ねこっぽ雑記

ねこっぽ雑記

2004年07月15日
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 13日の昼の部に引き続き夜の部を。夕べは中世卒論ゼミの発表のために完徹したので体調としては最悪。でもせっかく取ったチケットを無駄にする気にはなれず、しっかり歌舞伎座に行ってしまいました。

【桜姫が産み落とした赤ん坊を抱える清玄は、同じく寺を追われた残月と、元吉田家の局長浦のもとに身を寄せるが、二人に殺されてしまう。二人が権助を呼び寄せ、墓穴を掘っているところへ、女郎として売りに出された桜姫が連れてこられ、二人はまた再会。夫婦となる。一方落雷のショックで生き返った清玄は、なおも桜姫に執着するが息絶え、怨霊になる。女郎となってもお姫様言葉が抜けず、腕の釣鐘の刺青のかわいらしさから「風鈴お姫」とあだ名がついた桜姫。その美貌と風変わりぶりで人気が出るが、枕元に幽霊が出没するとの噂で客が離れ、権助の元に戻されてしまう。権助が落とした密書から、桜姫は、権助が父と弟を殺し、吉田家の重宝をも所持していることを知り、権助を手にかけて仇を討ち、めでたく吉田家再興を成し遂げる。】という物語です。
 下の巻での桜姫の見せ場はお姫様言葉と女郎言葉が混ざってしまった台詞(ex:世に亡き亡者の身を以って緩怠至極。エエ、消えてしまいねえよ。)。実際に観劇する前に台詞だけ読んだ時は「これがそんなに面白いのかしら…?」と思ったけれど、実際に観るとかなり楽しい。お姫様言葉を女郎言葉のリズムで謳い上げたりしていました(これが異様で楽しいんです)。
それにしても「ここまで変わるか!?」というほど落ちぶれてしまう桜姫。一見桜姫自身もそれを楽しんでいるかのように見えるのですが、舞台上に桜姫ただ一人になった時、「吉田家の息女である自分がこのように身を落としてしまったとは…」と身の上を歎くんです。この場面が印象的でした。でも身を落としてもやはり姫は姫。女郎の衣装と似合わない、気高い表情をしていました。
あとは権助と再会する場面の桜姫と権助のやりとりが楽しかったです。というのは会話のリズムが変なんです。片やお姫様、片や下衆だから。権助がパパパッと話すと桜姫がのろのろもたもた返事をする。よく会話が成り立つなぁ…という感じでした。
 清玄・権助の段治郎さんは、まず病気になってしまった清玄のゾンビのような化粧に驚いた(泣)。せっかくの顔がもったいないよ~と心の中で叫んでしまいました。あまりにすごい化粧で、言われなければ段治郎さんだと分からないです。たとえ言われても首をひねってしまう。台詞回しは明らかに段治郎さんなんだけど。
 あと段治郎さんで印象的だったのは、入間悪五郎(右近さん)を殺す時の権助の立廻り。格好いいんです。ただ歌舞伎的な格好よさではないけれど。ふと「新三国志3」の謳凌の立廻りを思い出しました。猿之助さんの立廻りと違ってあまりに切れがいいので驚いたのを覚えています。
 長浦は笑三郎さん。澤瀉屋一門では回ってこないような役どころだけに随分苦戦しておられる印象を受けました。あまりに作りすぎていてわざとらしいのが気になりました。慣れない役ということで仕方がないとは思うんですけど…。

 他にも感想はあるのですが、これ以上書き出すとかなり長くなってしまいそうなのでとりあえずここで打ち止め。最後は「義経千本桜―川連法眼館の場―」です。
【吉野山の義経のもとへ佐藤忠信が到着する。そこへもう一人忠信と静御前が到着したという。不審に思った義経は静に詮議をさせる。静は道すがら鼓を打つと忠信が現れたことを思い出し、初音の鼓を打ち、鼓を武器に忠信に迫る。偽忠信は、やむなく、鼓の皮になった老狐の子で、親恋しさに忠信に化けて供をしたのだと語る。義経はその真情とこれまでの忠勤を愛でて狐に鼓を与える。】
というあらすじ。猿之助さんの当り役である忠信を右近さんが務められました。
 そして感想なのですが、まず作品全体について思ったことは「もともとの作品に随分手を加えているな」ということ。卒論で千本桜を扱うので何も手の加えられていない、並木千柳・三好松洛・竹田出雲が作ったそのままの「義経千本桜」を読んでいるのですが、それと比べると随分カットや変更を施している。もともとの千本桜とは違う作品になってしまっているんだなぁ…と感じました。
 忠信と源九郎狐は右近さん。猿之助さんに似たところもある一方で、猿之助さんほど細やかな気配りはなされていないなというのが正直な感想でした。一生懸命演じているのはよく分かるのだけれど、あとは可もなく不可もなくというか…。
 静御前は笑也さん。随分台詞のテンポが早い静御前でした。義経役の門之助さんと台詞を交わすと、極端に言えば先ほどの桜姫と権助という感じ。ちょっと早すぎると思います。
 義経役は門之助さん。古風な台詞回しの中にしっかりと意志をあらわした義経でした。
 さて澤瀉屋の千本桜の最後は狐忠信の宙乗り。3階席から右近さんが飛んでくる様子を見ていました。右近さんが飛ぶ前はただ普通に宙乗りを楽しみにしていました。でもいざ右近さんが飛んできたら、飛んでいるのが猿之助さんではないことに寂しさを感じてしまったのです。右近さんが嫌だというわけでは全くなくて、ただ猿之助さんでないことが寂しく思われました。奮闘公演なんてしなくていい。口上だけでもいい。とにかく舞台に立つ猿之助さんを早く観たいです。





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最終更新日  2004年07月19日 20時54分22秒
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