inti-solのブログ

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2012.10.02
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私は普段ほとんどテレビを見ないのですが、台風が関東を直撃していた日曜の夜、たまたま「世界の果てまでイッテQ」という番組を見てしまいました。イモトアヤコがマッターホルンに登頂する、という番組です。

個人的なことを言うと、私はもともと無雪期の山しか登ったことがなかったのですが、その私に雪山の楽しさを教えてくれたのは、職場のある同僚でした。一緒に山に登った回数は、ほんの3回か4回で、以降再び単独行ばかりになってしまったのですが、ともかくこの人と出会っていなかったら、私は冬山には登っていなかったはずです。で、この同僚がマッターホルン登頂経験者でした。日本では、槍ヶ岳の北鎌、谷川岳一の倉沢、北岳バッドレスなどなど、名だたるバリエーションルートの数々を登っている人で、富士登山マラソンにも出場し、優勝者(富士吉田市役所から山頂まで2時間半から2時間40分程度)の1時間遅れくらいの記録を持っている人です。が、その人が、マッターホルンでは「ガイドが足が速くてかなわなかった」と言っていたことを思い出します。マッターホルン登頂では、それほどの脚力を要求されるわけです。

ネットで検索したところ、マッターホルン登頂ツアーの案内を発見しました。

マッターホルン(4,478m)登頂10日間:海外ツアー

◆シュバルツゼー~ヘルンリ小屋:標高差677mを2時間30分
◆ヘルンリ小屋~ソルベイ小屋:標高差743mを2時間30分
◆ソルベイ小屋~マッターホルン山頂:標高差475mを2時間30分
◆マッターホルン山頂~ヘルンリ小屋:標高差1218mを4~5時間


一般の登山道なら、この標高差をこの所要時間で登るのは困難ではなく、私でもクリアできます。ただ、実際には一般の登山道ではなく岩場ですから、このペースは相当にキツイことは容易に想像できます。

で、この山に、タレントのイモトアヤコが挑んだ、というのです。正直言って、あの画面を見て「私には絶対登れない」と確信しました。私のレベルの山登りで歯が立つような代物ではない。
その、私だったら絶対登れないであろうマッターホルンに女性タレントが登った、というのはなかなかすごいことではあります。もちろん、一番すごいのは、彼女を登らせた登山ガイドですけどね。岩登りでは、トップとセカンドの困難度は大きく違うと言われますから。もちろん、私はたとえセカンドでも無理です(きっぱり断言)。それにしても、番組中で「体力的には問題ない」と言われていただけのことはあります。

ただ、そうは言っても、下山にヘリコプターを使う前提というのはどうなんだろうか、というのは、多少の疑問はあります。まあ前例のない話ではありませんけどね。1978年、冒険家の植村直己が犬ぞりで単独北極点到達を果たした際は、あらゆる装備を飛行機で補給して、北極点からの帰路は飛行機で帰っています。(その足で、グリーンランド単独縦走を果たす)
もっとも、極地冒険の場合は、行きも帰りも危険度に大差はありませんが、登山の場合は登りより下りの方が危険です。(初登頂に成功したエドワード・ウィンパーの一行も、下山時に4人が墜死)だから、下山を抜きにして登頂というのはどうなのかな、という気がしないでもありません。
もっとも、下山のシーンはカットして、ヘリで下山した事実は伏せてしまう選択しもあったのかも知れませんが、あえて正直に放送した点は良かったのかも知れません。



番組中で、来年は8000メートル峰(名は明示されませんでしたが、おそらくチョー・オユー)、再来年はエベレスト(チョモランマ)という、かなり凄まじい予定が発表されていましたけど、さすがにエベレストというのはどうでしょう。マッターホルンに登ったことを考えると、体力・技術的にはまったく不可能ではないでしょうが、命の危険がかなり高い。本人自身が登頂を熱望しているならともかく、テレビ番組の企画としてタレントにそこまでやらせるというのは、ちょっとどうかという気がしないでもありません。

なお、イモトがこれまでにこの番組で挑んだ山は、モンブラン(4810m)、キリマンジャロ(5895m)、アコンカグア(6962m、失敗)だそうですが、この中でもマッターホルンはもっとも困難な山と思われます。技術的には(体力や高山病の要素は抜きにして)、難易度はおそらくキリマンジャロ<アコンカグア<<モンブラン<マッターホルンの順で、アコンカグアまでは体力と高度順応さえクリアすれば、特別な技術はいらないと言われます。私の場合、技術と体力以前に金と時間と家族の承諾が最大の関門ですが。





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最終更新日  2012.10.02 22:33:36
コメント(8) | コメントを書く
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Re:マッターホルン登頂(10/02)  
おっちゃん さん
>私の場合、技術と体力以前に金と時間と家族の承諾が最大の関門ですが。

ご家族の思いは健全ですね。
心の奥に「登りたい」という気持ちがあるのならそれを抑えるべきでしょう。
仮に技術や体力や資力があったとしても、人間としてやって良いことと悪いことがある。 (2012.10.03 17:04:07)

Re[1]:マッターホルン登頂(10/02)  
inti-sol  さん
おっちゃんさん

>ご家族の思いは健全ですね。

いや、何しろ私は「一人が海外の山に登ってくるので1ヶ月家を空けます」なんて台詞を吐いたことがないので、そう口にしたとき相棒からどういう反応が返ってくるか、実際には分からないのです。恐ろしくて、そんな台詞は口にできないだけのことで。

