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2021年11月28日
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「カムイ伝第二部17-19巻(丹波崩しの章)」



未完に終わった「カムイ伝」は、まだ正統には語られていない。特に第二部は、甚だ不十分である。それで、過去、浅学菲才を顧みず第二部を章ごとに評してきた。それを無理矢理終わらせたい。

最後の三章について述べてゆきたい。先ずは「丹波崩し」の章(17巻〜19巻)。

ここから、暫く舞台が江戸から日置領に移る。つくづく「カムイ伝」とは、日置領が本当の舞台だったのだ。江戸時代全体を描かなければならないので、時には江戸がずっと描かれるが、やはり白土三平の描きたかったのは、一地方の、名もなき「人民」だったのである。

冒頭、笹一角(草加竜之進)はアヤメと一緒になる為に、日置領に帰り全てを打ち明ける。
「武士が百姓から寄生する姿を見極めたから、武士を捨てた」ことを改めて告白する。この後しばらくして竜の進は医者になるために長崎に向かうのであるが、文武両道の知識人という立場で歴史に関わってゆくのだろう。彼の第一部の志は少しも変わっていない、こともここで明らかになった。

(竜之進とアヤメと苔丸)

竜之進は、正助とカムイの要請で、日置の非人部落のキギスと相談して「皮の工業製品」の商品化、流通の中立(なかだち)をした。ここでも、第一部から壮大な伏線が回収されつつある。「歴史の流れは遅いようで、時にはとてつもなく早く走ることもある」という白土三平の思想の一端が明かされる。ここでも白土三平は、日本における近代ギルド(職業別組合制度)の成立を、少し時を進めて動かしているが、現代日本でもひとつの地域やお店で「先進的な取り組み」は、必ず行われているのだから、当たり前の描写でもあるのだ。

そして「あの」望月佐渡守が行方不明だった鞘香を連れてきた。薬漬けにして‥‥。ここで初めて明らかになるのであるが、二部始めに行方不明になった、錦丹波の娘・鞘香と百姓娘・加代は、佐渡の守によって、一方は岡場所に売られ、一方は大奥の腰元候補に育てられていたのである。それでも、女性は自ら闘って自らの運命を切り開こうとする。そこには、武士も百姓も関係ない。2部を通して、子供たちの成長並びに女性の生き方の選択が、人々の縁の中で描かれているのも、大きな特徴であろう。



酒井忠清と佐渡の守の「野望」は、基本的には将軍職の「実質的な乗っ取り」にあることは、この長い物語で明らかになっているが、この段階ではその方法までは明らかになっていない。しかし、丹波崩しの目的は、単に日置一万石の領主になることではないことが、佐渡の守から言われる。それは果たして何か?それは次の章で明らかになるのだろう。

なお、この書評において再三、弟の岡本鉄二の死亡が第二部ぶつ切りの原因だと書いていたが、病気はあったかもしれないが、鉄二は今年まで存命だった。ここでお詫びと訂正をしたい。第二部終了の決定的な契機は、三男の弟の急逝だったのかもしれない。

(1996年1月より97年2月まで連載)








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最終更新日  2021年11月28日 16時36分39秒
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