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94. 雪 国 (Yukiguni)【現代の標準的なレシピ】(液量単位はml)ウオッカ(40)、ホワイト・キュラソー(20)、ライム・ジュース(10) ※カクテルグラスの縁を砂糖でスノー・スタイルにした後、あらかじめミント・チェリーをグラスの底に置く(なお、1958年の考案当時は、日本国内では生ライム、生ライム・ジュースは出回っておらず、ライム・コーディアルジュースを使用していた)。 【スタイル】シェイク 1958年(昭和33年)、山形県酒田市のバー・ケルンのオーナー・バーテンダー、井山計一氏が、川端康成の小説「雪国」をイメージして考案、第1回寿屋カクテルコンクール(1959)で最優秀賞に輝きました(初めて発表されたのは、前年1958年に開催された寿屋コンクールの東北大会でした)。 日本生まれのカクテルとしては、世界的には「バンブー」が最も有名ですが、残念ながら考案したのは明治期に米国から来日した外国人です。「雪国」は、その後も多くのカクテルブックや全国各地のバーテンダーに紹介され続け、日本人の考案したスタンダード・カクテルとしては、現在、最も有名な存在でしょう(今では海外のバーテンダーでも知っている人が少なくありません)。 井山氏は92歳の今(2018年)もなお、現役バーテンダーとしてカウンターに立ち続けていて、バー業界のレジェンドです(末尾の【追記】ご参照)。今年は、井山氏の歩んできた人生とカクテル「雪国」誕生秘話を描いたドキュメンタリー映画「YUKIGUNI」が完成、地元・山形で先行上映されました。2019年以降、首都圏(1月から)や関西でも公開される予定です。 「雪国」はバーテンダー修業をしていた井山氏が、コンクール出場のために、身近にあったウオッカ、ホワイト・キュラソー、ライム・コーディアルという材料で急きょ考えたと言います。当初は、ミント・チェリーなしで考えていたそうですが、何かアクセントがほしいなぁと思っていたところ、仙台にいたバーテンダーの友人とのアドバイスもあって、当時、店に回ってきた営業マンから購入した珍しいミント・チェリーを沈めることを思いついたそうです。 当時としては、とても斬新だった「スノー・スタイル」(塩や砂糖をグラスの縁に付けること)という見た目のひと工夫は、井山氏によれば、「雪国」誕生の5年前にあったカクテルコンペで優勝した「キッス・オブ・ファイア」(この連載の第47回で取り上げています)というカクテルからインスピレーションを得たそうです。 現代のスタンダード・カクテルと言えども、当たり前ですが、当初はバーテンダー個人が考案した創作カクテルでした。それが長い歳月の中で、数多くのお客様に愛されて注文され続け、バーテンダーがつくり続けた結果、「スタンダード」として定着・認知されてきた訳です。 国内外では毎年、何百、何千という数多くの創作カクテルが誕生していますが、残念ながら、たとえコンクールで優勝、準優勝したカクテルでも数年後に生き残るものは極めて稀です。戦後誕生した日本人の手による創作カクテルで、現在でも長く生き続け、全国ほとんどのオーセンティック・バー通じるくらい知名度を持っているのは、雪国以外では、ソル・クバーノ、キングス・ヴァレー、オーガスタ7くらいでしょうか。そうした創作カクテルの中でも、「雪国」は最も有名で偉大な存在と言えるでしょう。 なぜ「雪国」がここまで愛され続け、生き残ってきた理由ですが、やはり3つの材料だけで構成された飽きのこないシンプルな味わい、酸味と甘味のバランスの良さ、そして「スノー・スタイル」にして、ミントチェリーを沈めるというビジュアルでの工夫。この4つの絶妙な組み合わせが大きかったと思います。 しかし誕生当初、日本のバーではカクテルという飲み物はまだあまり馴染みなく、井山氏は「コンクールで優勝した後でも、(ケルンでも)雪国の注文はあまりなかった。飲まれるのはハイボールやビールばかりだった」と振り返ります。その後、80年~90年代のカクテルブームの時でも、爆発的に飲まれるということはなかったということです。 しかし10年ほど前、ある英字新聞が井山氏と雪国について記事で大きく紹介したのがきっかけに、テレビや雑誌等でもよく取り上げられるようになり、全国からお客様が来るようになったといいます。今では、映画公開の効果もあって、ケルンは連日満員です。井山氏は毎日何十杯も雪国をつくるそうです(あまりに忙し過ぎて疲れ気味なので、最近は毎週のお休みを1日増やして、月・火を連休にされています)。 なお当初は、冒頭のレシピで提供していた井山氏ですが、現在は辛口な味わいにレシピを変えておられます。現在ではウオッカを45~55ml、ヘルメス・ホワイトキュラソー7~8ml、ライム・コーディアル(サントリー・ライム)3~4mlです。ウオッカは、度数の違うサントリー・ウオッカを2種(40度と50度)を使い分けておられます(アルコールに強いか弱いか、男性か女性かなどお客様に応じてウオッカの度数を選択しておられます)。 辛口に変えた理由について、井山氏は「当時は時代的に甘口が好まれたけれど、現在では辛口志向になっているから、昔と同じレシピでつくると甘すぎるし、。レシピも時代に合わせて変えていけばいいと思う」と話しています。頑固にレシピを変えないバーテンダーもいますが、飲み手の嗜好に合わせて柔軟に対応するという姿勢は、後輩である私たちは忘れてはいけないと思います。 【確認できる日本初出資料】カクテル小事典(今井清&福西英三著、1967年刊)。レシピは冒頭に掲載のものと同じ。【2021年6月追記】大変残念ながら、井山計一氏は、2021年5月10日、老衰のため死去されました。謹んでご冥福をお祈り致します。
2018/12/31
