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2025.11.28
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カテゴリ: 報徳記を読む
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二宮翁夜話巻の3

【55】高野丹吾氏が帰国(相馬藩)しようとしていた。

尊徳先生はおっしゃった。

伊勢の国の鳥羽の港から、相模国の浦賀の湊までの間に、大風雨の時、船がとまるべき港は、たった伊豆国の下田港だけである。
だから灯台がある。
大風雨の時は、この燈台の明りをめあてに、往来の船は下田港に入るのだ。

この脇に妻良子浦(めらこうら)というところがある。

岸の巌が高く大岩が多く、船路がないところである。

この辺に悪民がいて風雨の夜に、この処の岸の上に火を焚いて、下田の灯台と、見違うようにするものだから、難風をしのごうと、燈台をめあてに走り来る船は、灯台の火と見まちがって入り来る勢いに、大岩に当って破船することが多かった。

この破船の積荷物品を奪って、取り隠し置いて分配した事が、たびたびあった。

ついには発覚して皆刑び処せられたと聞く。

自分のわずかの欲心のために、船を壊し人命を損ない、物品を流失させた。

悪い仕業ではないか。

私の仕法にもまたこれに似た事がある。

烏山の灯台は菅谷氏であった。

細川家の灯台は中村氏であった。

しかし、二氏の精神は半途で変じ、前にいたところと違ったために、二藩の仕法目的を失い今困難に陥った。

かりそめにも、人の師表となろうとする者は、恐れなければならない。

慎まなければならない。

貴藩のごときは、草野氏・池田氏のような、大灯明上にあれば、安心であるといえる。

あなたもまた成田・坪田二村のためには大灯明である。

万一心を動かして、いどころを移すような事があれば、二村の仕法の破れる事は、船の岩に当れるがようなものだ。

そうであれば二村の盛衰・安危は、あなたの一身にある。

よくよく心に銘じなければならない。

二村のため、あなたのため、この上もない大事である。

あなたはよくこの決心を定めて、不動仏の、猛火が背を焼いても、動かざるごとくであれば、二村の成業においては嚢中(のうちゆう)の物を探るよりもやさしい。

あなたの心さへ動かなければ、村民はあなたをめあてとなして、船頭の船路を見て、おもかじ。トリカジと呼ぶようなもので、驕奢に流れないようオモカジと呼んで直し、遊惰に流れないようトリカジと呼んで漕ぐのみである。
その時は興国・安民の宝船ではないか、
あなたが所有する成田丸・坪田丸は、成就の岸に、安全に到着することは疑いない。

この時君公のお悦びはいかばかであろうか。

草野・池田の二氏の満足もいかばかりであろうか。

勤めよや勤めよや。


二宮翁夜話巻の3

【55】高野丹吾帰国せんとす、
翁曰く、
伊勢の国鳥羽の湊(みなと)より、相模国浦賀の湊までの間に、大風雨の時、船の掛(かか)るべき湊は、只伊豆国の下田湊のみ、故に燈明台あり、大風雨の時は、この燈台の明りを目的(めあて)として、往来の船は下田湊に入るなり、
此の脇に妻良子浦(めらこうら)と云ふ処あり、
岸巌(がんがん)高く大岩多く、船路なき処なり、
此の辺(へん)に悪民有つて風雨の夜、此の処の岸上(がんじやう)に焚きて、下田の燈台と、見違ふ様にしければ、難風を凌(シノ)がんと、燈台(トウダイ)を見当に走(ハシ)り来る船、燈台の火と見紛(みまが)ひ入り来る勢ひに、大岩に当り破船すること数度なり、
この破船の積荷物品を奪ひ、取り隠し置て分配せし事、度々有りし由、終には発覚し皆刑せられたりと聞けり、己が聊かの欲心の為に、船を破り人命を損じ、物品を流失せしむ、
悪き仕業ならずや、我が仕法にも又是に似たる事あり、
烏山の燈台は菅谷氏なり、
細川家の燈台は中村氏なるに、二氏の精神半途に変じ、前の居処と違へるが為に、二藩の仕法目的(もくてき)を失ひ今困難に陥れり、
仮初(かりそめ)にも、人の師表たらん者、恐れざるべけんや、慎まざるべけんや、貴藩の如きは、草野氏池田氏の如き、大燈明上にあれば、安心なりといへども、卿も又成田坪田二村の為には大燈明なり、

されば二村の盛衰・安危、卿が一身にあり、能々感銘せらるべし、
二村の為卿が為、此の上もなき大事なり、
卿能く此の決心を定め、不動仏の、猛火背を焼くといへども、動かざる如くならば、二村の成業に於ては嚢中(のうちゆう)の物を探(さぐ)るよりも安し、
卿(きみ)が心さへ動かざれば、村民は卿を目的となし、船頭の船路を見て、おも柁(かぢ)取柁と呼ぶが如く、驕奢に流れぬ様(やう)おも柁と呼んで直し、遊惰に流れぬ様取り柁と呼んで漕ぐのみ、然る時は興国・安民の宝船、
卿が所有の成田丸坪田丸は、成就の岸に、安着せん事疑ひなし、
此の時君公の御悦びは如何計(いかばか)りぞや、
草野池田の二氏の満足も如何計ならんや、
勤めよや勤めよや。





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最終更新日  2025.11.28 00:00:15


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