inti-solのブログ

inti-solのブログ

2011.07.09
XML
カテゴリ: 環境問題
少し前に、福島市の子どもの尿からセシウム134、セシウム137が検出されたという報道がありました。それに対して、その程度の被爆は問題ない、大気圏内核実験が繰り返されていた1950年代から60年代初めにかけては、今回の事故と同程度(あるいはそれ以上)の被爆が日本でもあったのだ、という「反論」を述べる者も出てきました。
確かに、この程度の被爆では「直ちに健康への被害はない」(聞き飽きた台詞ですが)ことは事実でしょう。でも、10年後20年後にどうなのでしょう。大人ならまず大丈夫でしょうが、子どもはどうなのでしょうか。私にはよく分かりません。(誰にも分からないかも知れないですが)

それにしても、昔は核実験でこのくらいの被曝があったから、今回も大丈夫だという言い方は、どうなのかなあと私は思ってしまうのです。
なぜって、大気圏内核実験は部分的核実験禁止条約によって禁止されているからです。禁止の理由は、言うまでもなく放射能汚染が危険だからです。(地下核実験は、その後も長く容認されてきた)
1950年代60年代の大気圏内核実験と同程度の被爆だから問題ないのだ、という言い方をするなら、それでは何のために大気圏内核実験は禁止されているのかということになります。ならば核実験は禁止しなくてよいということなのでしょうか。


ところで、では50年以上も昔に繰り返されてきた大気圏内核実験というのは、どういうものだったのでしょうか。
特に有名なのは、1954年のビキニ環礁での水爆実験です。日本のマグロ延縄漁船第五福竜丸が巻き込まれ、乗組員全員が被曝して、うち一人が亡くなりました。
このとき、第五福竜丸は爆心から150kmも離れており、米軍の設定した危険水域の外側にいたのですが、乗組員の被曝量は少ない人で1.7グレイ、最も多い人で6.9グレイに達したとされています(亡くなった乗組員は5グレイあまり)。グレイ=シーベルトと考えると、亡くなった方は5シーベルトの被曝であり、半数致死量を超えていたことになります。
第五福竜丸が危険水域の外側にいたにもかかわらず被曝により死者まで出したのは、米軍が核実験の規模の計算を誤っていたからです。予定では6メガトン±2メガトン程度の爆発という計画でしたが、実際には15メガトンの爆発でした。もっとも、予定どおりの6メガトンの爆発だったとしても、第五福竜丸はやはり被曝して、死者が出たかどうかはともかく、かなり深刻な健康被害を生じたことに変わりはなかっただろうと思います。


しかし、実は史上最大規模の核実験は米軍によるものではありません。1961年、旧ソ連が行った50メガトン級の核実験(通称ツァーリ・ボンバ)が史上最大です。
結局、この間米ソ両国が繰り広げた核実験は、爆発規模の合計で軽く100メガトンを超え、おそらく200メガトンに達すると思われます。
現在では、核兵器の小規模化(という言い方は非常に変ですが)が進んでおり、メガトン級の核弾頭は姿を消していると言われます。現在主流は1個の核弾頭が200キロトンから300キロトン程度のもの。つまり、200メガトンという数字は、現在の核弾頭で言えば1000発分にも相当する威力ということになります。爆発が無人地帯で行われたというだけで、爆発の規模で見れば、全面核戦争が行われたのに近いほどの核爆発が繰り返されたわけです。

それほどの核実験が繰り返された結果として、莫大な放射能が全世界にまき散らされました。南太平洋や北極海の核実験場からは、日本は何千キロも離れています。それでも日本に放射性物質が降ってきたということは、全世界に降ったということです。おそらく、当時放射性物質が降らなかった場所なんて、この地球上になかったのだろうと(もしあったとすると、南極大陸くらい?)思います。

広島の原爆の爆発規模は15キロトン程度と見積もられています。つまり、その後全世界で切り広げられた核実験の爆発力合計は、おそらく広島型原爆の1万数千発分ということになります。ヨーロッパ全体に深刻な核汚染を引き起こしたチェルノブイリの事故で放出された放射性物質は、広島型原爆の数百発分とされます。今回の福島第一原発の事故は、そのチェルノブイリの1/7程度の規模(放出された放射の雨量で)とされています※。つまり、今回の事故は広島型原爆の数十発から100発分程度の放射能量だということになります。もの凄い量です。そして、その福島第一原発から、福島市までは60キロから70キロ離れています。70キロも離れていると見るか、70キロしか離れていないと見るかは、人によって違うでしょうが、第五福竜丸は、爆心から150キロも離れていても、致死量の放射能を浴びました。ま、放射能の総量は、おそらく第五福竜丸事件の水爆実験の1割以下だとは思いますが。

※このブログで、以前に「チェルノブイリの2~6%の規模」という 記事を書いた ことがありますが、その後今回の事故の規模が上方修正されています。

追記
報道によると、福島の子どもの尿検査は5月上旬と5月下旬の2回行われ、セシウム134/137は2回とも検出されたものの、放射性ヨウ素は1回目しか検出されなかったとか。しかし、逆に考えると、5月上旬というのは原発事故から2ヶ月近く経過した時期であり、その時点でまだ体内から放射性ヨウ素が検出されたということは(放射性ヨウ素の半減期は8日)、当初はいったいどれだけの放射性ヨウ素を内部被曝したのか、という危惧を抱きます。
チェルノブイリの例で言うと、子どもの甲状腺ガンが急増したのは事故から5年以上経過した後のことです。福島の場合はどうなるのだろうか・・・・・・。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2011.07.10 10:25:41
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: