inti-solのブログ

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2017.05.16
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カテゴリ: 音楽
ヤマハ、JASRACを提訴へ 教室演奏の著作権めぐり

JASRACは来年1月の徴収開始を目指し、教室を運営する各社に使用料を年間受講料収入の2.5%とする規定案を提示、使用料規定は7月にも文化庁に提出する予定。
これに対し、ヤマハや河合楽器製作所など教室側は2月、「音楽教育を守る会」を結成し、JASRACに対し「演奏権は及ばない」とする反論を各社が送付した。さらに使用料規定を出さないようJASRACに指導することを文化庁に要請し、要請に賛同する署名も約3万人分集めた。
ヤマハによると複数社が訴訟への参加を検討しているという。訴訟により、使用料率など金額の多寡が問題でなく著作権がそもそも及ばないと訴える狙いだ。
著作権法は、公衆に直接聞かせたり見せたりする目的で演奏する「演奏権」を、作曲家や作詞家が専有すると定める。同会側は「技芸の伝達が目的で聞かせることが目的でない」と主張。JASRACは「人気曲を使い、魅力を生徒が味わっている以上、聞かせることが目的」と反論している。

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JASRACが音楽教室から著作権使用料を取ろうとしている問題は以前にも論じたことがあります。

JASRACが音楽教室からも金を取ろうとしているらしい

とうとう、それが訴訟というかたちに発展するようです。
この問題について、JASRACの理事をしている東大の玉井克哉教授、作曲家の伊藤乾氏と、リコーダー奏者の本村睦幸氏のツイッターでのやり取りが、なかなかにすさまじいものがあります。

JASRACと音楽教室の問題について

音楽教室において講師が一曲フルで模範演奏する機会ってどれくらいあるのかという問いに対して、基本的にはそういうことはない、というのがリコーダー奏者本村氏の返事です。
それに対して、伊東乾氏は

レッスンと称して自分でまともに演奏しもせず、鉛筆や消しゴム投げてばっかで一回二万円なんてのもあるわけで、音楽教育の改善につなげるのがよいでしょう。「レッスンは演奏か?」ではなく「演奏もしないで口三味線の教えでレッスン料取るな!」が正解

と言い放ったんだけど、いやー、それは違うんじゃね、と。
だって、そもそも音楽教室って、受講者が演奏技術(歌の教室なら歌唱技術)を学ぶためにあるのであって、講師の演奏を鑑賞する目的ではありません。
私はほとんどの楽器が独習なので、講師からレッスンを受けた経験は乏しいのですが、グループレッスン(ワークショップ)は受けたことがあります。フルートとフォルクローレギター。それに、逆に教える立場ですが、ケーナの講習の助手みたいなことも、やったことがあります。

その上で、講師が実演するのは、間違いやすいところ、生徒がどうしてもできない部分だけ、せいぜい数小節程度です。それは、「引用」の範囲を超えるものではないでしょう。
それを「演奏もしないで口三味線の教えでレッスン料取るな!」などという言うのは、楽器を教えることの実際を理解していないのでは、と思います。そんな事実認識から「音楽教室から著作権使用料を取る」なんて話が出てきたとしたら、メチャクチャとしか言いようがない。
もっとも、講師と生徒が一緒に演奏する、たとえばケーナ二重奏の主旋律を生徒が、副旋律を講師が吹いて(あるいはケーナを生徒が、ギター伴奏を講師が、とか)通しで演奏、みたいなパターンだったら、講師が1曲通しで演奏することはあります。でも、それって演奏を「聞かせる」ことになるの?いかに考えても、その解釈には無理があります。
それを、「人気曲を使い、魅力を生徒が味わっている以上、聞かせることが目的」だから著作権使用料を取ると、本気で言っているの?拡大解釈にもほどがあるってものじゃないでしょうか。その延長線上には、本当に、そのうち通行人が鼻歌を歌っても著作権使用料をふんだくるという未来が待っているのでは、と言いたくなります。

要するにJASRACにとっては、音楽文化というのは提供された音楽を黙ってお金を払って聞く行為だけなんだろうな、演奏や歌唱にアマチュアが参入しようとする行為は、本音ではあまり歓迎しないのだろうな、と思えてしまいます。CDを買ってくれればお金が落ちるけど、演奏されてもお金が落ちないから。演奏したいなら権利金を払えということなのでしょう。
一方、ヤマハや河合は、本質的には楽器製造業者です。もちろん大企業なので、他にも色々な側面があるにしても、基本的には多くの人に楽器を買ってもらわないと困る。限られた人気アーティストしか楽器を買わなかったら、商売にならない。演奏者の裾野が広ければ広いほど良いわけです。音楽教室も、その延長線上の存在でしょう。
ヤマハもJASRACも音楽産業という同じ業界にいるものの、ことこの問題に関しては利害がかなり相反するわけです。
私は、自分自身がアマチュアで演奏する立場ですから、音楽教室側の言い分を全面的に支持するものです。





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最終更新日  2017.05.16 19:00:05
コメント(13) | コメントを書く


