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2025.01.27
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カテゴリ: 報徳記を読む
報徳記を読む 報徳記  巻之二【1】 先生墾田役夫を賞す その2



報徳記を読んで、不思議に思うのは
尊徳先生が結構怒られることだ。
この章でも、開墾の人夫として賃金稼ぎに来た若者が先生の前では、一生懸命仕事をするふりをするのを見抜いて「声を励まして」叱りつける。

「お前は私をだまそうとして、そのような働きかたをする。実に不届きだ。
 私がここへ来れば、力を極めて、汗を流して、人に抜きん出た働きをするが、私がこの場を去れば、きっと怠けるだろう。
 人の力には銘々限りがある。
 このように働いて一日力を尽くしたら、お前は一日でたおれてしまうに決まっている。
 もしそのようにして一日中筋骨が続くというならば、私が一日中ここにいて試してやろう。どうだ、それができるか。」

人夫は地に平伏して答えなかった。

「お前のような不正直な者がいれば、みんなが怠りを生ずる本になる。
 人をだましてうまいことをしようとするような者は、私のところでは使わない。早く立ち去れ。二度と来るではない。」

 村の名主がとりなして若者に謝罪させ、若者もその心得違いを謝った。
そこで先生はこれをゆるした。

 尊徳先生は心の開拓を一番大事にされた。
 心得違いがあれば、それを厳しく指摘され、その者が心から反省した場合に始めて恩恵を与えられた。心得違いのまま恵むとその者の破滅になることを承知されていたからだ。



 桜町陣屋の出入りの畳職人源吉という者がいた。
 腕はいいのだが、酒飲みの怠け者。
 年も暮になって、餅を買う金もない。
 困り果てて、陣屋の先生のもとに餅を買う金を借りにやってきた。
 先生はこう言われた。
 「おまえのように、年中家業を怠ってろくろく働きもせず。
 銭ができれば酒を飲む者が
 正月だからといって
 一年間一生懸命働いて、丹精している者と同じように
 餅をたべようなどとは、心得違いも甚だしい。
 そもそも正月というものは突然来るものではない。
 米も偶然にできるものではないのだぞ。
 正月は360日明け暮れしては来たり、
 お米は春に耕して、夏には草ぎりに汗流し、秋に刈り取って初めて米となるのだぞ。
 おまえのように、春耕かさず、夏草ぎりもせず、秋刈らず、そんな者に米がないのは当たり前のことではないか。
 そうであれば、正月であろうとも餅を食うべき道理がないぞ。
 今、金をおまえに貸してやっても、どうやって返すのだ。
 金を借りて返す道がないときは罪人となるのだぞ。
 正月に餅が食いたいと思うのならば、ただいま今日より
 遊惰を改め、酒をやめ、山に入って落ち葉をかいて、肥やしこしらえ、
来春に田んぼ作って、米を得て、来来年の正月に餅を食うがよい。
 されば来年の正月は、自分の過ちを後悔して、餅食うことをやめて反省せよ」と懇々と説諭されたのであった。
 源吉、大いに後悔して
「わたくし、遊惰で家業を怠り、酒を呑み、それでいて一年中勤められている人たちと同じように餅食べて正月を迎えようとは全くの心得違いでありました。来年の正月は仰せのとおり、餅食わず過ち悔いて新年迎え、年が明けたら2日より家業に精出し、努力して、来来年の正月こそは、人並みに餅をついてお祝いしたいと存じます」
そういい残してしおしおと陣屋の門を出て行った。
尊徳先生このときに、源吉が門を出て行くのを見て、呼び戻し、
「私の教訓がよく腹底に入ったか」とお尋ねになった。
源吉いわく「誠に感銘いたしました。生涯忘れず、酒をやめて、一生懸命働きます」
すると先生、白米一俵、もち米一俵、金一両に大根、芋など添えて源吉に与えられた。
源吉の心を改められたのをかくも喜ばれたのであった。
源吉も感激ひとしおで、これよりは生まれ変わったように生涯家業に精出したと伝えられる。

尊徳先生の人を教え諭すことはこのようであった。
怒りも不動明王のごとく、憤怒の形相で、どうか改心してくれよと慈愛がふつふつとたぎっている。
不動明王




【1】 先生墾田役夫を賞す(2)

時に役夫一人 衆に抽(ぬきんで)て勉力流汗力を極む。
小田原の吏(り)之を見て大いに感じ、彼諸人に勝れ、斯の如き力を盡すこと豈(あに)奇特に非ずや。
定めて先生此の者を賞し、必ず衆役夫の励みとなさん、早く賞せよかしと心に之を待ちたりしに、先生兩三度此ものゝ處(ところ)に至り、その働を見ると雖も一言の賞詞なし、吏(り)甚だ之を疑ひ惑へり。

 暫ありて先生又此に来り、聲(こえ)を励まして曰く、
汝我を欺かんとして此の如きの働きを爲す、甚だ不届也と云ふべし。
我此處(こゝ)に來れば力を極め、流汗して他に抽(ぬき)んづるの働をなす。
我此場を去らば定めて怠るべし。
人力(じんりょく)各(おのおの)其の限あり、此の如く働き、終日力を盡さば、汝一日にして斃(たふ)れんこと疑なし。
若し斯くの如くして終日筋骨の續(つづ)く者ならば、我終日爰(ここ)に在りて之を試さん、汝能く爲さんか
 と問ふ。
役夫大いに驚き、地に伏して答えず。
先生曰く、
汝の如き不直の者あれば衆人怠りを生ずるの基(もとゐ)なり。
人を欺き事を爲さんとする者は我之を容れず、速に去れ、二度(ふたたび)來ること勿れと云ふ。

邑の里正(しやうや)二人進み出でて其罪を謝せしむ。
役夫大いに其の過を謝し慈愛を請ふ。
先生之を許しぬ。
人皆其の見る處(ところ)明かにして、衆人の見る處(ところ)と異なるを驚嘆せり。





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最終更新日  2025.01.27 00:00:22


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