inti-solのブログ

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2018.08.28
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テーマ: ニュース(95873)
生きたまま返して=誘拐された息子、5年不明―母来日、実態語る・メキシコ麻薬戦争


警察特殊部隊による初動捜査で、息子の携帯電話の売却に従業員の関与が分かったが「それでも誰一人捕まっていない」。要求通り身代金も払い、車もオートバイも渡したが、息子は帰ってこない。
特殊部隊が手を引くと、警察は動かなくなった。捜査を求めても門前払いばかり。同じ境遇の行方不明者の親族たちと知り合い「ソレシートの会」を立ち上げ、2カ月で40人の団体に発展した。現在の会員は250人。
16年5月、ルシアさんらがベラクルス市中心部でデモの準備中に男が車で現れ、地図のコピーを渡して立ち去った。十字架が書かれ、秘密の墓地の地図だと直感した。
「息子を見つけたいだけだ。犯人を捜しているのではない」と乗り気でない警察を説得。2カ月がかりで許可を得ると、地図が示したベラクルス市郊外サンタフェの丘で発掘を始めた。これまでに300人近い遺体が見つかった。もっと多いと考えられ、会は今も発掘を続けている。
メキシコでは、DNA鑑定を当局に委ねざるを得ない。遅々として進まず「日本が支援してくれないか」と呼び掛けている。
身元が分かったのは、わずか15人。このうち、遺族が警察に届け出ていたのは5人だけだった。一般に「警察に言ったことは犯罪組織に筒抜けになるから、行方不明者の家族の7割は怖くて届け出ない」と言われる通りの数字だとルシアさんは感じている。

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メキシコは3回渡航したことがある大好きな国で(3回目は新婚旅行でした)、是非また行きたい、とは思うのですが、麻薬戦争の陰惨すぎる状況を見ると、二の足を踏んでしまう部分はあります。
一般的に、もっとも危険なのは米国との国境に近い北部諸州ですが、米国とは国境を接していないシアロナ州にも、シアロナ・カルテルという恐ろしいマフィア集団がいるし、記事にあるベラクルス(メキシコ湾岸の州)も米国との国境沿いではありません。
ただ、観光客がいるような場所はそんなに危険ではなく、実際今も日本から大手旅行会社による多くのツアーが組まれています。それに、演奏仲間が3年ほど首都メキシコ市に家族ぐるみで赴任していましたが、特に犯罪に巻き込まれる事態には遭わずに帰国しています。
そういう意味では必要以上に恐れる必要はない、とは思うのですけど、私が行ったことがあるような場所で大規模な殺戮事件が起きた例もあるのでね。(もちろん、確率の問題ではありますけど)
メキシコの麻薬戦争は年間の死者が2万人を超えるときもあるほどの凄まじさです。人数だけでも慄然としますが、加えて、殺害の理由がはっきりしない、言い換えれば、たいした理由もなく気に入らない相手を殺戮する、しかも、遺体に激しい拷問の後が残っているなど、殺し方が凄まじく残酷である、という点が目を引きます。
また、犯罪組織の武装もきわめて強力で、拳銃レベルではなく、自動小銃、機関銃、対戦車ロケットなどが使われています。

もう一つの問題は、行政、警察、軍組織の腐敗が進行していて、犯罪組織にまともに対峙できていないことです。対峙できないどころか、犯罪組織に買収されたり脅されたりして、彼らの犯罪に加担している例が多いのです。
もっとも酷い事例として、メキシコの数ある犯罪組織に中でももっとも凶悪と評される「ロス・セタス」があります。ロス・セタスは、メキシコ陸軍の中でも最精鋭の特殊部隊の指揮官だったアルトゥーロ・グスマン・デセナ大尉が創設して、同僚や部下を高額の報酬で引き抜いて組織したのです。陸軍最精鋭の特殊部隊が、指揮官筆頭に何十人もまとめて麻薬組織に寝返るくらいですから、ほかは推して知るべし、です。一つの町の警察署の警官が、全員犯罪組織に買収されて、全員が罷免されて逮捕された、なんて話もあったように記憶しています。


このような言い方はわたしとしても不本意ではあるのですが、メキシコの現状は、破綻国家同然と言われても仕方のない側面はあります。(ある側面においては、ですが)

いずれにしても、一般市民から見れば、「警察に言ったことは犯罪組織に筒抜けになるから~怖くて届け出ない」というのが現実です。残念ながら、こういう傾向は、多かれ少なかれ、ラテンアメリカの多くの国に見られます。制服(あるいは軍服)を着ている連中は信用ならない、と言うのは、ラテンアメリカの一般的傾向です。
日本という国にも大きな問題はありますけど、少なくとも現在の日本で、犯罪組織に殺されたと思しき300人もの遺体が発見されたら、それは国家レベルの重大事件になり、当然警察は総力を挙げて身元確認と犯人検挙に当たるでしょう。犯罪の規模で言えば、言ってみればオウム真理教のサリン事件に対して警察が何もしなかった、というのと同じ状態ですから、「日本ではありえない」と言うしかありません。(もちろん、「現在の」日本では、ですけど)

犯罪組織の凶悪さはもちろん重大問題です。しかし、あえて言えばどこの国にも程度の差はあっても犯罪者はいます。犯罪者が犯罪を犯すのは当たり前(と言ってはおかしいかもしれませんが)なのです。しかし、それを取り締まるべき警察、あるいは軍などの治安組織が犯罪組織に加担していること、犯罪者が犯罪を犯すことよりはるかに深刻な事態です。そのような状況を打開できない限り、犯罪組織による凶悪犯罪を制圧することは難しいといわざるを得ません。
先日の大統領選で、左派のAMLO(印ドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール)候補が勝ったのは、様々な要因がありますが、右派のPAN政権も中道のPRI政権も、麻薬組織の撲滅や軍、警察組織の浄化ができなかったことも大きな要因でした。逆に言えば、今度就任するAMLO大統領の責務は重い、というところです。





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最終更新日  2018.08.29 00:02:14
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