inti-solのブログ

inti-solのブログ

2016.02.27
XML
カテゴリ: 医療・衛生
福島の子「数十倍」発見…放射線の影響否定的

検討委は疫学やがんの専門医ら有識者で構成。最終案は、2011年10月から昨年4月末まで対象者約37万人のうち約30万人が受診した1巡目の検査結果に基づく。全国の患者の推計によると、検査で見つかる甲状腺がんは福島県の18歳以下で2人程度とされるが、1巡目では100人ががんと確定し、15人が「がんの疑い」とされた。
最終案では「将来的に診断されたり、死に結びつかなかったりするがんを多数診断している可能性がある」と明記。放射線の影響を考えにくいと評価した理由について、チェルノブイリ事故に比べ被ばく線量が少ない▽当時5歳以下からの発見がない▽県内の地域別発見率に大きな差がない−−などを挙げた。
ただし、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ完全には否定できず、将来悪化しないがんを見つけて不安を患者に与えるリスクも受診者に説明した上で検査を継続して実施すべきだとした。中間まとめは3月中に正式に決める方針。14年4月から始まった2巡目の検査では、昨年末現在で1巡目で「がん」や「がんの疑い」と診断されなかった16人ががんと確定。35人ががんの疑いがあるという。
一斉検診で多く
検討委の星北斗座長は会議後の記者会見で、数十倍の甲状腺がんの子どもが発見されたことについて、「一斉検診したことで数として多く見つかった」と述べた。

---

福島で子どもに甲状腺がんが急激に増えていることは、もはや否定しようのない事実と思われますが、国はこれを原発事故が原因とはかたくなに認めないようです。その根拠は、引用記事にあるように、「チェルノブイリ事故に比べ被ばく線量が少ない▽当時5歳以下からの発見がない▽県内の地域別発見率に大きな差がない」という3点であるようです。

「チェルノブイリに比べて被ばく線量が少ない」というのは、どの程度の根拠によるのかが判然としません。いろいろな記事を調べた限り、福島の事故直後に行われた甲状腺被爆調査は、2011年3月下旬に飯舘村、川俣町、いわき市の15歳以下の約1150人に対して行われたものしか見当たりません。

甲状腺被曝の子「健康リスク評価できぬ」 原子力安全委

福島県における小児甲状腺被ばく調査結果について
平成23年5月12日 原子力安全委員会事務局


2つのソースで受診者数が若干違いますが、原子力安全委員会の文書にある「3月24日に川俣町で測定を行ったが、バックグラウンドが高かったことから測定結果に含めていない」というあたりが、その原因なのでしょう。
いずれにしても、おおむね1100人前後についてしか被爆量調査が行われていないようです。放射性ヨウ素の半減期は8日間と短い(上記の調査が行われた時点でも、事故から2週間以上経過しており、放射性ヨウ素は事故時の1/4以下に減っています)ことから、これより後に調査をしたとしても、正確な被爆量を調べることは不可能でしょう。「チェルノブイリに比べて被ばく線量が少ない」と断言するには、調査対象者があまりに少なかったように思います。

「当時5歳以下からの発見がない」という点についていえば、チェルノブイリでも、4歳以下の子どもの甲状腺がんが増加したのは事故から5年目以降だ、という指摘があります。

「県内の地域別発見率に大きな差がない」という点についても、検討委員会は「地域別」を下図の上の表のようにまとめているのに対して、更に詳しく市町村別にまとめると、下の表のようになるとのことです。

甲状腺がん発生率

確かに、原発から近いのに甲状腺がんの発生が少ない、遠いのに発生が多い、市町村は散見されます。しかし、確実に言えることは、同じ福島県内でも、原発から非常に遠い会津地域では、一部例外を除いて甲状腺がんの発生はほとんどない、ということです。
この1点だけで見ても、甲状腺がんの増加と福島の事故が無関係という主張には、強い疑念を感じます。


以前にも書いたことがありますが、児玉龍彦「内部被爆の真実」(幻冬舎新書2011年P76-)によれば、チェルノブイリ事故後の甲状腺がん増加についても、当初は事故との因果関係を否定する主張は強かったようです。つまり、それまでは見落とされていたような甲状腺がんが、検査によって発見されるようになっただけだ、と。奇しくも、その言い分は現在の福島で甲状腺がんの増加と自己の因果関係を否定する主張と同じです。
しかし、この言い分は事故から十数年を経て、完全に否定されました。というのは、事故から15年経ったら、14歳以下の子どもの甲状腺がんの発生率はほぼゼロに戻ったからです。つまり、事故時に生まれても母親の胎内にもいなかった子どもには、検査しても甲状腺がんの増加は認められなかったのです。
この前例に学べば、福島における甲状腺がんの増加も、福島第一原発の事故が原因である-と、断定はまだできないにしても、因果関係が強く疑われることは歴然としているように思えます。しかし、検討委員会はそうは考えないみたいですね。何故なのでしょうか。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016.02.28 07:34:30
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: