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2021年11月29日
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「カムイ伝第二部(歯ッ欠けの章)19-21巻」

ここでは、第二部冒頭で元日置城を追われた猿山の下っ端・歯っ欠けの城への帰還、並びに猿山順位一位になるまでの顛末が描かれる。

猿の階級社会は、もちろん人間社会にそのまま当てはまるものではない。しかし、白土三平は、少なくない情熱を持って、かつて体格も風格も力さえ無い歯っ欠けが、運と経験と蓄えた知恵と敏捷さを持って、幾たびかの生命の危機を乗り越え命を長らえ、人間社会の贈り物(ラッパと鍵手)で、猿山の頂点に君臨する様を見るだろう。次の章では、しかしその英雄も死んでゆく。

それはほとんど「神話」の世界である。集団から追われた者が、いくつかの試練を乗り越えて「英雄」として帰還する。「人間」の周辺にある「自然」において、白土三平はお金が介在しないでも、神話は成立することを証明する。それは、やはりカムイ伝の一つのテーマだろうと思う。また、それはまだ描かれない人間社会における「英雄物語」(この括りそのものが第一部にはなかった。神話伝説シリーズを経て白土三平が獲得したものだろう)の前振りを(それはカムイが担う予定だったのかもしれない)示すものだったのだろう。

これは最早、70年代の若者が期待した「階級闘争」の物語ではない。白土三平は、最初から「革命」を描くつもりはなかったのかもしれない。封建制度の確立・完成が始まった17世紀後半を時代に選んだ時点で、それは明らかだったのではないか?もし描けば、それは「革命の失敗」を描かざるを得なかったからだ。実際に第一部は、そういう流れになった。ホントは「周辺の者」「弱い立場の者」に寄り添った、理想的世界を描きたかっただけなのではないか?

また、正助の息子一太郎が、忍びの世界の悪しき掟の歯車になっていたのを、いつの間にか抜け人カムイが「抜け」させていた。甥と叔父貴で、既に信頼関係と師弟関係はできている。一太郎はこうやって、カムイの全ての技を受け継ぐような流れになっている。ここで思い起こすのは「影丸伝」や「サスケ」の構造である。心なしか、一太郎の面影は若い頃のカムイにソックリだ。白土三平の父親、岡本唐貴は息子に自分と同じ名前(岡本登)をつけた。それは、白土三平にかなりの影響を与えたと思う。本当は甥に、やがてカムイと名乗らせるつもりだったのではないか?そうやって、人は死んでも、想いだけは繋げて行く。

白土三平の理想の世界は、
創業者が亡くなっても、
想いはつながれて行く
結社の世界だったのではないか?

何故だか知らないが、
白土三平はその夢を諦めたのではないか?
まるで、妄想だし、事実もないけど、
白土三平研究者は、そこら辺を是非追及してほしいと思う。

それとは別に、佐渡の守の野望の一端は、日置山にある鉱山の採掘権を一手に引き取ることが明らかになった。膨大な金の蓄積は、その後の「野望」のために使われる予定だったのかもしれない。その中で、島抜けの日陰人、湯宿の主・喜太郎の数奇な運命も描かれる。が、これは第二部の物語の彩りでしかない。

(97年3月〜9月に連載)





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最終更新日  2021年11月29日 13時09分09秒
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