2023年12月15日
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カテゴリ: フォーク
山崎ハコさんの11枚目のアルバム「風の色」のA面の最後に収録されている曲。
「風の色」というアルバムは、デビュー当時からの多くの固定概念を崩していった。
その前のアルバム「硝子の景色」の時点でその作業は始まっていた。
「硝子の風景」からファンになったと言われた事が当時はよくあったとハコさんも
エッセイに書いている。
そして「硝子の風景」「風の色」を作る事ができたのは「幻想旅行」「幻想旅行2」が
あったからだとハコさんは語っています。

何かが変わったようで、何も本質は変わっていないような、そんな揺れていた時期のハコさん。
そんな中で異色な1曲だと思うのがこの曲。







「旅人形-りりあ」
作詞・作曲 山崎ハコさん  編曲 福井峻さん

この曲は、このタイトルのまま短編小説としてエッセイ集「風の色」の中に残しています。
その小説を読んで、この曲の事がより深く知る事が出来て、より好きになった事を思い出す。
40年前の事。・・・

「りりあ」という人形が暗い倉庫から売り場の棚、そして人に買われて幾人もの手を渡って
そして捨てられて拾われて、また捨てられ、野良犬に咥えられ連れて来られたのは
暗い倉庫の中でよく聞いた船の汽笛の音が聞こえる場所。
小説は人形「りりあ」からの視点で人間たちや風景や風を感じている。

楽曲の「旅人形-りりあ」はこの人形の事を思って歌われてる曲。
ハコさんが「りりあ」と自分をだぶらせてるように書かれています。

ハコさんの「呪い」が暗くて怖い曲って言うのなら、
この「旅人形-りりあ」はある意味でもっと怖い曲。
(「呪い」は怖い曲だとは自分は思ってませんが)

曲を先に聴いていて、はっきりとは何なのか分からなかったのが、
アルバム発売から約1ヶ月後にこの小説を読んで背筋がゾクッとしたのを覚えてる。


「私は旅をする人形
 人間のように歩けないが 人間よりも歩けるぞ
 人間よりもはかない旅  人間よりも長い旅
 もしかしたら永遠の旅
 けっして息切れしたりせず 私に息などありません
 私に心臓ありません
 けれど死んではおりません」

そして野良犬に目を傷つけられてしまい片目がよく見えない状態でゴミの山の中。
風を感じながら、ぼんやりと船が見える。
暗い倉庫の中でよく聞いた船の汽笛はよく聞こえる。
最後にまた詩を語る。

「私は旅をする人形
 人間よりも小さくて 人間よりも大きいぞ
 人間のように生きられないが 人間よりも生きられる
 死んでいるのじゃありません 私には心臓はありません
 人間よりも早死にか 人間よりも長生きか
 自由なのか 不自由なのか
 人間よりも小さくて 人間よりも大きいぞ
 私は旅をする人形 
 人間よりもはかなくて 人間よりも長い旅
 人形だけの長い旅」

この詩で短編小説は終わります。
この小説を読んでから曲を聴くと不思議な感覚になってどこかに迷い込んで行く。
ハコさんの声の力と、絶妙な編曲でトリップしていく。
お酒なんて呑んでなくても酔ったような感覚になる。

この「風の色」という11枚目のアルバムはどこか忘れ去れがちな印象もあるのですが、
カッコいい曲が山ほどつまってるアルバム。
1曲目「ヨコハマ・アンバランス」は渋くてカッコいい曲です。これがハコさんだ!って
言いたくなる曲です。
2曲目「雨に唄えない」もソフトなロッカバラードで最高です。

B面3曲目「旅の人」は後藤次利さんの編曲が鳥肌立ちまくり。
ハコさんの歌の世界と完璧に融合してて引き込まれていく。
中島みゆきさんも後藤次利さんが編曲した曲はどれもレベチに思える。
どうしても中島みゆきさんは後藤次利さんが編曲した曲ばかり聴いてしまう。
「夜会」を全曲、後藤次利さんの編曲でやってほしいといつも思ってしまう。

そして「旅人形-りりあ」はこのアルバムで一番異色な世界。
「港O U T」「二人の風」「オーディション」など名曲揃いです。


(上がLPよりも10ヶ月遅れで発売されたCD 1983年12月5日発売 D35A0030
   下は2009年3月19日発売のリマスター盤 PCCA50075)



(1983年3月30日発売のエッセイ集 当時、何度も繰り返して読んだ)





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最終更新日  2023年12月15日 07時56分31秒


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