>仮に技術や体力や資力があったとしても、人間としてやって良いことと悪いことがある。

別に、海外登山が「人間としてやって悪い」なんてことはないと思うんですけどね。もちろん、モンブランやマッターホルンとなったら、それなりの危険を伴いますが、キリマンジャロとアコンカグアは、生命の危険はまずないですから。アコンカグアは、特別な氷雪技術や岩登り技術がなくても登れる世界最高峰とされます。もちろん、季節と積雪量によりますが。
資力に関しては、日本からツアーで行くとなると結構な金額になってしまうのですが、現地で自分で交渉するつもりなら、はるかに安価に済ませられるようです。ガイドなしなら、もっと安上がりかも。
うん、いつかは登りたい、子どもが成人したら・・・・・・。しかし、そのとき今の体力が維持できているかどうかが問題です。10年前に比べれば、脚力は明らかに落ちていますから。 (2012.10.03 19:07:04)

Re[2]:マッターホルン登頂(10/02)  
inti-sol  さん
追記です
アコンカグアは、技術的には(季節と条件が良ければ)困難な場所はないとはいえ、体力的にはきわめて過酷です。最終キャンプ地の標高が5900m前後、そこから山頂まで標高差1000m以上を1日で往復しなければならない。海抜1900mから標高差1000mを往復なら簡単なのですが、空気の薄さがまるで違いますからね。私の今の体力でも、ちょっと無理かも知れません。まして、10年後だったら、厳しそうです。 (2012.10.04 00:25:16)

Re[2]:マッターホルン登頂(10/02)  
おっちゃん さん
inti-solさん

>別に、海外登山が「人間としてやって悪い」なんてことはないと思うんですけどね。

私は素人(失礼)が秘境や最果ての地に赴くべきではないという考えです。
探検家とか研究者とか少数の専門家(我々の代表として)にまかせておけばいい。
自然保護とか環境保全とかに関連しての思いですね。
観光もほどほどに、です。

霊峰富士の山頂近くでは都会のラッシュ時の改札口のごとくに人がひしめきあっているそうではありませんか(自由に前に進めないそうです)・・・この光景は何かおかしい。 (2012.10.04 03:49:49)

Re[3]:マッターホルン登頂(10/02)  
inti-sol  さん
おっちゃん

>私は素人(失礼)が秘境や最果ての地に赴くべきではないという考えです。

「素人」と「冒険家」あるいは「登山家」の定義はあいまいです。プロかアマチュアか、ということなら、いわゆる登山家でも、本職は別に持っている人が大半です。
アコンカグアは技術的には平易で体力さえあれば登れるとは言っても、少なくともアイゼン登行ができなければ話になりません。それに、先の追記コメントに書いたように、求められる体力のレベルはきわめて高い。
技術的なレベルは残雪期の富士山程度と思いますが、体力レベルはそんな代物ではありません。登山口からの標高差は、海抜0メートルから富士山頂までプラス500メートル登る計算ですが、空気が薄いので、実際にはそれよりはるかに体力を要するでしょう。

つまり、アコンカグアに登頂可能な体力を持っている、という時点で、すでに充分「選ばれた人」だということです。金と時間があれば誰でも登れる、というわけではありません。

>霊峰富士の山頂近くでは都会のラッシュ時の改札口のごとくに人がひしめきあっているそうではありませんか

私も先月登ってきましたが、そのとおりです。富士山に次に登るのは、もう積雪期でいいかなって思います。
しかし、前述のとおり、アコンカグアは(おそらくキリマンジャロも)、夏の富士山とは求められる体力レベルがまったく違うので、同列に語ることはできません。 (2012.10.05 00:39:15)

Re[4]:マッターホルン登頂(10/02)  
inti-sol  さん
追記

>登山口からの標高差は、海抜0メートルから富士山頂までプラス500メートル登る計算ですが、空気が薄いので、実際にはそれよりはるかに体力を要するでしょう。
富士山を使って別の例えをするなら、大多数の登山者が利用する富士吉田口や富士宮口の5合目から富士山頂までの3往復分です。気圧の差を加味しなくても、です。
なお、アコンカグアの登山口プエンテ・デル・インカの標高は2700mあまりなので、山頂までは4200mほどの標高差になります。 (2012.10.05 20:29:26)

Re:マッターホルン登頂(10/02)  
gkrsnama さん
エヴェレスト上った三浦さんもいますし、おれもって憧れてます。TVは見てないんですが、どうやら彼女は富山の登山研修所で岩のトレーニングを受けたみたい。八峰にもあがったみたい。普通の山ガールとはわけが違う。

奥穂~西穂で怖がり、前穂北尾根をみるだけで足が震えるっていっているこちとらでは無理なんでしょうね。 (2014.03.17 06:58:10)

Re[1]:マッターホルン登頂(10/02)  
inti-sol  さん
gkrsnamaさん

>エヴェレスト上った三浦さんもいますし、おれもって憧れてます。TVは見てないんですが、どうやら彼女は富山の登山研修所で岩のトレーニングを受けたみたい。

私は、エベレスト(チョモランマ)は、登りたいとはそんなに思わないですね。1年半前の記事なので、番組の内容がちょっとうろ覚えですが、確かに国内で岩場の訓練を受けている映像があったように思います。剱岳のバリエーションルートじゃなかったかな、違ったかな。

>奥穂~西穂で怖がり、前穂北尾根をみるだけで足が震えるっていっているこちとらでは無理なんでしょうね。

私は、奥穂~西穂なんて近づいたことはありません。奥穂までと西穂独標までしか行ったことがない。ただ、西穂の本峰までは、近いうちに登りたいと思っています。奥穂~西穂は、そうですね、子どもが成人したあとにアタックしようかな。(私に何かあっても家族が路頭に迷わないで済む年になったら、ということ) (2014.03.17 20:44:31)

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