inti-solのブログ

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2011.04.13
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カテゴリ: 災害
福島原発事故、最悪の「レベル7」に引き上げ

これまでに放出された放射性物質の量を、推定される原子炉の状態から計算した結果、「7」の基準である「数万テラ・ベクレル以上(テラは1兆倍)」に達した。「7」は0~7の8段階で上限の「深刻な事故」で、過去では1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故が唯一の例だ。
保安院の発表によると、3月11日から4月12日午前11時までに大気中に放出された放射性のヨウ素131とセシウム137の総量を、原子炉の状態から推計したところ、ヨウ素の量に換算して37万テラ・ベクレルに達した。内閣府原子力安全委員会も12日、周辺で測定された放射線量をもとに推計したヨウ素とセシウムの大気への放出総量は、3月11日から4月5日までで63万テラ・ベクレル(ヨウ素換算)になると発表した。保安院の西山英彦審議官は「現時点までの放射性物質の放出量は、チェルノブイリ事故に比べて1割前後で、被曝(ひばく)量も少ない」と違いを強調した。安全委員会によると、現在の放出量は、ピーク時の約1万分の1に落ちている。
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何を今更というか、福島第一原発からの放射性物質放出量が数万テラベクレル以上になることは3月26日の段階で報道されており、国際原子力事象評価尺度が最低でもレベル6、おそらくはレベル7になることは、尺度の定義を読めば一目瞭然なのです。このブログでも、先月19日に、保安院の主張する「レベル5」という評価に疑問を呈する 記事を書き 、26日の時点で、「少なくともレベル6、おそらくレベル7」という 記事を書いています

それにもう一つ、気になる記事。

原発周辺「20年住めない」=菅首相が発言、その後否定
菅直人首相は13日、松本健一内閣官房参与と首相官邸で会い、福島第1原発から半径30キロ圏内などの地域について「そこには当面住めないだろう。10年住めないのか、20年住めないのか、ということになってくる」との認識を示した。松本氏が会談後に明らかにしたものだが、首相は同日夜、「私が言ったわけではない」と記者団に語った。(以下略)


この発言、後で否定したそうですが、「言った言わない」はともかく、実際に原発周辺が数十年単位で人が住めなくなる可能性は高いと思われます。これについても、先ほど引用した3月26日の記事で指摘しました。さすがに、チェルノブイリほど広大な面積ではないと思いますが(これ以上汚染が拡大しなければ、ですが)、そういう地域が出てしまうことは避けられないでしょう。

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話は変わりますが、原発のメリットとして、「発電コストが安い」という主張があります。経産省が公表している試算によると、1kWhあたりの発電コストは、

水力 8.2~13.3円 設備利用率45%
石油 10.0~17.3円 設備利用率30~80%
LNG 5.8~7.1円 設備利用率60~80%
石炭 5.0~6.5円 設備利用率70~80%
原子力 4.8~6.2円 設備利用率70~85%
太陽光 46円 設備利用率12%
風力 10~14円 設備利用率20%

ということになっています。実はこの数字には非常にウソが多いのですが、そのことについては後述します。


日本で商業原子炉による発電が始まったのは1970年のことですが、それから2009年度末までの40年間の原発による総発電量は、7兆1195億kWhです。2010年の発電量は2700億kWh前後と思われるので、日本で原子力発電が始まって以来の累計発電量は、だいたい7兆5千億kWhくらいになるわけです。
さて、そこに10兆円の損害賠償額が乗っかると、どうなるでしょうか。日本に原子力発電が導入されて以来の全発電量の発電コストが、これによって1.3円ほど上昇する、ということになるわけです。LNGや石炭とのコストの差はもともと小さいので、原子力に1.3円の補償費用が上乗せされれば、コストは当然逆転します。

さて、経産省の発表している原発の「発電コスト」にはウソが多いと書きました。
具体的にどういうことかというと、基本的に、税金で賄われている費用、先送りされている費用は、このコスト計算には入っていないのです。具体的に言うと、原発設置のために国が地元自治体に出す補助金はコスト計算に入っていません。そして、使用済みの核燃料(高レベル廃棄物)の処理・保管費用も計算に入っていません。日本で原発が動き始めてから40年も経つのに、使用済みの核燃料の最終処分をどうするか、まだ決まっていないのです。決まっていないのをいいことにして、原発の発電コストにその費用を見込んでいません。寿命が尽きた廃炉の処分費用も同様です。
では、具体的に、高レベル廃棄物の処理にはどのくらいの費用がかかるのか。具体的な処理方法が決まっていないので、費用も決まっていませんが、電気事業連合会は、2003年に、再処理工場の稼働開始(当時は2006年を予定)から72年間で18兆9100億円という試算を発表しています。今回の事故の補償金10兆円がかすむほどの高額です。この種の数字というのは、おおむね試算より実際の方が金額が膨らむものです。それに、試算は72年間ですが、高レベル廃棄物は半減期の非常の長い放射性物質が多いので、危険性がなくなるまで、数千年間管理し続ける必要があります。



要するに、負の遺産を我々の子孫に押しつけることによって、今現在の発電コストが安いかのように装っているのが原子力発電の発電コストなるものの正体なのです。

他に原発の発電コストから除外されているのは、揚水発電所の費用です。原発と揚水発電所の関係については、 以前の記事 で説明したことがあります。原発は、出力を落としての運転が出来ないため、揚水発電所が必須なのですが、その揚水発電所の発電コストは、1kWhあたり30円以上と非常に高い。これを原発のコストから除いているのです。
さらに、設備利用率70~85%という計算の全体も、現在の原発の稼働率の実態から乖離しています。原発は、燃料(ウラン)の値段より発電所のうつわの値段の方が遙かに高価です。うつわの値段は固定費なので、稼働率が高ければ高いほどコストは下がる計算です。しかし、現実には現在の原発の稼働率はそんなに高くありません。

つまり、このように原発のコストが安く見えるように操作したコスト計算でもなお、石炭やLNGによる火力発電とのコストの差は、ごくわずかしかないのです。実際のところは、石炭やLNGより原発の方が遙かに高コストと思われます。そこに損害賠償が加われば、尚更です。もっとも、損害賠償を国に立替させて、相変わらず「原発は低コスト」と言い続けるつもりでしょうか。もっとも、そんなことを言っても、もはや信じる人は少ないでしょうが。





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最終更新日  2011.04.13 22:56:49
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