inti-solのブログ

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2016.01.13
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富士山滑落犠牲者の遺族が静岡市を訴える 冬山でのヘリ救助失敗は消防の「過失」か


2013年12月1日、富士山御殿場口登山道9.5合目付近(標高約3500メートル)で京都府勤労者山岳連盟のメンバー4人が滑落し、そのうち重傷を負っていた男性を静岡市のヘリが救助しようとした。
静岡市側の説明によると、隊員が男性をヘリに収容する直前で男性をつり上げるための器具が外れ、隊員が男性のえりや体をつかんだ状態でヘリの高度を下げて地上に降ろそうとしたが、隊員が力尽きて地上約3メートルの高さから男性が落下した。再び男性の救助を試みたが、気候が安定していないことや隊員の体力の消耗が激しかったため断念した。
翌12月2日に県警の救助隊が男性を発見したが~死亡が確認された。県警は司法解剖の結果、死因は胸や頭を打ったことによる損傷と寒冷死だったと発表している。
この救助失敗が「ミス」だったのではないかという指摘も相次いだため、消防局の調査委員会が救助に当たった隊員2人への聞き取りや再現実験を行い、検証を進めてきた。14年3月に発表した調査結果では、「隊員に過失はなかった」と結論付けた。
調査結果によると、男性は発見時に胸から下に寝袋型の防寒シートを着用していた。ヘリが男性を救助しようとした際、防寒シートで固定された両脚と分厚い登山靴がヘリの脚に引っかかったが、隊員がそれに気づかずに男性を引き上げようとしたために男性の両脇から救命用具が外れた可能性が高いとみている。

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ヘリコプターで人を吊り上げる行為は、山岳遭難に限らず、海の遭難や大規模災害時に多くの実例があるはずです。しかし、この件以外で、ヘリに吊り上げる途中で人が落ちた、という事故を聞いたことがありません。ひょっとしたら、ヘリによる人命救助の黎明期には起こっていたのかもしれませんが、そうだとしても、経験による救助機器の改良で、そのような事態が起こらなくなって久しい、というところではないかと思います。

山岳遭難に関して、私が度々参考にする、豊後ピートさんのブログには、この事故を詳しく検証する記事があります。

富士山の遭難で機内収容直前に要救助者が落下
富士山の遭難で機内収容直前に要救助者が落下 その2
富士山の遭難で機内収容直前に要救助者が落下 その3

その中で、別のブログからの引用になりますが、要救助者の吊り上げに使った器具について、「このスリングはやわらかく、直径10センチ近くもあるような素材でわっかの大きさは1メートルもあるもので、ただ単に両腕を通すだけのもので、重傷者や意識不明に近い遭難者の吊り上げは、すり抜けるおそれがあるため通常は使用しないもの」との指摘があります。また、下半身に防寒シートを巻いたままで引き上げたらしいこと、その状態では、股間にベルトを通せなかったであろうことも指摘されています。

市の検証結果では「過失はなかった」とのことですが、結果からみれば、吊り上げに使用する用具の選択を誤った、また、下半身に巻いていた防寒シートをそのままにしたため、股間に補助ベルトをとおさないというミスを犯した、ということになるように思います。結果としてみれば、ね。

ただ、何しろ冬の富士山ですから、猛烈な風が吹いていたであろうことは想像に難くありません。高度3500メートルでヘリコプターがホバリングしていること自体が奇跡のような状況です。遭難現場に何度も接近しようとしたものの接近できず、やっと、何とか上空にたどり着いたようです。日没も近い時間だったようですから、時間の猶予もあまりなかったのでしょう。ヘリ自体が墜落する危険性もはらんでいる状況だったと思われます。
ミスと言えばミスなのですが、そんな状況下で完全無欠の判断を求めるのも難しいような気もします。

いずれにしても、遭難であれ災害であれ、その現場でヘリが人を吊り上げるたびに、器具が外れて要救助者が落っこちる、なんて事態が頻発するようでは困ります。過失責任があるのかないのか、損害賠償請求が妥当か、といった点はともかく、再発防止は徹底してほしいところです。





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最終更新日  2016.01.13 23:54:04
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