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成田一徹切り絵原画・販売用小作品の紹介(12)です(販売主体は「オフィス一徹(Office Ittetsu)」です。Bar UKは、販売場所提供と販売・発送実務でお手伝いしております。販売されるのは原則、原画のみです。額やマットは恐れ入りますが、購入者側でご用意ください)。 ※絵のタイトルは、原則「仮のもの」です。絵のサイズの単位はミリ。 「黒豹」(カラー) サイズ=220×152 価格=¥40,000 =SOLD 「バラ」 サイズ=170×210 価格=¥10,000 「ツクシ&タンポポ」(2枚組) サイズ=150×110 価格=¥8,000 =SOLD 「カクテルグラス」 サイズ=90×55 価格=¥13,000 =SOLD 「サクラ」 サイズ=216×67 価格=¥15,000 「男の肖像」 サイズ=174×90 価格=¥18,000 「習作10点」 サイズ=80×190 価格=¥7,000 「茶道」 サイズ=104×163 価格=¥9,000 =SOLD 「謀議」 サイズ=120×120 価格=¥12,000※掲載された原画の現物はBar UK店内にあり、営業時間中であればいつでもご覧頂けます。遠方の方で、宅配便での発送をご希望の方は御支払い方法等のご相談に応じます(お問合せは、Bar UK <06-6342-0035><arkwez@gmail.com> または、「オフィス一徹」(代表・成田素子さん)<yumekanau@wakuwaku.zaq.jp> まで)。
2018/12/31
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成田一徹切り絵原画・販売用小作品の紹介(11)です(販売主体は「オフィス一徹(Office Ittetsu)」です。Bar UKは、販売場所提供と販売・発送実務でお手伝いしております。販売されるのは原則、原画のみです。額やマットは恐れ入りますが、購入者側でご用意ください)。 ※絵のタイトルは、原則「仮のもの」です。絵のサイズの単位はミリ。 「あじさい」 サイズ=68×112 価格=¥7,000 「落花」 サイズ=86×95 価格=¥10,000 「カブト」 サイズ=110×75 価格=¥7,000 「抱擁」 サイズ=130×125 価格=¥15,000 =SOLD 「カッター・レース」 サイズ=128×107 価格=¥12,000 「カワセミ」 サイズ=165×120 価格=¥15,000 「トルコキキョウ」 サイズ=200×105 価格=¥12,000 「タンポポ」(カラー) サイズ=180×130 価格=¥18,000 「銀座」 サイズ=166×120 価格=¥15,000 「帆船」 サイズ=225×150 価格=¥30,000
2018/12/30
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Bar UKからのお知らせです。 皆さま、バーUKは本日28日(金)が本年の最終営業日となります。営業時間は、午後4時~11時です。皆さまのお越しを、心よりお待ちしております。【Bar UK】 大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半(入店は8時まで)、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては変更されることも有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円
2018/12/28
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Bar UKからのお知らせです。 Bar UKは振替休日の本日24日(月)、午後3時~9時頃で営業致します。皆さまのお越しをお待ちしております。 なお、午後8時半以降にご来店の場合は、事前に店までお電話をお願いいたします(電話06-6342-0035)。8時半までにお電話がない場合は、閉店の準備に入らせて頂きます。【Bar UK】 大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半(入店は8時まで)、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては変更されることも有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円
2018/12/24
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Bar UKからのお知らせです。皆さま、明日22日の土曜日、Bar UKは通常通り(午後2時~8時半)営業いたします。ただし、入店は8時までです。8時以降にご来店の場合は、必ず店までお電話(06-6342-0035)をくださいませ。ご連絡がない場合は、閉店の準備に入らせて頂きます(ご連絡があった場合は、営業時間を9時頃まで延長いたします)。以上、何卒よろしくお願いいたします。【Bar UK】 大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半(入店は8時まで)、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては変更されることも有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円
2018/12/21
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皆さま、Bar UKの2019年1月の店休日のお知らせです。 1月の店休日は、現時点では以下の通りとなります。 1日(火)~3日(木)=年始休み、6日(日)、13日(日)、14日(月=祝日)、19日(土)、20日(日)、27日(日)。 ※なお、14日はグループでのご予約があれば臨時営業致します。(できれば3日前までに)マスターまでお尋ねください。 ※年内は28日(金)まで営業致します。【Bar UK】 大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半(入店は8時まで)、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては変更されることも有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円
2018/12/20
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Bar UKからのお知らせ皆さま、明日12月15日土曜日は、Bar UKの営業時間を諸事情により、午後4時〜11時に変更させて頂きます(※営業日の土曜の営業時間は、通常は午後2時〜8時半です)。以上、何卒ご了承くださいませ。【Bar UK】 大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半(入店は8時まで)、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては変更されることも有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円
2018/12/14
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Bar UKマスターからのお知らせです。********************************** バーUKで開催された昨日の第15回「テイスティングの集い」(テーマは「ボトラーズ・ボトルを楽しもう!」)は、計17名の方がご参加下さり、盛況のうちに終了いたしました。 今回のテイスティングの対象は、店にあるボトラーズ・ボトルのほぼ全ての43本。出来るだけたくさんの銘柄を味わって頂きたく、10ml単位でお出しいたしましたが、樽出し度数も多かったこともあり、最も多い方でも約20種類くらいでギブアップされました。 「飲めなかった銘柄は次回チャレンジしたい! 同じテーマでまた開催してください」との早速のリクエストもありました。半年後くらいにまた「ボトラーズ」をテーマに開催したいと思います。 当日は「Special Offer」として、43本のボトラーズ・ボトルとは別に、オフィシャルですが、グレングラッサ(Glenglassaugh)の30年=写真上=を超サービス価格でお出し致しました。参加者の皆さんに満足して頂けたなら幸いです。 ご参考までに、当日テイスティングしたボトルを紹介しておきます。【Single Malt】Ben Nevis 17 years Madeira cask finish (1999~2017)48度Blair Athol 27 years Sherry cask (1988~2016)58.9度Clynelish 20 years Sherry cask (1996~2016)48度Edradour 10 years Sherry cask(2006~2017) 46度Glenturret 8 years Sherry Cask (2009~2018) 46度Jericho: Lost distillery collection(Sherry cask) 43度 ※熟成年数表記なしTomatin 20 years Pedro Ximenez sherry cask finish 46度Black Snake 2014年ボトリング 56.1度(※中身はGlenfarclas? 熟成年数表記なし)Breath of Speyside (2006~2017)58.5度 Dufftown 7 years (1999~2006)43度Glenallachie 12 years Sherry cask (2004~2016)62度Glen Elgin 17 years (1995~2013)58.2度 ※Raw caskシリーズGlenlivet 35 years (1973~2008)53.9度Glenrothes 11 years sherry cask matured 58度Inchgower 14 years 43度 Linkwood 21 years Bourbon cask(1996~2017)43度Longmorn 12 years 43度(2000年頃の蒸留)Macallan 19 years (1991~2011)56.6度 Gordon&Macphil 40 years (中身は70年代前半のMacallanで、2012〜13年頃のボトリング)56.6度Strathisla 36 years Sherry cask(1979~2016)46度Strathmill 12 years (1989~2001)43度Tormore 15 years Cote-Rotie Wood Finish (2002~2017) 45度Auchentoshan 18 years (1997~2015)52.3度 ※Raw caskシリーズRosebank 16 years (1990~2006) 61度 ※閉鎖蒸留所ボトルHighland Park 21 years (1995~2016)43度 Isle of Jura 20 years Rum cask finish(1996~2017)46度Talisker 5 years 58.7度 ※蒸留年等は不明Bowmore 5 years (1995~2001)62.2度Bruichladdich 13 years Sherry Cask (2004~2017) 66度Bruichladdich 21 years Bourbon Cask (1992~2014) 57度Bunnahabhain 27 years Sherry cask(1988~2015)53.7度Laphroaig 17 years Sherry cask (1996~2013)59.2度 Laphroaig Madeira cask matured (1998~2015?) 53.5度 ※ボトリング年表記なし【Single Grain】Invergordon 46 years(1966~2012)51.9度Cameronbridge 21 years (1995~2016)57度Cameronbridge 13 years (1988~2001)67.5度【Blended Malt】Dornoch Blended Malt 23 years Sherry Cask 53.6度 Founder's Reserve(Spencer Colling)10 years 54度 The Glover 18 years(By Adelphi)48.6度 (Scottish & Japanese Blended Malt)Six Isles Pomrol Cask Finish 48度、Six Isles 43度Shackleton of Mackinlay's 40度こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2018/12/13
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Bar UKからのお知らせです。 皆さま、明日12日(水)は、バーUK・第15回「テイスティングの集い」開催のため、午後9時頃まで貸切営業となります。何卒ご了承くださいませ。 今回のテーマは「ボトラーズ・ボトルを楽しもう!」。約30銘柄もの多彩なボトラーズのモルトを堪能して頂きます。 午後7時の回は満席となっていますが、8時の回はまだ1〜2席余裕がございます。ご興味のある方は本日中に、店まで(営業時間中に)お電話でご連絡をお願いいたします(06-6342-0035)。【Bar UK】 大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半(入店は8時まで)、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては変更されることも有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2018/12/11
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93. 横 浜 (Yokohama)【現代の標準的なレシピ】(液量単位はml)ジン(30)、ウオッカ(15)、オレンジ・ジュース(15)、グレナディン・シロップ(10)、アニス酒(アブサン、パスティス、ぺルノーなど)1~2dash 【スタイル】シェイク 明治の開国後、日本は欧米諸国との関係を深めていきます。そして1896年(明治29年)には、日本郵船が欧州との間に初めて客船「土佐丸」で定期航路を開きます。 1902(明治35)年には、同社は欧州極東往航同盟への正式に加入。最盛期には、他社も含めて20隻近い大型客船が日本(横浜や神戸など)と欧州を結ぶ航路で定期運航されていたということです(欧州まではスエズ運河経由で約50日も!かかりました。客船での欧米との定期航路は戦後、航空機の発達で姿を消します)。 このカクテル「Yokohama」は1910年代前半以前に、横浜(居留地?)のホテルバー、あるいは横浜を母港に運航された外洋大型客船内のバーで生まれたという説が一般的です。欧州にもほぼ同じ時期に伝わっています。しかし残念ながら、根拠のある資料や考案者などの詳細は一切伝わっていません。 欧州航路の拠点港・横浜の名を冠したカクテルが考案されたことは何ら不思議ではありませんが、その誕生の場所としては、個人的には、日本船籍の大型客船内のバーの可能性が高いのではないかと推察しています(当時、外国の船会社の大型客船が遠い日本にまで就航していたという話は、調べた限りは確認できませんでしたので、おそらくは日本船籍の大型客船でしょう)。 濃いオレンジの色合いは「横浜港の沖合いから昇る朝陽をイメージした」とも言われていますが、「ジンやウオッカ、アブサンという複数の国の酒をベースにしていることからも、豪華客船内のバーが”国際航路”をイメージして創作し、Yokohamaと名付けたのでは」という見解もあります。ちなみに日本の都市名が付いたカクテルはいくつかありますが、国際的にも知られているのは、このYokohamaだけです。 活字となったYokohamaが初めて確認できるのは、世界初の実用的カクテルブックとも言われるハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の「ABC of Mixing Cocktails」(1919年刊)です。1910年代の欧州で、このカクテルがすでに認知されていたことがうかがえます。 マッケルホーン本でのレシピは「ジン3分の1、ウオッカ6分の1、オレンジ・ジュース3分の1、グレナディン・シロップ6分の1、アブサン1dash(シェイク)」となっています。 ご参考までに、1930~40年代の欧米のカクテルブックでYokohamaがどのように紹介されているのかを、ざっと見ておきましょう。・The Savoy Cocktail Book(Harry Craddock著、1930年刊)英 ドライ・ジン3分の1、ウオッカ6分の1、オレンジ・ジュース3分の1、グレナディン・シロップ6分の1、アブサン1dash(シェイク)・World Drinks and How To Mix Them(William Boothby著、1934年刊)米 ジン3分の1jigger、ウオッカ、オレンジ・ジュース、グレナディン・シロップ各1Spoon(※このSpoonのサイズは不明)、アブサン1dash(シェイク)・The Official Mixer's Manual(Patrick Gavin Duffy著、1948年刊)米 ドライ・ジン3分の1、ウオッカ6分の1、オレンジ・ジュース3分の1、グレナディン・シロップ6分の1、ペルノー1dash(シェイク) 最後に、近年のカクテルブック(掲載例は意外に少ないです)ではどのようなレシピになっているか、一例を紹介しておきましょう。・Complete World Bartender Guide(Bob Sennett編、2007年刊)米 ジン4分の3oz(オンス)、ウオッカ2分の1oz、オレンジ・ジュース2分の1oz、グレナディン・シロップ2分の1oz、ペルノー1dash(シェイク) なお、Yokohamaは日本生まれのカクテルですが、なぜか国内のカクテルブックで紹介されるのは1930年代に入ってからです。バー業界でも知名度のあるカクテルですが、残念ながら、カウンターで注文されるシーンはあまり見かけません(唯一、横浜のバーではご当地カクテルとしてそれなりに飲まれているようですが…)。【確認できる日本初出資料】「スタンダード・カクテルブック」(村井洋著、NBA編 1936年刊)。レシピは「ドライ・ジン3分の1、ウオトカ6分の1、オレンジ汁3分の1、グレナディン・シロップ6分の1、アブサント1滴。以上をよく振蕩(シェイク)してコクテール・グラスに注いで供す」と、サヴォイ・カクテルブックと同じです。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2018/12/09
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約1カ月半ぶりのBar UK写真日記です(By うらんかんろ)。 バーUK定番ハイボール(デュワーズ、角瓶)のピールは、夏場はレモン、冬場は柚子です。今年も柚子ピールの季節がやって来ました。マスターの家の柚子も今年は豊作(2枚目の写真)だったそうです。 冬場と言えば、今年は「冬季限定」フードメニューとして、11月5日から”おでん”が登場しています。寒い夜、小腹がすいたら栄養価も高いおでんで身体を温めてみませんか?(お任せ5個で450円です)。 バーUKに新しいモルトがお目見えです。ベンネヴィス17年のマデイラカスク・フィニッシュ(ボトラーズもの)=1枚目の写真=と、アランのマルサラカスク・フィニッシュです。どちらも芳醇な美酒で、とてもリーズナブルなお値段です。ぜひお試しを! ワイン・バーではないバーUKですが、ボジョレー・ヌーボーは毎年1本だけ置いています。これはマスターが味に自信を持って選んだ銘柄ですが、すみません、現時点ではもう空になっています(笑)。 バー業界(人)の雑誌「Whisky Voice」に初めてマスターの投稿が掲載されました。マスターは「嬉しいけれど、投稿欄ではなく、いつか、記事ページで単独で紹介されるようなバーになるのが夢です」とさらなる精進を誓っていました。 バランタインは有名銘柄のブレンディド・ウイスキーですが、これは今年の限定品。20~30年熟成の原酒もブレンドしていてめちゃ美味しかったのですが、やはりバーUKのお客様にあっと言う間に飲まれて、空になってしまいました。 バーUKに最強のアルコール度数のモルト・ウイスキーがやって来ました。ブルックラディ13年シェリーカスク。なんと66度です。こんなのを見つけて商品化したボトラーズ会社に敬意を表したいですね。 バーUKには珍しいフランス産のウイスキーが入荷しました。ボルドー生まれの「ムーン・ハーバー(Moon Harbour)」です。このほどブレンディド・ウイスキーとブレンディド・モルトの2種類が日本へ初輸入されましたが、これは甘口白ワインのソーテルヌ樽で追加熟成させたブレンディド。文句なしに旨いです。フランス産ウイスキーおそるべしです。 バーUKのアイラモルト「キルホーマン」に新しいボトルが仲間入りです。広島の酒屋さん「リカーランド・キムラ」さんが独自で発注し商品化した、その名も「キムホーマン」。バーボンカスク熟成の7年ものですが、58.9度。スモーキーで、ガツンなボディの美酒。これは飲むしかないです。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2018/12/08
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92.X・Y・Z 【現代の標準的なレシピ】(液量単位はml)ラム(30~40)、コアントロー(またはホワイト・キュラソー、トリプルセック)(15)、レモン・ジュース(15) ※ラム(20)、コアントロー(20)、レモン・ジュース(20)という等量のレシピもあります。 【スタイル】シェイク 誕生の正確な経緯は、残念ながらまったく不明ですが、1910~20年代のロンドンかニューヨークで「サイド・カー」のバリエーションの一つとして生まれたと言われています(出典:欧米のWeb専門サイト)。 カクテル名の「X.Y.Z.」の由来もよく分かっていません。日本のカクテルブックでは、アルファべットの最後にくることから、俗語で、「もう後がない(=これ以上のものはない)」「おしまい」「最高の、究極の」という意味で使い、このカクテルも、そういうという意味で名付けられたと解説する文献が目立ちますが、その根拠は示されていません。 しかし、カクテル研究家の石垣憲一氏は、その著書「カクテル ホントのうんちく話」(2008年、柴田書店刊)のなかで、「X・Y・Z」とは、「知られていない、あるいははっきりさせたくないもの(レシピは)ナ・イ・ショという意味である」と記していますが、石垣氏も、根拠となる資料について触れていないので、真偽のほどはよく分かりません。 「X.Y.Z.」と言えば、現代では通常ラム・ベースですが、不思議なことに、20世紀前半にはジン・ベースとラム・ベースの2種類の「X.Y.Z.」が存在していたのです。しかもジン・ベースの「X.Y.Z.」のレシピは、明らかにマティーニのバリエーションです。 欧米のカクテルブックで初めて「X.Y.Z.」という名前のカクテルが確認できるのは、1922年に米国で出版された「Cocktails: How to mix them」(Robert Vermeire著)です。しかし、そのレシピは「ジン3分の1、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット3分の1、レモン・ジュース4分の1個分、シロップ少々(シェイク)」となっていて、「(マティーニのバリエーションでもある)ブロンクスというカクテルのバリエーションである」と言及しています。 ラム・ベースでの「X.Y.Z.」が初めて活字になるのは、その8年後に出版された「The Savoy Cocktail Book(サヴォイ・カクテルブック)」(1930年刊)です。そのレシピは「バカルディ・(ホワイト)ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)」とほぼ現代レシピと同じです。 ご参考までに、1930年代~70年代の欧米のカクテルブックで「X.Y.Z.」がどのように紹介されているのか、簡単に振り返っておきましょう。・「Cocktails」(Jimmy of the Ciro's著、1930年刊) ジン3分の1、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット3分の1、レモン・ジュース4分の1個分、シロップ少々(シェイク)・「Café Royal Cocktail Book」(W.J. Tarling著、1930年刊) ホワイト・ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)・「World Drinks and How To Mix Them」(William Boothby著、1934年刊)※ジン・ベース、ラム・ベースの2種類が収録されています。 X.Y.Z. No1=ジン3分の1、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット3分の1、レモン・ジュース4分の1個分、シロップ少々(シェイク) X.Y.Z. No2=ホワイト・ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)・「The Official Mixer's Manual」(Patrick G. Duffy著、1948年刊) ダーク・ラム2分の1(※ダークラム・ベースは極めて珍しいです)、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)・「Old Mr. Boston Official Bartender's Guide」(1953年版) ホワイト・ラム2分の1、トリプル・セック(ホワイト・キュラソー)4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)・「The Bartender's Standard Manual」(Fred Powell著、1979年刊) ダーク・ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク) ちなみに近年はどうかと言えば、ベースを替えればほぼ同じカクテルとも言えるギムレットやサイドカー、バラライカの陰にかくれて、「X.Y.Z.」はあまり掲載されることは少ないのが現実です。探すのに苦労しましたが、何とか見つけたのが以下の一冊です。・「New York Bartender Guide」(Sally Ann Berk著、1995年刊) ライト・ラム7分の4、ホワイト・キュラソー7分の2、レモン・ジュース7分の1(シェイク) 「X.Y.Z.」は日本には、ジン・ベースのものは戦前に伝わっていますが、ラム・ベースのものが文献で紹介されるのは戦後の1950年代になってからです。ただし、現代の日本のバーでは、知名度がそれほどないためか、注文されることの少ない可哀想なカクテルになっています。【確認できる日本初出資料】「世界コクテール飲物事典」(佐藤紅霞著、1954年刊)。レシピは「ホワイト・ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)」となっています。※日本では、1924年刊の前田米吉著「コクテール」に同名カクテルが登場しているのですが、ラム・ベースではなく、ジン・ベースです。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2018/12/01
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