inti-solのブログ

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2015.09.15
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カテゴリ: 政治
連日安保法案反対の国会前集会の記事を書いていますが、今日は家にいます。
さすがに毎日は行けないので。

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さて、安保法案のどこがそもそも問題なのかについて、改めて考えて見たいと思います。
問題の本質は、これまで違憲とされてきた集団的自衛権を合憲だと憲法解釈を変更した(解釈改憲)ことです。新しい憲法解釈に基づく自衛隊法その他の一連の法改正が、今回の安保法案です。

集団的自衛権とは、すでに何回も説明していることですが、同盟を結ぶ他国が攻撃を受けた場合に、それを自国に対する攻撃とみなして共同で反撃する権利のことです。自国が攻撃を受けたときにそれに反撃するのは、個別的自衛権です。
現状の自衛隊法の条文は、以下のようになっています。

第三条  自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。(以下略)

第七十六条  内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成十五年法律第七十九号)第九条 の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。 (以下略)


これが、改正案だと以下のようになっています。

第三条
自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。

第七十六条
内閣総理大臣は、次に掲げる事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第九条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。
一 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態
二 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態


これまでの自衛隊法第3条では、「直接侵略及び関節侵略に対してわが国を防衛すること」が主たる任務だとしてきたのに、「侵略」という言葉を外しています。同じく、第76条でも、自衛隊出動の条件として「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」という項目が付け足されています。つまり、日本が直接攻撃されなくても「密接な関係にある他国」が攻撃されたら、それに「反撃」するぞ、という内容です。

そもそも、前述のように、戦後一貫して政府が「違憲」としてきた集団的自衛権を、「解釈を変えました」というひとことで「合憲」だと言い換えるやり方は滅茶苦茶です。本来憲法改正を要するような変更を、改正せずに済ましてしまうのでは、今後憲法のどんな条文も、時の政府の意向次第でどうとでもなる、ということになります。安保法制が通れば次は徴兵制では、という危惧に対して、政府は「徴兵制は憲法が禁じているので導入しない」と言っています。しかし、憲法には「徴兵制を禁じる」という条文はなく、18条(奴隷的拘束の禁止)が根拠となっています。だから、「やっぱり徴兵制は憲法第18条に反しません」と解釈を変えればどうとでもなってしまいます。つまり、「徴兵制は憲法が禁じているから」という政府の言い訳が、まったく信の置けないものとなります。



安保法制が目指すものは、結局のところ「我が国と密接な関係にある他国」つまり米国が攻撃を受けたら、日本もそれに対して反撃するぞ、ということにつきます。前記の例で言うと、中国が日本は攻めず、米国を攻撃した場合です。中国は日本を攻めているわけではないのに、日本の側は中国を攻撃する、それは日本と中国の関係では、日本から中国への先制攻撃ということになります。それをやられれば、もちろん中国は日本に対して反撃するでしょう。
つまり、そもそも日本を攻撃してきたわけでもないのに、日本が「反撃」(という名の先制攻撃)をかけることによって、日本に対する攻撃も呼び込むことになります。
安倍政権は、「我が国の存立が脅かされ~る事態(存立事態)」だけだと強調するのですが、実際のところ、「存立事態」の明確な定義はないので、まさしく解釈改憲の問題と同じで、恣意的にどうとでも解釈されかねません。

そして、「米国が攻撃を受けたら」と書きましたが、現実には太平洋戦争以降、米国が関わった戦争のほとんどは、米国は「攻撃を受けた」と言いつつ、実際には米国の側が先制攻撃をかけることで始まっています。
もっとも露骨なのはベトナム戦争でしょう。トンキン湾事件で北ベトナムが先制攻撃をかけたと称して、それに「反撃」したものの、それは真っ赤な嘘であったことが後に発覚しています。アフガン戦争やイラク戦争だって似たようなものです。大量破壊兵器の存在を叫んで戦争を始めたものの、あとでそれがウソであったことが発覚したイラク戦争も、似たようなものです。
結局のところ、米国が「攻撃を受けた」と称する(その実は、米国が攻撃をかけて始まった)戦争に、日本が参戦することになる可能性が高いのです。

先ほど、私は、中国を例にとって説明しましたが、現実的には、中国と米国が、日本の頭越しに直接戦争になる事態は想像し難いものがあります。日中間には様々な対立点がありますが、米中間にはそれほど大きな対立点がないからです。
可能性から言って、集団的自衛権の発動が問題となり得る事態がどこで発生するかといえば、一つは朝鮮半島が考えられます。北朝鮮が韓国(及び在韓米軍)に攻撃をかける、現在の北朝鮮の戦闘能力は低いので、可能性は低いですが、皆無ではない。もっとも、北朝鮮軍が韓国と在韓米軍は攻撃するのに在日米軍に対しては一切攻撃をかけない、などという事態はいささか考え難いですが。仮に、そういう事態が起こったとして、複雑な日韓関係の状況を考えれば、自衛隊が朝鮮半島で軍事行動に参加、などということが絶対不可能であることはありえないことは明らかです。

もう一つの、より可能性が高いのは西アジアでしょう。イラク戦争やアフガン戦争など、この地域で米国はずっと戦争を行っています。そこで米国が行う戦争に、日本が参戦を余儀なくされる可能性は高いと思われます。
日本は、中国韓国に対しては、歴然たる侵略国でした。東南アジアに対してもそうです。しかし、それ以外の国を日本が侵略したことはありません。西アジア諸国を日本が侵略したことは(これまでは)なく、だから対日感情も悪くはありません。それに対して欧米諸国はこの地域に対して植民地支配や様々な悪事を働いた過去があるので、対米感情対欧感情は、よくありません。
現に、過去イスラム過激派による米国やヨーロッパを標的としたテロ事件は数多く起こっていますが、日本を標的とした事件は、皆無とは言いませんが格段に少ない。


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結局、安保法案は、日本が関わる必要のない戦争に参加を強い、出す必要のない戦死者を出し、悪化させる必要のない対日感情を悪化させ、進んで日本をテロの標的に差し出す、そういう結果を招く法案であると言わざるを得ません。それでもこの法案を強行しようというその本音は何か。

突き詰めていえば、「最近米国の日本を見る目が冷たいから、いざと言うときに米国に見捨てられないように戦死者の血で米国への忠誠を示しておきたい」と、そんな本音は国会審議の場では絶対出てきませんが、突き詰めて言えばそういうことなのでしょう。

だけど、そもそも日米関係が目に見えてギクシャクし始めたのは、明らかに安倍政権になってからです。その原因の一部は安倍政権の歴史修正主義的な態度でしょう。また、米国から見れば、無人島に過ぎない尖閣諸島の領有問題などは、どうでもよいことで、巻き込まれることなど御免こうむりたいという意識もあるはずです。結局、最近米国の日本に対する目が冷たい原因の相当部分は、安倍政権が招いているとしか言いようがないのです。

そして、日本が戦死者の血で忠誠を示せば、たとえば尖閣諸島の領有をめぐって日中が争ったときに米国が血を流してくれるのか。米国から見れば、まったくどうでもよいであろう無人島の領有権のために?
とてもそうは思えません。国際関係は、そんな義理人情だけで動くものではないですから。





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最終更新日  2015.09.16 01:00:27
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