ねこっぽ雑記

ねこっぽ雑記

2004年11月08日
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(9日記述)
昨日は久々に念願の歌舞伎座へ行ってきました。夜の部の招待券が当たったので、運良く観に行けることになったのです。ただ今月私が楽しみにしていた片岡千之助くん(孝太郎さんの長男)の初舞台は昼の部。どうしようかと思ったのですが、今後昼の部を観に行けるという保証もないので今日観ておこうということになり、昼の部途中の「積恋雪関扉」(つもるこいゆきのせきのと)から幕見をしました。
さてその「積恋雪関扉」。筋が複雑でわかりにくいのですがとりあえず以下にあらすじを。

【関守の関兵衛(吉右衛門)に身をやつして謀反の機会を狙う大伴黒主と、対する天皇側の良峯少将宗貞(富十郎)は、ともに深い雪に閉ざされた、京の逢坂山に潜伏している。小町桜の異名を持つ季節はずれの薄墨桜が咲くその関にやってきたのは宗貞の恋人の小野小町(魁春)。関兵衛は二人の仲を取り持とうとするが、誤って懐から謀反の鍵を握る割符と勘合の印を落としてしまい、宗貞に怪しまれはじめる。そこへ飛んできた鷹の足に付けられた血染めの片袖により、宗貞は弟安貞が自分の代わりに死んだことを知る。そして関兵衛こそ天下を狙う大伴黒主であると知った宗貞は、小町を小野篁のもとへ知らせに行かせる。
酒に酔いしれた関兵衛は、盃に映る星影を見て時節の到来を知る。そこで墨染桜を伐って護摩木とし、天下を望む祈りをしようとするが、桜の木から傾城墨染実は墨染桜の精(福助)が現れて、それをはばむ。墨染はかつて安貞と二世を契った仲だったが、安貞が悪人に討たれたと知って黒主の本体を見顕わし、立廻りになって黒主を悩ませる。】

今回一番印象的だったのは傾城墨染実は墨染桜の精の福助さん。というのはすごく歌右衛門さんを意識しているように感じられたのです。私は歌右衛門さんの舞台はビデオでしか拝見したことがないのですが、それにしても最初に出てきたときの台詞回しの落ち着き寂れたような感じなど、きっと歌右衛門さんを意識しているんだろうなと思いました。そう考え出したらなぜか面差しまで歌右衛門さんに似ているように見えてしまって。福助さんを拝見してこんな風に感じるのは初めてのことでした。ただ場面が進むに連れて歌右衛門さんの色は次第に薄れ、やはり福助さんらしい墨染桜の精になっていましたが。でも福助さんの役に対する真摯な態度には引き付けられるものがありました。

次はいよいよお待ち兼ね。片岡千之助くん(4歳)の初舞台「松栄祝嶋台」(まつのさかえいわうしまだい)。江戸っ子好みの祭りの風俗を取り入れた舞踊に、千之助くんは若鳶として登場です。おじいちゃんの仁左衛門さんが鳶頭、お父さんの孝太郎さんが芸者、そして愛之助さんが若い者として登場。
で、千之助くん。いや~、すっごく小さい。何をしてもかわいい。ひたすら拍手拍手でした。ご挨拶もちゃんとしていたし。特におじいちゃんに「しっかりとやるんだぜ!」と言われて「あい!」(←「はい!」、じゃなくて「あい!」なのがまたかわいい♪)と答えたときがめちゃくちゃかわいかった~。愛之助さんたちを相手にウルトラマン並みの大活躍でした。でもそれを見ている孝太郎さんの表情がすごかった。口上の時もすごく必死そうで。一方仁左衛門さんは孫に甘いというだけあって終止ニコニコと笑っていらっしゃいました。それにしても仁左衛門さん、格好良すぎてどうみてもおじいちゃんに見えない…。一緒に観に行った母親も同じことを考えていたらしい。

というわけで昼の部終了。夜の部までの間、歌舞伎座となりの文明堂でお茶していました。なにしろさっきまで立見だったので座れて甘いものが食べられるというのはこの上ない幸せ。ほっと落ち着いてから夜の部に突入です。



【吉岡鬼一法眼(富十郎)は、源義朝の家臣であった吉岡三兄弟の長兄だが、今は平家方に与している。そこで三男の鬼三太(吉右衛門)は、その真意を探り、かつ、鬼一の秘蔵する兵法虎の巻を入手するために、主君の牛若丸(芝翫)を奴の虎蔵、自らを奴の知恵内と偽って、鬼一館の奉公人になりすます。虎蔵に思いを寄せる鬼一の娘皆鶴姫(福助)は、虎蔵・知恵内の素性を知った上で、虎の巻を手に入れようとする二人を、鬼一のいる奥の間へと手引きするのであった。】

ここ2ヶ月歌舞伎とは疎遠になっていたので、実は今日の夜の部の演目が何であるかも知らずに観に行ったのです。そしたら「鬼一法眼三略巻」でびっくり。卒論で義経を扱っているだけに現実に引き戻されました(泣)。
昼の部の傾城墨染実は墨染桜の精が印象的だっただけにここでも福助さんに目が行ったのですが、不思議なことに皆鶴姫の時は「歌右衛門さんに似ている」とは全然感じませんでした。あくまでも福助さんらしい皆鶴姫。人形のようにおすまししていました。目から頬にかけて随分紅が施してあって、下手すると道化の腰元のように見えそうなのですが、牛若丸に言い寄るときに皆鶴姫が恥ずかしそうにする場面でこの紅がすごく効果的。ちゃんと頬を赤らめているように見えました。
ちなみに前回観た時の皆鶴姫は菊之助さん。福助さんの皆鶴姫よりもどこか艶っぽくて、福助さんの皆鶴姫が少女なら菊之助さんの皆鶴姫はお姉さんといった印象。どちらがいいとは言えないけれど、菊之助さん皆鶴姫の方が華やかさはあったかな、という気がします。あとはやっぱり気になってしまうのが牛若丸。芝翫さんの演技が、ではなくとにかく牛若丸のやることなすことが気になってしまいました。

次は「廓文章(くるわぶんしょう)―吉田屋―」。あらすじは以下の通り。

【年の瀬が迫り、慌ただしい大坂の遊廓吉田屋の店先に、みすぼらしい紙衣姿の男が、主人の喜左衛門を訪ねてやってくる。男の正体は、藤屋伊左衛門(鴈治郎)。大店の若旦那だが、扇屋の遊女夕霧(雀右衛門)のもとに通い詰めて身上をつぶし、親から勘当されている身だった。喜左衛門(我當)の好意で招き入れられ、やっと夕霧に再会できた伊左衛門。そこに勘当が晴れたとの知らせが届き、夕霧の身請けの金も支払われた。二人はめでたい新春を迎えることとなる。】

前回観た時は仁左衛門さんの伊左衛門。そして今回は鴈治郎さん。きっとお二人で全然違うんだろう、そして多分鴈治郎さんの伊左衛門の方が観ていてしっくりくるのではないだろうかと予想した上で観劇しました。結局この予想は大当たり。さすが鴈治郎さんだという伊左衛門でした。観ていてすごく自然というか。
というのは、仁左衛門さんの伊左衛門はきゃぴきゃぴと、わざとバカっぽく作っているような印象を受けるのです。でも鴈治郎さんの伊左衛門は、本人はいたって真面目なんだろうけど周りから見ると「ああ……バカだなぁ……」というバカっぽさ。次の演目「河内山」に出てくる河内山宗俊というお坊さんを呼んできて「バーカめーー!!」(こういう台詞があるのです)と言わせたいくらい(笑)。
なんていうか…鴈治郎伊左衛門はとにかく夕霧のことで頭が一杯で、地に足が付いていないお坊ちゃんという感じなんです。ここまで恋にかまけていられたら幸せだよなぁ…というお坊ちゃん。いかにも金銭感覚がなさそう。そして仁左衛門さんがきゃぴきゃぴと浮かれているのに対して、鴈治郎さんはポワーっと浮世離れをしていました。役の上とはいえこういう風になれるというのはすごいことだと思います。そして何より色っぽくて若い。70を過ぎているとは思えないくらい。
一方の雀右衛門さん夕霧も御年84とのことなのに若くて美しかったです。ただ同じ傾城でも、雀右衛門さんは揚巻のような江戸の傾城の方が似合っているように感じました。江戸のすっきりした衣装のほうが雀右衛門さんの美しさを引き立たせるというか。それにしても鬘といい衣装といい、あんなに重そうなものを身に付けてよく動いていられるなぁ…と恐れ入ってしまいました。
同じ「廓文章」でも仁左衛門さんver.と鴈治郎さんver.では幇間が出てくるか出てこないかなど多少違うようで、全体的に鴈治郎さんver.の方が地味だったのですが、でも正直なところ鴈治郎さんの方が見ごたえがありました。面白かったです。



【悪巧みに長けた御数寄屋坊主の河内山宗俊(仁左衛門)は、腰元勤めに出ている上州屋の娘浪路(孝太郎)が方向先の松江出雲守(梅玉)に幽閉されていると聞き、金目当てでその奪還を請け負う。上野寛永寺の使僧を装い松江邸に赴いた宗俊は、家老の高木小左衛門(左團次)や宮崎数馬(信二郎)を尻目に、堂々とした振る舞いで交渉を成立させ、帰りがけに北村大膳(芦燕)に正体を見破られても、開き直って啖呵を切る始末。松江候に地団駄を踏ませて悠々とその場を引き上げる。】

仁左衛門さんは河内山役は初役だそうで、どんな感じなのかなと楽しみにしていたのですが……うーん……期待していたほどではなかったというのが正直なところ。今回で「河内山」を観るのは3回目なのですが、私は一番最初に見た吉右衛門河内山が一番良かったように思います。
というのは、吉右衛門河内山はいつも自分のペースで、余裕を持って行動していたんです。そして半ば酔っ払っているような調子のよさがあり、身の上がばれようがなんであろうがとにかく楽しそう、そんな河内山。
一方今回の仁左衛門河内山は削ぎ落としてしまって贅肉のない河内山、という感じ。常にいっぱいいっぱいで、余裕や大胆不敵さがない。だから吉右衛門河内山だと客席から笑いが起った場面でも仁左衛門河内山では笑いが起きなかったりする。もっと周りに対して一枚も二枚も上手というところが欲しい気がしました。

長くなりましたが感想は以上のとおり。今まで歌舞伎を観たい観たいと思いつづけていたので、一旦ガス抜きをすることができてよかったです。





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最終更新日  2004年11月09日 13時16分50秒
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