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Re:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
Bill McCreary さん
>レッスンと称して自分でまともに演奏しもせず、鉛筆や消しゴム投げてばっかで一回二万円なんてのもあるわけで、音楽教育の改善につなげるのがよいでしょう。「レッスンは演奏か?」ではなく「演奏もしないで口三味線の教えでレッスン料取るな!」が正解

これめちゃくちゃな発言ですよねえ。少なくとも音楽業界で飯食っている人間がする発言じゃないですね。ほとんど音楽を冒とくした発言としか思えませんね。


要するにJASRACにとっては、音楽文化というのは提供された音楽を黙ってお金を払って聞く行為だけなんだろうな、演奏や歌唱にアマチュアが参入しようとする行為は、本音ではあまり歓迎しないのだろうな、と思えてしまいます。

まあそういうことでしょうね。てめえらの利権しか考えていないじゃないかよと思います。

>一方、ヤマハや河合は、本質的には楽器製造業者です。もちろん大企業なので、他にも色々な側面があるにしても、基本的には多くの人に楽器を買ってもらわないと困る。

そう考えると、JASRACってヤマハや河合とぜんぜん調整や意見聴取のたぐいもしなかったのかなという気がします。実際のところはわかりませんが、どう考えてもこれ音楽産業にとってプラスにはなりませんよね。 (2017.05.16 19:49:24)

Re[1]:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

>>レッスンと称して自分でまともに演奏しもせず、鉛筆や消しゴム投げてばっかで一回二万円なんてのもあるわけで、音楽教育の改善につなげるのがよいでしょう。「レッスンは演奏か?」ではなく「演奏もしないで口三味線の教えでレッスン料取るな!」が正解

>これめちゃくちゃな発言ですよねえ。少なくとも音楽業界で飯食っている人間がする発言じゃないですね。ほとんど音楽を冒とくした発言としか思えませんね。

そう思います、私も。

>まあそういうことでしょうね。てめえらの利権しか考えていないじゃないかよと思います。

要するに、音楽産業の売り上げがだんだん右肩下がりになってきて、新たな収入源はないかと必死で探した結果、なのでしょう。音楽文化の発展とか、うたい文句はあるけれど、どう考えても本音の部分にそのような視点は欠けているように思います。

>そう考えると、JASRACってヤマハや河合とぜんぜん調整や意見聴取のたぐいもしなかったのかなという気がします。

いや、水面下では交渉があったようです。たてだ、合意できないうちに、見切り発車でJASRACが音楽教室からの使用料徴収の方針を発表した、というところなのでしょう。
どう考えても、JASRACは目先の利益は確保できても、音楽文化、音楽産業(楽器の販売や演奏家、音楽講師など全体で考えて)全般にとっては、マイナスでしかないでしょうね。 (2017.05.16 20:08:52)

Re:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
Bill McCreary さん
>いや、水面下では交渉があったようです。たてだ、合意できないうちに、見切り発車でJASRACが音楽教室からの使用料徴収の方針を発表した、というところなのでしょう。

前の記事で

>※訂正:その後の報道等によると、JASRACが音楽教室から使用料を取ると言い出したのは今回突然ではなく、業界と10年近くにわたって交渉を続けてきたようです。ただし、あの、訴訟好きのJASRACが10年も訴訟を起こさなかったのは、やはり裁判で勝てる自信はなかったからでしょう。

と追記されていましたね。これは前に読ませていただいていましたが、上のコメントを書いていた時は忘却していました。

ただそれにしても、これって強行してうまくいくのかなという気はします。前の記事のコメントで私は、社交ダンスの判例はひどいと書きましたが、今回の訴訟は、もしJASRAC側勝訴の判決を出したら社交ダンスより数段ひどい判決になるわけで、それは司法の側面からもとんでもないことになりそうです。

前のコメントの繰り返しになりますが、ピアノ教室での教本はバイエルなど著作権切れのものが多いわけで、そのようなところと包括契約を結ぼうとするのでしょうから、とんでもないにもほどがあります。 (2017.05.18 07:44:01)

Re[1]:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

>ただそれにしても、これって強行してうまくいくのかなという気はします。

はい、音楽教室側も、訴訟で争った場合の勝ち目を考えた上での提訴でしょうし、ある程度勝てる可能性ありと見ているのではないでしょうか。

>前の記事のコメントで私は、社交ダンスの判例はひどいと書きましたが、今回の訴訟は、もしJASRAC側勝訴の判決を出したら社交ダンスより数段ひどい判決になる

そうですね。社交ダンスの場合、基本的には曲のはじめから終わりまで通しでCDをかけることが多いだろうと思われますが、音楽教室では、本文に書いたようにそういうことは滅多にないはずです。
以前の記事にも書いたとおり、包括契約の乱用は本当に酷いといわざるを得ません。 (2017.05.19 00:35:59)

Re:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
Bill McCreary さん
しつこくてごめんなさい。ちょうどタイミングがいいのかあえてあわせたのか、京都大学とJASRACとの間でやり取りがあったという記事が流れましたね。

//www.oricon.co.jp/article/198083/

さすがにこの件でJASRACが京都大学に長作見使用料を請求するということはないかもですが、いろいろ興味深いところはあります。 (2017.05.21 09:17:44)

Re[1]:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

>//www.oricon.co.jp/article/198083/

>さすがにこの件でJASRACが京都大学に長作見使用料を請求するということはないかもですが、いろいろ興味深いところはあります。

ああ、この記事はわたしも注目していました。
JASRACは「請求はしていない」と強弁していますけど、確かに「いくらをいつまでに払え」という請求はしていないようですけど、「使用料が発生するかもしれない」つまり「これから請求するかも」という予告を行ったことは間違いないでしょう。マスコミに取り上げられて騒動になっていなければ、今頃本当に請求書を送っていたんじゃないの?と思いますね。 (2017.05.21 21:21:56)

Re:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
Bill McCreary さん
inti-solさんもお読みでしょうけど、今日の記事のこちらの下りは笑ってしまいました。

//www.jiji.com/jc/article?k=2017060701202&g=soc

>理事で作曲家の渡辺俊幸氏(62)は「著作権の大切さを理解してほしい。訴訟は避け、話し合いで解決したい」と語った。

金をとる側が、「話し合いで解決したい」なんて言いますかね(笑&呆れ)。図々しい連中です。

また、

>当面は楽器メーカーが運営する教室を対象とし、将来的には個人教室からも徴収する。

というのは、当然そういうことになるでしょうね。これまた図々しいにもほどがあります。 (2017.06.07 22:24:02)

Re[1]:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

>>理事で作曲家の渡辺俊幸氏(62)は「著作権の大切さを理解してほしい。訴訟は避け、話し合いで解決したい」と語った。

この記事は読んでいませんでした。著作権の大事さはもちろん理解していますが、だからと言って音楽教室での練習まで使用料を徴収というのは理解も納得もできません。

>>当面は楽器メーカーが運営する教室を対象とし、将来的には個人教室からも徴収する。

やっぱり、個人教室からは取らないというのは、当面の妥協策であって、最終地点ではないわけです。
そういう取立てをすればするほど、音楽産業はともかく音楽文化は衰退するとしか思えないんですけどね。

音楽教室側も提訴の方針を固めたようです。是非ここはがんばって欲しいです。 (2017.06.07 23:18:09)

Re[2]:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
inti-sol  さん
追記ですが、こういう何でも著作権使用料を取ろうとする態度から、次のJASRACの行動を予想すると、今度は楽器店、または楽器メーカーから著作権使用料を取ろうとするんじゃないかな。そして私のように楽器の練習をする者(教室ではなく個人的な練習行為)も著作権使用料を取ろうとするかもね。人前で演奏するための準備行為だから(笑)
そして最後は本当に、鼻歌にも・・・・・・。
まあ、一部ブラックジョークに近いものも混ざっていますが、そう言いたくなるくらいひどい話と思っています。 (2017.06.07 23:24:43)

【音楽】カテゴリ  
じゅら♪ さん
ここのところ 【音楽】カテゴリ の記事から遠ざかっているようですね。

そろそろ 演奏のお知らせとかがあるのでは・・と 期待しています。 (2017.08.04 12:58:16)

Re:【音楽】カテゴリ(05/16)  
inti-sol  さん
じゅら♪さん

はい、早速ですが、というかアップするのを失念しておりましたが、今日の記事にライブのお知らせをアップしました。
(2017.08.05 08:20:23)

Re:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
Bill McCreary さん
すでにご存じでしょうが、JASRACの会長がこの件で記者会見をしていますね。

//www.asahi.com/articles/ASL7B5J61L7BUCLV00H.html

特に音楽教室の使用楽曲は、バイエルなど著作権切れのものが多いはずで、記事にあるように

>楽曲の著作権料として受講料収入の最大2・5%の支払いを求めている。

というのはかなり高いように思いますね。どうしてもというのなら、包括でなく個別の契約の線は絶対譲れないところです。

また

>9月末までに契約を結べば、最初の1年間は1割引きとする内容を提示したという。

なんて、そんなん割引額が低すぎます(笑)。 (2018.07.10 23:21:22)

Re[1]:JASRAC対音楽教室の全面対決(05/16)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

はい、その記事は存じ上げております。

>世の中に、仕入れが全くない商売ってあるんだろうか」「たたき売りは、がまの油やバナナが仕入れ商品で、口上を述べて売るのは技術。同じことで、教えることは技術、仕入れは音楽や歌と考えれば、仕入れ代を払うのは当たり前だ」

いやあ・・・・・・失笑するしかありません。
Bill McCrearyさんご指摘のとおり、すでに著作権の保護期間が過ぎている教材から著作権使用料を取る、そもそも、元記事で書いたように、教室内で生徒が練習する行為を、著作権法の「公衆に聞かせるための演奏」に当たる、とみなす解釈自体が、無理があるでしょうといわざるを得ません。

>9月末までに契約を結べば、最初の1年間は1割引きとする内容を提示

ひょっとすると、これはオモテの価格表で、裏ではもっと大きな割引率を提示するのかも知れませんけどね。1割引では、ほとんど効果はないでしょう。 (2018.07.11 07:07:39)

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