うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

2024年03月11日
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カテゴリ: シネマ/ドラマ

毎回ドラマチックかつロマンチックな展開で、心が揺さぶられる。
まだ早春の今からこんなに面白くては、今後いったいどうなってしまうのか(いい意味で)先が思いやられる。
特に昨10日放送の第10回は、なにげに神回と思った。

□ 哀れ花山天皇 が、それよりまひろと道長の展開が速くないか
ざわつく「光る君へ」第10回
【木俣冬氏 ヤフーニュース 10日】


子供のころから親しんできた大河ドラマだが、私の知る限り、歴代の中でも五指に入る出来だと思う。日曜の夜が待ち遠しい。

吉高由里子は、国民的大女優になりつつある。現在のわが国の人気女優を見渡しても、余人を以て代えがたい配役である。このあと、間違いなく歴史的傑作小説を物するであろう文人的な落ち着いた物腰と聡明な感じ。
彼女はこの役を演ずるために生まれてきたと、私は確かちょっと前の詠草で(いくぶん大げさな表現で)短歌にしたが、その感想はますます裏付けられている。

ただ、平安宮廷を描く以上やむを得ないのだが、登場人物が藤原姓ばかり(あとはせいぜい「源」ぐらい)という「藤原問題」をはじめ、かなり歴史ファン向けの「通好み」な作風になっており、見る側にも一定の教養が要求される感じだ。一般視聴者がなかなかついて来られないようで、視聴率は苦戦している模様だが、これはもうしょうがないよね。

間違いなく、長く語り継がれる名作となりつつあるので、NHKのスタッフや上層部は、目先の数字なんか一切気にしなくていいと思う。
芸術・芸能への評価って、しばしばこういう感じだから。

生前はほとんど理解されず無名で、死後に評価・称賛された芸術家のなんと多いことか。ゴッホ、宮沢賢治はその典型である。芸術の歴史は、死屍累々・無念ゴロゴロの歴史である。・・・って感じか。
「時代を先取りしすぎていた」「生まれてくるのが早すぎた」とかいわれる類いである。

きのうも、若き藤原道長とまひろ(紫式部、こちらも藤原、遠い親戚)の情熱的な恋模様が美しく描かれたが、当時の慣例に忠実に、玉梓(たまずさ、詩歌によるラブレター)のやり取りで恋愛が進行する。

道長のラブレターが、当時の貴族なら(当たり前の)必須科目の古今和歌集からの引用であるのに対し、まひろの返歌が読むのも相当難しい漢詩であるというあたりに、紫式部の文人(学者)としての教養とプライドあふれる人物像を垣間見せた面白さがあったのだが、こういう世界に少々は慣れ親しんでいる私(くまんパパ)にとっても、解読を断念するほどの高踏優雅な場面であり、ましてや多くの視聴者にはチンプン漢文であったかも知れない。

それに続く、月の光の中でのラブシーン(ほぼ、今でいうベッドシーン)は、思わずうなるほどの美しさと激しさで魅了された。
まさしく、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』、『ハムレット』であった。

稀に見る「ファンタジー大河」と言えよう。史料の少ない平安時代をこれ幸いと、オリジナル脚本の大石静はやりたい放題。ロマンチック盛り盛りマシマシで、空想の翼を自由奔放に羽ばたかせまくっている。

うるさいアカデミズムや歴史マニア方面の一部からは、多少クレームが付き始めているとも仄聞するが、所詮エンタテインメントのドラマなのであるから、そう目くじらを立てなくてもいいだろうと、私は思う。この調子で、今後もガンガン行ってもらいたい。

なにしろ、信頼しうるまともな同時代の参考資料は、ロバート秋山演ずる藤原実資が毎日小まめに書き綴った日記『小右記』ぐらいしかないといわれるのだから。
その秋山竜次も、コメディ・リリーフとして笑わせながら、けっこう重厚な存在感を示していて、役者開眼だね。
売れない大部屋役者だったというお父さんは、草葉の陰で涙してるよ。

道長役の柄本佑が、放送前のインタビューで「大石さんの脚本があまりにも情熱的なので、気恥ずかしさをこらえるのに苦労した」(うろ覚え)というようなことを言っていたと思うが、こうした場面のことであったかと納得。

その柄本佑がいい。平安宮廷での権力闘争・謀略に邁進する父と兄たちに翻弄されつつ、自己を確立してゆく繊細かつ心優しき道長像を新たに創造している。
この大抜擢といえるキャスティングは大当たりだったね。

今のところ、若さ・未熟さを表現するため、わざと生硬(下手め)な芝居をしていることさえ、ありありと感じとれる。大河は長いのである。天才的な俳優である父親譲りの計算された演技がすばらしい。
かつて、岸谷五朗もそんな感じだった。これは、一年間見ていられる。
ほかにこの役を務められる若手中堅の人気演技派俳優は、菅田将暉ぐらいしか思いつかない。ただ、菅田はついこないだ同じ大河で大役・源義経をやったばかりだしな。

そして、上手いが地味めなバイプレーヤーと思っていた段田安則が、「平安のゴッドファーザー」を見事に演じて、出色の貫禄と包容力。
脚本の大石静が、『ゴッドファーザー』シリーズと『華麗なる一族』を参考にしたと言明してるだけあって、なかなかの「ブラック大河」でもあるが、まさしくマーロン・ブランドと北大路欣也を髣髴とさせる。しかもけっこう家族思いの温かい人間味やユーモアさえ宿っていてすばらしい。

岸谷五朗演ずる父・藤原為時と娘・紫式部の関係性も、いろいろ波瀾もあったが本当にすばらしい。抑制された穏やかな演技の中に、冬を超えた春爛漫の温かい情愛が香り立っている。

私にも、まもなく先生という敬称で呼ばれることになるであろう親孝行な娘がおり、とても人ごととは思えず、毎回うるうるして見ている。
その娘は、吉高由里子と横澤夏子を足して2で割ったような顔をしているのである。かわいい。

* この記事は、もうちょっときちんと加筆修正して書こうと思ったのですが、仕事が忙しすぎて頭がぼやけておりまして、とりあえずこれで終わりにします。すみません。





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最終更新日  2024年09月16日 17時21分54秒
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