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映画、ドライブマイカーをAmazonプライムで見た。
時間にして、3時間あまりの長編大作?である。
僕は大学生の頃に、「風の歌を聴け」を読んでからずっとハルキストで
新刊が出ると必ず読んでいるのだけど、この短編のことは、タイトルと中身をぼんやり
覚えている程度だった。
映画を見てと本も読めば分かるが、このタイトルの短編だけではなく、同じ短編集「女のいない男たち」に収録されている
他の短編の幾つかもミックスされている。そうやって、この読めば30分もかからない短編を、3時間の長編にした構成力は凄いと思う。
この映画で一番特徴的なのは、劇中劇が使われていると言う事だ。演じられるのは、チェーホフの「ワーニャ叔父さん」。
そしてこの劇は、多国籍言語なのである。日本語があり、英語があり、北京語があり、韓国手話まで入って来る。
こういう形の演劇があるのかどうか、私は知らないが驚きだった。
そして、この劇中劇はかなり長い、正直わたしは、初日この劇中劇に退屈して寝てしまった。
翌日、気を取り直して見た。物語が佳境に向かうに従い、劇中劇も本読み、リハーサルから本番に移り、そして、映画の最後も劇中劇で終わるのである。ラストの言葉、この映画で監督が言いたかったことは、ソーニャ役の韓国人が手話で語る言葉で語られるのであった。
このあたりはもう圧巻なのである。
村上春樹の長編には、大体似たパタンがある。主人公は男性で、妻が去ったり、亡くなったり、色々なものを喪失した男性。
その男性はどんどん孤独の中に入っていき、有るとき現実と異界の間の闇に入っていく。多くの場合、井戸に降りて行くことが多い。
井戸に籠もった男性の前に、霊媒のような役をする少女が現れる。その少女との交流によって少しずつ男性は再生して現実の世界に戻っていく。
これが村上春樹の長編小説のパタンだと思って居るけど、この映画も、主人公は妻に死なれた男性である。井戸の代わりに使われるのがサーブ900と値齲赤い古い車である。そして霊媒の少女は車の運転手。
短編のモチーフを幾つかつなぎ合わせて、長編小説と同じスタイルにしあげている、この脚本が素晴らしいと思う。カンヌで脚本賞を取ったのも頷ける結果だと思う。
更に言えば、広島の風景、挿入される音楽も素晴らしい。石橋英子さんと言う人を初めて知る事が出来た。
28日にはアカデミー賞の発表があり、この作品もノミネートされているらしい。カンヌならともかくも、エンタメ好きなアメリカ人の心をどれだけつかむのかは分からないが、同時受賞の快挙になれば素晴らしいと思う。
で、ラストのラスト、後日談のような場面の解釈を巡って、ネットでは色んな意見が出されているらしい。
私もここの意味はよくわからない・・が、映画の中での最後の言葉「それでも生きていかねばならない、生きていきましょう」の結果の映像だと受けとろうと思う。
余韻の残る映画である。残り方が半端ではない。ワタシの妻は、映画館を出たとたん、何も残らないすっきりした映画が好きだと言う。
このあたり夫婦の好みが分かれるところ。 3 時間は長いけど、またじっくりともう一度見てみたい映画だと思う。