楽天!!

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2006.02.14
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赤石圭介はさっきの電話のやり取りを聞いて、呆然とした。

10億・・?
身代金が・・?
ふざけんな、まさか、お遊びで誘拐したんじゃあないだろうな。
事務所が払うわけないだろうが。

「お・おい・テツ」
運転手だった気弱な男が、リーダー格の男に心配そうに話しかけた。

「そういう指示だ、イクオ、俺にもわからん」
テツはそのまま、携帯電話をあの無口な男に返して、溜息をついた。


やはり、自作自演だと思われているのだろうか。
誰も助けになんてこないかもしれない。
くるわけがない。
こんな自分を。
金の問題ではない。
自分自身は助けるだけの価値のある人間なのか・・。

思えば、我儘を言ってきた。
気に入らない奴がいれば、一言でクビして、気に入った女がいれば一言でモノにしていた。
それは今のこの人気で培った立場だからだ。
何を言っても、何を求めても、手に入る。
他人のことなど関係ない。


亮太達にも失礼な態度をとっていた。
自分一人でSGMは成り立っているなどと思い上がっていた。
本当は違う。
あいつらがいてこその俺なんだ。
それを勘違いして調子に乗って・・。

きっと自分の周りには誰もいなくなるだろう。

人間として・・認められているのか。
単に、人より、少しだけ、少し早く才能が目覚めただけじゃないか。

その才能を更に磨いているのか?
いつか努力している者に追いつかれ、追い抜かれる。

毎日を精一杯生きているのか?
一日をチヤホヤされてダラダラ生きているだけだ。

サトシのように、何かに自分の全てを懸けることが出来るのか?
そんな無謀なことはしない・・・・・。

いや・・いや・・何を思っている。
犯罪者の行動を見本に考えるなどと、愚かなことはするべきではない。
どんな理由であれ、犯罪を犯すことは許されない。
身内の命がかかっていようとも・・。
そんなことが許されるのなら、理由さえあれば、何をしてもいい世の中になる。

真犯人・・つまり・依頼人は俺のこの傲慢な態度に腹を立てて、俺を誘拐したのだろうか・・・。

突如、赤石の頭に電撃が走る。
何かが閃いたような気がしたのだ。
全てではないが、少なくとも、誘拐の本当の目的を。
誰かに教えなければ、赤石はモゾモゾと動き、声を出した。
だが、前にも増してキツく口にテープを貼られた状態では上手く話せない。
傍にいたサトシも、さっきの外での一件で怒っているのか、無視を決め込んでいるし、近くにも寄ってもこない。
早く伝えなければ、この事件は別の何かが動いていることを。

そんな赤石の思いは届かず、テツはもう一度、事務所に電話をかけた。

つづく。

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最終更新日  2006.02.14 20:54:47
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