ミステリの部屋

ミステリの部屋

2005年09月06日
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カテゴリ: 日本ミステリ
先日「 消えた山高帽子
期待通りでした。

第22回小説推理新人賞受賞作「影踏み鬼」、協会賞候補作「奈落闇恋乃道行(ならくのやみこいのみちゆき)」など、幕末から明治を舞台に描かれた5編が収録されています。


影踏み鬼……若き狂言作者が師匠から聞いた奇談。大店の跡取息子がさらわれた事件の真相と驚くべき結末。

藁屋の怪……盲目の芸人・ヨシは寝泊りさせてもらった家で妙な気配に悩まされます。その家には男に騙され大金をもったまま姿を消した娘がいたらしいのですが。

虫酸……三回忌を過ぎても決して再婚しようとしない加代。凶状持ちで、でかいだけの独活の大木だった夫をそこまで想い続ける理由は。

血みどろ絵……落語家の父親は10年前に殺害されました。その頃ねえやだったタツ子はなぜあえて不幸になるような人生を選んでいたのか。

奈落闇恋道行 ……歌舞伎役者坂東彦助は、舞台で大きなトチリをした翌日、自ら命を絶ちます。その真相は。



それぞれの作品のなかでは、まず、とある事件に対する表の認識、つまり、公に知らされる事件のあらましが語られます。
すでに事件は決着しているのですが、実は思いがけない真相がそこにあることがわかります。

薄皮をはぐように、次第に真相が明かされていく過程は、読み手が人の心の奥底にあるものを覗き込んでいく過程でもあります。

そして、そこあるのは暗闇です。
果てしなく落ち込んでいくような奈落の底。

ときには鋭く胸に刺さり、ときにはゾッとさせられ、

こういう心の闇を直視させられるような小説はどちらかというと苦手な私ですが、それでも読んでよかったと思いました。


まっとうに生きようとしている人がどうして闇に落ち込むことになるのか、うっかり潜ませた心の鬼から目をそらせないのはなぜか。
まさにすさまじいとしか言えません。


影踏み鬼  影踏み鬼: 翔田寛


※あらすじには、先に読むと面白さが減少することが書いてありますのでご注意ください。







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最終更新日  2005年09月06日 20時00分51秒
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