inti-solのブログ

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2019.01.17
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カテゴリ: 政治
県民投票を封じる「抜け穴」を自民議員が伝授? 沖縄で広がる混乱
沖縄県で2月24日に実施される、米海兵隊普天間基地の辺野古移設をめぐる県民投票。普天間基地がある宜野湾市をはじめ、実施をしない自治体が相次いでいる。参加できなくなる有権者が、3割を超える可能性もあるという。
現段階で不参加を表明しているのは、宜野湾、沖縄、宮古島、石垣、うるまの5市。有権者は計36万人、沖縄県全体の約32%となる。このままでは「県民投票」といえど有権者が7割を切り、沖縄市に住民票のある玉城知事自身も、投票できなくなってしまう。
不参加を表明している5人の市長は、いずれも安倍政権に近い保守系だが、なぜ県条例で定められた県民投票の実施を拒否できるのか。
実は、「抜け穴」があった。
投開票事務の一部は市町村が実施するが、経費は県が全額負担することになっている。問題は、市町村議会が、県から交付された経費の予算計上を否決した場合だ。その場合、首長は地方自治法に基づき、議会に「再議」を求めるが、再議でも否決された場合、同法177条2項にある通り、首長が予算計上「できる」とされている。
《議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その経費及びこれに伴う収入を予算に計上してその経費を支出することができる》
県民投票を拒否する自治体は、「できる」を主張の「裁量」と捉え、不実施の意向を示しているのだ。これが、「抜け穴」だ。
県側の見解は違う。「できる」という言葉は「権利等を与えられていると同時にその権利等を一定の場合には行使する義務をも負う、という意味も含む」「市町村の長に裁量権を付与したものではない」としている。
こうした「抜け穴」を指南する文書を、弁護士の資格を持つ自民党の宮崎政久衆議院議員(比例九州)が作成していたと、琉球新報などが報じた。
それによると、「県民投票条例への対応について」「県民投票条例への対応に関する地方自治法の解釈」などという文書が、保守系市町村議員らの勉強会で配布されたという。
前者には、「予算案を否決することに全力を尽くすべき」などと記され、後者の資料には、地方自治法177条の法的解釈も記されていたという。琉球新報は以下のように指摘している。
《市町村議員が議会での予算案を巡る反対討論や反対の意見書で指摘した内容は、宮崎氏の主張と一致している。現在、投票事務を拒否している市長らの見解とも重なっている》(要旨・以下略)

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この動きには、唖然とします。あまりに浅はかなやり口です。

もちろん、条例によって成立した県民投票を一部の自治体だけ実施しない、つまり投票の機会を奪う(言い換えれば、意思表示の場を奪う)というやり口自体が、法の下の平等や、ひいては民主主義の基本原則に反しており、きわめて問題であることは言うまでもありません。

しかし、問題はそこだけではありません。この地方自治法の条文解釈自体が、きわめてヤバイものです。ありていに言えば、無政府主義的解釈ともいえます。
問題の177条の規定は、こうなっています。

第177条 普通地方公共団体の議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。
一 法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に属する経費
二 非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のために必要な経費
2 前項第一号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その経費及びこれに伴う収入を予算に計上してその経費を支出することができる。(以下略)
(正文は漢数字)


今回は、沖縄県が、政府の意向に反して制定した条例に基づく県民投票の予算の計上が論点になっています。だけど、この条文を見れば、問題はそんなレベルでは済まないことが分かるでしょう。「法令により負担する経費~普通地方公共団体の義務に属する経費」を(議会が否決した場合)予算計上「できる」という規定を「しなくてもよい」と解釈するのは、明らかに論理矛盾です。「法令は守らなくてもよい、義務は無視してよい」と言っているのと同じになってしまうからです。
このような法解釈がまかりとおるなら、こういうことも可能になります。


うちの自治体では住民票制度のために予算を支出するのはやめます。
戸籍制度のために予算を出すのはやめます。
国民健康保険はやめます、生活保護制度はやめます・・・・・・


つまり、議会と首長が結託すれば、日本国の諸制度の枠外で、実質的な独立状態になれる、ということです。「国家解体の危機」みたいなフレーズで危機をあおるのは、ネトウヨの専売特許ですが、こんな法解釈を是とするなら、それこそ「国家解体の危機」になるのではないでしょうか?
なにしろ、都道府県レベルでこれをやれば、警察も事実上無力化できるのてす。警察は直接的には都道府県庁の指揮下にはありませんが、予算は都道府県が支出しているからです。予算を計上しなければ、警察官の給料も払えない、何もできず、機能停止に追い込めます。



というわけで、この件については、宜野湾市を相手に損害賠償を求める訴訟や、沖縄市に行政不服審査を求める動きもあるそうで、それは是非やってほしいです。こんなトンデモな法解釈は、きっちりと法廷の場で決着をつけるべきでしょう。





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最終更新日  2019.01.17 21:15:35
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