inti-solのブログ

inti-solのブログ

2011.05.25
XML
カテゴリ: 環境問題
原子力発電というものがもつ、構造的な欠陥を指し示す言葉に「トイレのないマンション」があります。
すなわち、原子力発電は、使用済み核燃料などきわめて危険な放射性廃棄物が大量に生じるわけですが、この放射性廃棄物をどう処理し廃棄するのかを決めないまま、発電のみがどんどん続けられ、放射性廃棄物もどんどん生み出されてきた、という意味です。

私の記憶では、原発を「トイレのないマンション」と評する言葉は、チェルノブイリ事故以前からあったように思います。つまり、25年以上も昔から、原発の抱える問題として「トイレのないマンション」と指摘され続けてきたわけです。
事故というのは、起こるか起こらないかは事前には分からないものですが、廃棄物はそうではありません。原発を運転すれば必ず放射性廃棄物が生み出されるというのは、事前に分かっていることです。それにもかかわらず、それをどうするか、対策を決めてこなかった。

いや、放射性廃棄物処理の第1段階については、一応決まってはいます。青森県六ヶ所村に再処理工場を建設し、使用済み核燃料の再処理(ウランとプルトニウムを抽出)する。ただし、再処理工場の建物は、2兆円もの巨費を投じて完成していますが、肝心の再処理はまだ始まっていません。現在は、高レベル廃棄物の大半はフランスの再処理工場で再処理されています。
いずれにしても、再処理工場でウランとプルトニウムを抽出した後、最終的にまったく利用価値のない高レベル廃棄物が残るわけです。
利用価値はありませんが、高濃度の放射線と高熱(当初の温度は200度とされる)を放出する、きわめて危険な存在なので、ガラスで固めた「ガラス固化体」にして、ステンレスの容器に封入して保管されています。
この高レベル廃棄物、半減期の長い放射性物質が多いため、数千年単位の保管が必要と言われています。そんな危険なものを、そんな長期間どうやって保管しましょうか。

何も決まっていないのです。


実は、このような欠陥は日本の原発に特有ではなく、世界のどの国でも、高レベル廃棄物の最終処分場は決まっていません。唯一決まっているのがフィンランドのみ。フィンランドは日本と同じく意の面積で人口は遙かに少ない。しかし、もっと国土面積が広くて人口密度も少ない米国でも最終処分場が決められないのですから、狭くて人口密度の高い日本で決められないのもある意味仕方がないことです。

ともかくも、こんなに危険な高レベル廃棄物をどうするかも決まっていないのに、日々新たな高レベル廃棄物が生み出されているのが、原子力発電というものです。
その結果、各原発には行き場のない使用済み核燃料が大量に溜め込まれています。福島第一原発の4号機が、定期点検中で原子炉が止まっていたにもかかわらず爆発したのは、使用済み核燃料の製であることは周知の話です。

で、もちろん経産省が「安い」と宣伝する原発のコストには、この未確定な最終処分費用は含まれていないわけです。数千年分の保管費用なんて、計算のしようもないのかも知れないけど。

電力会社は、原発の安全性の宣伝のために「五重の壁」なるものを宣伝してきましたが、何のことはない、五重の壁があるのは原子炉内の核燃料だけです。使用済み核燃料は、原子炉建屋内でむき出しのプールに保管されているから、圧力容器も格納容器もない、建屋の壁しかないのです。

さて、この危険な高レベル廃棄物について、「画期的」な解決策を主張している御仁がいます。原発の問題について狂った主張を展開するオピニオンリーダーとなった池田信夫です。少し前に、彼の暴論を批判する 記事を書きました が、彼のブログを見ると、暴論は更に続いているようです。




最終処理は国内でできず、六ヶ所村の中間処理場も稼働していないため、核のゴミは満杯で、特に福島第二原発に貯蔵されている使用ずみ核燃料はキャパシティが限界に来ているという。経産省の官僚が書いた怪文書「19兆円の請求書」のいうように、核燃料サイクルにこれ以上コストをかけることは正当化できない。地下数百mに埋めることは可能だが、周辺の住民が反対するので国内では困難だろう。
しかしこの問題の解決は、技術的には容易である。大前研一氏もいうように、再処理なんかしないで、放射性廃棄物をドラム缶に入れて日本海溝の底1万mに投棄すればいいのだ。しばらくするとプレートの中にもぐりこんで危険はなくなる。海洋投棄はロンドン条約で禁止されているので法的には不可能だが、これには政府内でも異論があり、条約を脱退すれば投棄できる(半年前に通告するだけで脱退できる)。
もう一つの解決策は、毎日新聞が報じたようにモンゴルなど途上国に核のゴミを「輸出」することだ。これは経産省が進めていたが、外務省が反対して止まっている。しかし貯蔵するだけなら、途上国に開発援助と交換で引き取ってもらうことは可能である。世界には人の立ち入らない砂漠や山地はいくらでもあり、有害な産業廃棄物も放射性物質だけではない。これは有害な廃棄物の不法投棄を禁じたバーゼル条約に違反しないように注意が必要だが、当事国の合意があれば海外投棄は可能である。
最大の障害は、こうした「公害の輸出」に対する政治的な反対が強いことだ。毎日新聞は核のゴミの輸出が犯罪であるかのように騒いでいるが、モンゴル政府は合意しているのだから、これはパレート効率的な取引であり、温室効果ガスの排出権取引と同じ「コースの定理」の応用だ。CO2ならいいが核のゴミはだめというのは、筋が通らない。
河野氏も「海外投棄はビジネス的には可能だが、国際世論が許してくれるかどうか」と言っていたように、これはもっぱら政治的な問題である。逆にいえば、日本政府の政治的意志が明確なら、取引に応じてくれる途上国はいくらでも見つかるだろう。再処理をやめれば、原発のバックエンドのコストは大幅に下がり、その経済性も高まる。原子力は政治的なエネルギーであり、それを解決するのも政治しかないのだ。

-----------

いやあ、すごい理屈です。だいぶ昔、1980年代だったと記憶していますが、ドラム缶に貯蔵されていた低レベル廃棄物を海洋投棄する計画を日本が立てた際、太平洋上の島国などから猛烈な反発を浴びて計画中止に追い込まれたことがあります。低レベル廃棄物だけでもそうなのですから、高レベル廃棄物の海洋投棄など出来るわけがない。
放射性物質の海洋投棄を禁じたロンドン条約を脱退すれば海洋投棄可能、というのも暴論です。核拡散防止条約を脱退すれば原爆を作っても問題ないでしょ、というのと同レベルの話です。脱退するという行為自体が、国際秩序に対して喧嘩を売る態度だということを理解していない。

「日本海溝の底1万mに投棄すれば~しばらくするとプレートの中にもぐりこんで危険はなくなる」という一文もすさまじいものがあります。


モンゴルなどに核のゴミ輸出というのも、地域エゴの最たるもの。「世界には人の立ち入らない砂漠や山地はいくらでもあり」と言いますが、危険きわまりない核のゴミがあると知れば、求めてその場まで立ち入ろうとする人は確実にいるでしょうね。人の立ち入らないような場所なら警備の目も手薄だから、なおさらです。で、ある日、某国の首都の雑踏の中で、高レベル廃棄物まき散らしテロとかが起こったら、どうするつもりでしょうね。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2011.05.26 20:25:07
コメント(3) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: