inti-solのブログ

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2017.02.05
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カテゴリ: 音楽
音楽教室から使用料徴収へ JASRACが方針決定


使用料は、使った楽曲の数や回数にかかわらず使用料を支払う「包括契約」の場合、受講料収入の2.5%を提案しています。
JASRACによりますと、徴収の対象は事業者が運営する教室で、個人運営の教室からは当面、徴収はしない方針だということです。~
著作権の問題に詳しい福井健策弁護士は、「使用料が発生するかは、教室で生徒が練習することが、著作権法の『公衆に聞かせるための演奏』に当たるかどうかがポイントだ。例えば、お客さんに演奏を聞いてもらうケースなどはこれに当てはまる。一方、音楽教室で、生徒が上達するために繰り返し練習することが当てはまるかというと、法律上、微妙なケースで、カラオケやダンスホールとは違い、思い切った法解釈をしているとも感じる」としています。

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JASRACのやり口に関する批判は、 過去に何回か記事を書いた ことがあります。
今回の場合、問題点は2点あるように思います。

ひとつは、引用記事中で福井健策弁護士が指摘するように、「教室で生徒が練習することが、著作権法の『公衆に聞かせるための演奏』に当たるかどうか」という問題です。もちろん、練習の成果を披露する発表会などの場は、著作権料の対象となりえるでしょうし(一般公開か関係者のみ対象か、にも左右されるでしょうが)、従来もそのような取り扱いが行われていたものと思います。しかし、教室で教える、あるいは練習すること自体を著作権使用料支払いの対象とするのは、いささか無理がありすぎる言い分ではないかと思います。

もっとも、類似の前例がないわけではありません。社交ダンス教室でCDを流す行為が著作権使用料の対象になるかどうかが争われた裁判が過去にあり、その判例では、社交ダンス教室でCDを流すことは『公衆に聞かせるための演奏』と認定されて、JASRACが勝訴しています。
その前例から、楽器教室からも著作権使用料を取れるとJASRACは踏んだのでしょう。ただ、社交ダンス教室ではダンスを学ぶのであって、伴奏曲はその道具に過ぎません。一方、楽器教室は、その曲を習得すること自体が目的です。そのために講師が実演することはあるでしょうが、それを「聞かせるため」と言い得るのか、大いに疑問を感じます。
上記の判決は2004年のことだったそうです。それから今回の動きまで12年以上も要したのは、社交ダンス教室の判例が楽器教室にも適用できるかどうか、さすがのJASRACもあまり自信がなかったからではないでしょうか。(※訂正・追記あり)それでもやる、というのは、音楽に関連して、少しでも営利目的のものからは、多少の法的アクロバットは厭わず、何が何でもマージンを取り立ててやる、ということでしょうか。
NHKの取材に対して福井弁護士は「思い切った法解釈をしているとも感じる」というオブラートに包んだような言い方をしていますけれど、要するに限りなく恣意的な法解釈ということでしょう。

※訂正:その後の報道等によると、JASRACが音楽教室から使用料を取ると言い出したのは今回突然ではなく、業界と10年近くにわたって交渉を続けてきたようです。ただし、あの、訴訟好きのJASRACが10年も訴訟を起こさなかったのは、やはり裁判で勝てる自信はなかったからでしょう。


私は、フォルクローレというマイナーなジャンルの音楽のアマチュア演奏者であり、過去には演奏に対してJASRACから請求が来た場合もありました。(私自身がJASRACから直接請求を受けたことはありません。主催者やお店に対してです)
そのときに知ったのは、JASRACは、何が何でも包括契約を押し付けようとすることです。確かに、使用した楽曲を報告するのは利用者側にとっても煩雑なので、双方が包括契約を望む場合はいいでしょう。しかし、利用者側が楽曲ごとの個別契約を望んでも、JASRAC側は強硬に包括契約を迫る傾向があります。
今回の音楽教室の話も、「包括契約の場合、受講料収入の2.5%を提案」とあるので、やはり包括契約を迫る気満々なのでしょう。

フォルクローレという音楽の世界においては、チリ・アルゼンチンの曲はたいていJASRACに登録がありますが、ボリビアは音楽著作権に関して非常に立ち遅れているので、著作権登録がされていない曲が多いのです。私自身に関係した例では、20年ほど前、ある場所で15曲ほど演奏した際、主催者が包括契約を断固として拒否、楽曲ごとの個別契約をしたところ、15曲中実際に著作権料が発生したのは6曲だけだったと聞いています。フォルクローレに限らず、民族音楽の世界ではこういう例は相当多いはずです。
そして、アマチュアの音楽家の自作曲もJASRACに登録などありません。
最後に、著作権者の死後50年(日本以外の多くの国では70年)経過すると、著作権の保護はなくなります。いわゆる「クラシック」と呼ばれる音楽の大半(すべてではない)は、すでに著作権保護期間が終了しています。バッハやモーツァルトやベートーベンは問題ありません。

おそらく、クラシック系の楽器の場合、練習曲は著作権切れのクラシック曲が相当多いものと推測されます。また、譜面を用意するので、どの曲を教材に使用したか、証明も可能です。それでも包括契約を迫るのでしょう。そのほうがJASRACにとって楽だからでしょうね。おそらく、教室を運営する事業者にとっても同様だから、著作権使用料を取ることが決まってしまえば、包括契約で押し切れると踏んでいるのでしょう。

私は、音楽を愛するものの一人として、正当な著作権使用料を払うことにやぶさかではありません。しかし、包括契約では、実際に演奏した曲の著作権使用料が、正当な権利者に支払われることは絶対にありません。どの曲を演奏したのかが管理されない(分からない)のだから、当たり前です。

「初恋サイダー歌われすぎ問題」

「しほり」氏の作曲でJASRACに楽曲登録されている「初恋サイダー」という曲を、いわゆる地下アイドルが様々なイベントで歌っており、それが「歌われすぎ」と揶揄されるくらいなのに、その著作権使用料が作曲者の元には支払われていない(2014年3月の著作権使用料が、イベント2531円でライブハウス0円)ことをしほり氏自身が問題提起しています。
それも包括契約のせいです。JASRACの言い分では、包括契約の楽曲使用料は、無作為抽出されたモニター店での実績に基づいて配分されるのだそうですが、そこに恣意的な操作がないのか、検証のしようもありません。

フォルクローレを演奏するための著作権利用料が、演歌やなんとか48の作曲者に払われたり、ましてや業界団体やJASRAC自身の利益のためだけに使われるのでは(JASRACには、過去に裏金騒動や不明朗な会計処理の問題、天下りの理事長などの問題もありました)、何のための著作権使用料か分かりません。

書いてあります。
だけど、このようなやり方が「音楽の著作物の著作権を保護」「音楽文化の普及発展に寄与」と言えるのか、私には大いに疑問です。音楽産業の利益を守ること(それ自体が悪いことだとは必ずしも思いませんが)とJASRAC自身の儲けの確保だけが目的で、そのために音楽文化の芽を摘んでも仕方がない、結果的にJASRACのやっていることは、そういうことであるように思えます。





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最終更新日  2017.02.12 07:44:25
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