inti-solのブログ

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2016.08.04
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テーマ: ニュース(95873)
相模原19人刺殺 植松容疑者が「生活保護」受給できたワケ

市によると、容疑者は今年3月24日から31日まで8日分の生活保護費を受け取っていたという。分からないのは、小学校教師の父親もいて、自動車も所有していた植松容疑者がなぜ、生活保護を認められたのかということだ。
生活保護を受け取る場合、ケースワーカーによる生活実態の確認や収入の調査を経て、審査を通る必要がある。植松容疑者のケースは果たしてきちんと調査したのか。市に問うと「詳細は個人情報なので答えられません」(地域福祉課課長)と回答した。(以下略)

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知人の福祉事務所関係者がこぼしていました。 最近、世間をにぎわす事件の犯人が「無職」である度に、どこかの福祉事務所の「お客さん」だったのではないかとヒヤヒヤする、と。しかし、今回はその可能性は想像もしていなかったそうです。
でも、確かに実際には持ち家だろうが車があろうが、生活保護は受けられるのです。

持ち家に関しては、現在自らが居住している物件は、ある程度以上の資産価値でなければ保有容認だそうです(高齢者の場合はリバースモゲージという別の決まりがあるとのこと)。一定以上の資産価値の住居、あるいは現在本人が住んでいない不動産、自動車(東京23区では)は保有否認とのことです。

しかし、保有否認とは、持っていると生活保護が受けられない、ということではないのです。だって、車だって家屋だって、今日売りに出して明日売れるものではないですから。今手持ち金が1円もなかったら、「資産」があっても、それを金に換えるまでの間に餓死してしまいます。
だから、「保有否認」とは、「生活保護を受けたらすぐに売却しなさい(その収入分の保護費は返還しなさい)」ということであって、持っていては生活保護が受けられない、ということではないのだそうです。
ただし、医療費がかかる場合には、このやり方は、生活保護を受けないで健康保険で医療費を払う場合よりはるかに高い返還金が生じるため、本人にとって不利益になるそうです。だから、資産があって医療費が高額な人の場合は、福祉事務所は生活保護を避けるようにあらゆる手を尽くすそうです。

それから、東京23区(などの大都市)では自動車は、特別な条件に該当する場合を除いてすべて保有否認ですが、地方では違うそうです。知人は東京の福祉事務所関係者なので、他道府県の状況は断片的にしか知らないそうですが、公共交通機関が不便で、自動車が生活に必要不可欠な地域(要するに、辺鄙な場所)では、自動車の保有容認はよくあるそうです。相模原市はどうでしょうか?政令指定都市とはいうものの、この場所は元の津久井郡です。バスの便がどの程度よいのか分かりませんが、自動車は保有容認の可能性が高そうです。
持ち家は、場所柄から考えてもそんなに資産価値が高いとは思えず、それ以前に自動車にしても家にしても、名義が本人自身かどうかという問題もあります。親名義だったら、本人の資産ではないので、そもそも「保有」容認も否認もないし、処分指導も関係ありません。ただし、自動車は、仮に他人名義のものであっても、生活保護の趣旨に反する用途では運転してはいけない、という決まりはあるとのことです。


そういえば、以前、「健康で文化的な最低限度の生活」という漫画を紹介したことがあります。その第3巻に、この扶養照会をめぐるエピソードがあるのですが、知人は「あまりに『あるある』過ぎて、自分や同僚の経験を思い出してしまった」と言っていました。

車にしても家にしても、仮に本人の名義で保有否認だったとすれば、一応は処分指導ということになるそうですが、3月24日に保護開始して、生活保護の受給期間はたった8日です。失業保険が入ったことによって4月(日数から考えて4月1日でしょう)には保護廃止になっています。処分指導も扶養照会も、やる前に生活保護は打ち切りになったわけです。

まあ、実際のところ、若い人の保護申請ほど受けたくないものはないと、知人は言っておりました。色々な意味で手に負えない人の割合が高いのだそうです(今回の犯人も、結果から見れば手に負えない人ですね)。かといって、「あなたは人格に問題があるから保護申請は却下」なんてことはできないのは当然のことです。相模原市の福祉事務所だって、申請を受けたくはなかったでしょうが、受けないという選択肢はないのです。もっとも、失業手当が出るまでの短期間の保護、ということはあらかじめ分かっていたはずなので、その分は多少気が楽だったかもしれない、とのことです。まさか、保護廃止後にこんなことをしでかすとは、その時は予想もしなかったでしょうからね。

「措置入院がすぐ解除されたのがけしからん」という話と同様で、この犯人がこんな事件を起こすことがあらかじめ分かっているものなら、福祉事務所は保護申請を何としても受け付けないでしょう。だけど、そんなことは誰にも分かりません。後になって犯罪を起こしたから生活保護受給はおかしいと言われても、それは結果論であって、無理筋です。だいたい、出所してその足で福祉事務所に来て保護申請するとか、受給者が逮捕された、というのは、それほど珍しい話ではないのだそうです。ここまでの重大犯罪はさすがにまれでしょうが。





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最終更新日  2018.06.09 08:14:29
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Re:受給できたのは不思議ではない(08/04)  
Bill McCreary さん
>「措置入院がすぐ解除されたのがけしからん」という話と同様で、この犯人がこんな事件を起こすことがあらかじめ分かっているものなら、福祉事務所は保護申請を何としても受け付けないでしょう。

わかりっこないんだから、仮定自体に意味がないですよね。

>だいたい、出所してその足で福祉事務所に来て保護申請するとか、受給者が逮捕された、というのは、それほど珍しい話ではないのだそうです。ここまでの重大犯罪はさすがにまれでしょうが。

生保受給者かどうかは不明ですが、極貧の知的障害者が起こしたと思われるこんな事件もありました。inti-solさんに読んでいただきました。

//blog.goo.ne.jp/mccreary/e/6406ea7fdd1f56633e32605a71d7203a

この記事に私は、

>行政その他の支援がなかったことが非常に悪い事態をもたらした大きな要因と思われる強盗殺人事件の実例

という題名をつけましたが、現実問題として的確な支援や保護を行うというのもなかなか難しいことだと思います。 (2016.08.05 07:32:39)

Re:受給できたのは不思議ではない(08/04)  
maki5417  さん
地方と言っても柏の話ですが。
車は他人名義、仕事は水商売で生活保護生活がエンジョイできます。
近所の人は知っていて、知らないのはお役所だけです。
餓死者がでくらるいのところがいいのではないでしょうか。
不幸にして出るのはNGです。 (2016.08.06 00:02:30)

Re[1]:受給できたのは不思議ではない(08/04)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

>わかりっこないんだから、仮定自体に意味がないですよね。

そうです。どうにもならないことです。

>現実問題として的確な支援や保護を行うというのもなかなか難しいことだと思います。

そのとおりでして、生活保護はお金の援助はできても、それ以上のことはなかなか難しいのです。だって、ケースワーカー1人あたりで100世帯前後も担当しているというではありませんか。1対1で対応してさえ、人の心を変えるというのは容易なことではありません。まして1対100でできることは限られます。
まことに残念ながら、行政その他の支援があっても犯罪に関わる人が出るのは避けがたいのが現実です。

maki5417 さん

役所は知らないわけじゃないと思いますよ。多分、いろいろな情報提供、密告(あることないこと含めて)が行っているはずです。
でも、役所が何らかの不利益処分を課すには、明確な証拠が要ります。何も生活保護だけに限ったことではなく、「あいつは脱税している」という密告だけでいきなり差し押さえができますか?
預金の入出金記録や課税情報を調査する権限は福祉事務所には与えられているそうなので、収入の隠蔽は、割合に発覚するそうです。しかし、現金での収入、かつ支払い元が税の申告をしていない(ご指摘の水商売など)と、調べようがありません。

>餓死者がでくらるいのところがいいのではないでしょうか。

それでよいとは、私はまったく、思いません。不正受給がよいとは思いませが、脱税が怪しからんから、密告があったら全部差し押さえてしまえ、それで餓死者が出ても仕方がない、と言いますか?
不正撲滅のために餓死者が出てもよい、それは言い換えれば病気の治療のためには患者が死んでもよい、というようなものです。本末転倒。

それでも、現場では色々あるようで、知人も、なかなかきれいごとでは済まないことだらけらしいですけどね。 (2016.08.06 23:31:42)

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