年頃をピークに減速しています。特に資源エネルギーの消費の大きな国々で人口増加の停滞または人口減少が進んでいるというのは、長い意味での人類の将来を考えると、むしろ良いニュースかも知れません。



http://www.asahi.com/national/jiji/JJT201101010006.html

「年間人口減、初の10万人突破=戦後最大、少子高齢化が加速―厚労省」
2010年の人口減少幅は戦後最大の12万3000人に上り、初めて10万人を突破したことが31日、厚生労働省の人口動態統計の年間推計で分かった。
厚労省によると、10年に国内で生まれた赤ちゃんは前年比ほぼ横ばいの107万1000人。死亡数は高齢化の進行により前年比5万2000人増の119万4000人だった。死因は例年同様、がん、心臓病、脳卒中が上位を占めている。
出生数から死亡数を引いた「自然増減数」は12万3000人で、統計資料が残る1947年以降で最大の減少幅となった。(以下略)
-------------------

先日の記事





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2011.01.03 00:38:22
コメント(2) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


示唆に富むお話です  
たかさん さん
イースター島のお話は、とても考えさせられます。地球全体で同じようなことが起こっても不思議ではありません。その時に地球を脱出して他の星に住むなんてことは現実には無理ですから、なおさらですね。

小豆島に私は行ったことがありますが、自然がまだまだ残っている島だと思ってました。それでも壊滅的状況に陥った時のイースター島より人口が多いのにぴっくり。もっとも島の中だけで自給自足の生活をしているわけではないので暮らしていけるんでしょうが…。

地球全体で見たら、人類は「自給自足」の生活をしているわけですもんね。 (2011.01.03 07:41:32)

Re:示唆に富むお話です(01/02)  
たかさん
>イースター島のお話は、とても考えさせられます。地球全体で同じようなことが起こっても不思議ではありません。

そうなのです。何度も書いているように、人口減によるデメリットはものすごくたくさんあります。だけど、それでもなお、人口が増え続けて、資源エネルギーを食いつぶして破滅的事態に至るよりは、「まだマシ」なのではないかと思うわけです。

>もっとも島の中だけで自給自足の生活をしているわけではないので暮らしていけるんでしょうが…。

そういうことですね。島の中だけで自給自足となったら、非常に厳しいと思います。それでも、小豆島の人口密度を計算すると、1平方キロあたり213人ほど。日本全体の平均より、よほど少ないのです。イースター島の場合、モアイ像製作のために木材を浪費してしまったことも、大きな要因でしょうが。

>地球全体で見たら、人類は「自給自足」の生活をしているわけですもんね。

はい。しかも、イースター島は、全島かつては緑溢れる島で、どこにでも人間は居住可能だったと思われますが、地球全体で考えると、極地の氷床や高地、砂漠など、どうやっても人間が住めない(農業生産が望めない)ところもかなり広範囲にありますからね。 (2011.01.03 09:55:05)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: