inti-solのブログ

inti-solのブログ

2016.11.02
XML
カテゴリ: 災害
ドキュメント御嶽山大噴火 --生還した登山者たちの証言を中心に救助現場からの報告と研究者による分析を交え緊急出版!



御嶽山の噴火は、60人以上の死者・行方不明者を出し、実質的には史上最悪の山岳遭難※でした。

※史上最悪の山岳遭難は1902年に起きた八甲田山雪中行軍遭難事件(死者199名)ですが、これは陸軍の訓練中の遭難事故であり、狭義の山岳遭難とは少し外れるように思えます。

規模としても史上最悪ですが、この遭難にはもう一つの大きな特徴がありました。それは、個人の努力では防ぎようがない、対応しようがない、努力のしようがない、ということです。
遭難といえば、通常は道迷い、疲労、低体温症、滑落・転落、雪崩、高山病といったところが主だった原因です。これらは、装備の選択や訓練、経験などによって、そのリスクを完全になくすことはできないものの、ある程度減らすことはできます。雪のあるところを歩く限り、雪崩のリスクはゼロにはならないけれど、谷筋は歩かない、デブリを見たら雪崩地帯と思って引き返す、などの注意によって、かなり減らすことはできます。
しかし、火山の噴火ばかりはどうしようもありません。噴火間近といしう予報があればともかく、それがなかったら避けようがありません。雪崩や大荒れ、台風、大雪などと違い、予想ができません。また、経験や訓練で避けられるというものでもないし、噴火被害を避けられる装備、というのもあまり思い浮かびません。
実際、この本に登場する生還者はいずれも、生死を分けたのは偶然だと言っています。噴火の際にいた場所が噴火口に近かったかどうか、たまたま身を隠す物影、逃げ込む山小屋などが近くにあったかどうか、たまたま噴石が当たらなかったかどうか・・・・・・。それでも、背負っていたザックで頭を守ることで生き延びた人はいるから、頭を防護することは大事です。ただし、では登山用のヘルメットをかぶっていけば大丈夫なのかというと、普通の落石より噴石ははるかにスピードが速いので、難しいのではないか、という意見が体験者の中にありました。それでも、ないよりはマシでしょうが。軽トラック並みの巨大な噴石の下に、何人も下敷きになっていたそうですが、そんなものが落ちてきたら、どんな防護策も意味を持たないでしょう。

つまり、結局は登山中の噴火に対しては、噴火が予知されたらその山には登らない、という以外の有効な対策はない、ということになります。
ところが、この予知がまた難しい。噴火にはマグマが直接噴出するマグマ噴火と、マグマに接近して熱せられた地下水が爆発する水蒸気噴火があります。マグマ噴火は、地下のマグマの動きが伴うので、前兆現象がより明瞭で比較的予知しやすい(多分)のに対して、水蒸気噴火は大きな地盤の動きが伴わないので、前兆現象が明瞭ではなく、予知が困難であると言われます。そして、御嶽山の噴火は水蒸気噴火でした。一応は噴火の1ヶ月ほど前から火山性地震の増加は報じられていたものの、それほど深刻とは捉えられておらず、より直接的に噴火の前兆現象となる火山性微動は、噴火の本当に直前数分前に初めて観測されたようです。


つまり、根本的には、山で噴火に巻き込まれないための確実な対策は、活火山には登らない、ということしかないのが現実です。対策としてはあまりに実も蓋もない話で、そうすると、日本の多くの山には登れない、ということになります。富士山も箱根もダメです。それでは、あまりに面白くないので、結局は、いざという時はあきらめるしかない、と割り切りつつ山に登る、ということになるでしょうね。

まったくの余談ですが、私も2012年8月に御嶽山に登ったことがあります。そのとき、たまたま二の池本館に泊まりました(予約したわけではなく、たまたま宿泊しただけ)。支配人の小寺さんは、お会いしただけでもなかなかに印象深い方で、しかも、その後二の池本館のホームページを見たら、ますます印象が深まりました。(山小屋の支配人である一方、山小屋閉鎖期間中はアジアを旅している方)噴火の際、真っ先に「あの人は無事か」と思ったのですが、幸いにして無事だったのはもちろん、一躍時の人として、テレビ局の取材を受けていました。残念ながら、二の池本館は営業不能に陥ってしまったようですが、いつか復活したら、泊まりに行きたいな。

御嶽山2012年8月25日11.JPG
噴火前の二の池

御嶽山2012年8月25日08.JPG
御嶽山三の池近辺





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016.11.02 21:57:56
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: