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2024.04.25
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カテゴリ: 安楽伝 あらすじ



第27話

韓燁(ハンイェ)は帝梓元(ディヅユアン)が今でも自分を気遣って皇太子府を訪ねてくれたと喜んだ。
しかし靖南(セイナン)での出会いから都での再会まで全て計略だと知った今、その顔に笑顔はない。
「思惑があると知りつつ、君を信じるがゆえ追及はしなかった…
 私という駒はもう必要ないのか?使い道があるなら遠慮なく言ってくれ」
「…今はただ謝罪を待っているだけです」
「陛下は知らなかった、皇祖母の罪だった」
「でも帝家に釈明の機会さえ与えなかった…父親が自害したのにそれでも一族を皆殺しにしたわ!

「…梓元、君は独りではない、温朔(ウェンショウ)とは親しいだろう?君を慕っている
 彼を実の弟だと思えばいい、少しは気が晴れる」
梓元は韓燁のあまりに短絡的な慰めに落胆し、挨拶もせず帰って行った。

一方、温朔も苑琴(エンキン)との久しぶりの再会を喜んでいた。
しかし恩人である皇太子を裏切ることはできず、任(レン)府には頻繁に行けないと伝える。
「殿下のそばにいてあげないと…」
「あなたの恩人?確か殿下があなたに救われたと聞いたけど…」
その時、梓元が出てきた。
顔色が悪いところをみると、梓元と皇太子の怨讐は解けなかったのだろう。
「安楽(アンルー)姐…久しぶりだね、元気だった?」
温朔の声を聞くと梓元は自然と笑顔になった。

 私も本当の弟だと思ってる、暇があったら遊びに来てね」
韓燁は院子から梓元の背中を見ていたが、結局、梓元は一度も振り返らずに馬車に乗った。

安寧(アンニン)は冷北(ランベイ)の正体が北秦(ホクシン)の皇子だと知る由もなく、公務を任せて静養していた。
おかげで心身も回復し政務に戻ったが、今回の一件で動揺が広がった所につけ込まれたのか、西北で北秦人による強奪が増えていると分かる。
安寧は急ぎ国境の警護を厳しくすると決めたが、冷北はその前に計画を進める必要に迫られた。

「朝廷が動揺した今こそ好機だ、西北の警固が強化されたら計画が無駄になる!
 私の計画を駄目にすればお前の命では償えぬぞ!」
「殿下、焦りは禁物、まだ時期尚早です」
姜瑜はさらに火種を炊きつける必要があると訴え、安寧を殺せず、帝家の配下も使えないのなら、朝廷を揺るがすしか方法がないという。
「ともかく必ず殺す者がいる…」
「任安楽か?」
「帝家唯一の生き残りで策謀に長ける、我々になびかぬのなら始末せねば…
 韓仲遠(カンチュウエン)に殺させれば禍根を断てる上、民は朝廷に反感を抱きます」
そこで姜瑜は瑇(タイ)山に身代わりを送って君主を欺いた罪で帝梓元を断罪しようと思いついた。

洛銘西(ルォミンシー)の期待通り人心を得た帝梓元は今や世に名高い帝盛天(テイセイテン)と並び称され、皇帝を非難する声が高まった。
しかし近頃、翎湘楼(レイショウロウ)に現れる見慣れぬ書生たちが気にかかる。
琳琅(リンロウ)は確か皇太后が崩御して2日後から来るようになったと気づいた。
自分たちの預かり知らぬところで何かが動き始めたと感じる二人…。
一方、皇帝は都での帝梓元の名声が高まったと知って怒り心頭だった。
思えばこの10年、常に帝盛天の影に怯えてきたが、まさかその姪孫が朝廷で騒ぎを起こすとは予想だにしなかった。
「このままでは本当に帝梓元が第二の帝盛天になりかねん!
 朕の地位を脅かす者は決して許さぬ…何人であろうと皇位に手はかけさせぬ!」
そこで皇帝は洛銘西を呼ぶよう命じた。

洛銘西は韓仲遠が皇帝として正義を示さねばならないとしても、文武百官の前で面目を潰され、皇太后まで死に追いやられた怒りを受け止める者が必要だと分かっていた。
「梓元のため、この役目は私が務める、琳琅、私が戻らぬ場合の処置は分かるな?」
「大人がお出かけの後、店を閉めます…お戻りにならない時は千月閣を全て帝小姐に託します」
「それでいい」
琳琅は想い人を引き止めることも叶わず、ひとしきり琴を奏でていた。

洛銘西は帝家の名誉回復に便宜を図るため帰順したと認めた。
梓元と幼なじみだった縁で靖安(セイアン)侯から世話を頼まれていたという洛銘西、そこで身代わりを立てることで帝家の血筋を後世に残そうと考えたという。
しかし皇帝は当時まだ10代だった洛銘西が単独で動いたとは思えず、誰と共謀したのか白状するよう迫った。
「何を隠している?!」
「私一人の考えでした、おとがめとあらば死罪になる覚悟です」




韓燁は洛銘西が皇帝の勅命で罷免され、投獄されたと聞いた。
「梓元の身代わりを立てた件だな…」
身分を偽るのは紛れもなく君主を欺く大罪、韓燁は洛銘西が梓元を守るため、独りで全て背負うつもりだと気づいた。
吉利(キツリ)の報告では巷でこの件に非難の声が上がっているという。
「何者かが朝廷を撹乱しようとしているな」
すると温朔がふいにおかしい話だと訴えた。
「殿下、帝家の謀反が濡れ衣なら安楽姐だって逆賊の娘じゃない
 瑇山に行かなかったとしても罪ではないでしょう?」
「…その通りだ、その点を訴えて洛銘西を救おう」

韓燁は刑部大牢の洛銘西を訪ねた。
すでに拷問で傷だらけの洛銘西、そこで韓燁はせめてもの償いに傷薬を塗ったが、あっという間に薬瓶は空になってしまう。
「梓元のためにここまで…」
「殿下こそ、梓元の素性を証言してくれた、幸い殿下は陛下と違う」
「だが梓元を守れなかった、10年前も10年後の今も…
 もはやこの件は帝家ではなく靖国の問題だ、必ず出してやる」
韓燁は薬を届けると約束し、ひとまず牢をあとにした。

韓燁が刑部を出ると梓元が立っていた。
梓元が来ると分かってた韓燁はすでに獄卒に話をつけてあるという。
「会って来い…洛銘西の投獄は陛下の過ちだ、釈放するよう説得する、ただこの件は複雑だ」
「複雑?明解この上ないわ、これは陛下の報復よ」
「信じてくれ、必ず洛銘西を救い出し、君たちの無念を晴らす」
「はお」
梓元は話を切り上げて刑部に入ろうとしたが、ふと韓燁が引き止めた。
「梓元…君がくれた扇子の書は別れの詩から選んだものだった、それが君の本心なのか?」
しかし梓元は振り向かずに答えた。
「天下に真相も明かされぬまま、私があなたと情を語れると思う?」




洛銘西は梓元を心配させまいと笑顔を見せた。
しかし梓元は病弱な洛銘西の身体で拷問が耐えられないと分かっている。
「これぐらい平気さ、何も後悔はない」
洛銘西は刑具に耐えられるよう薬も準備してきたと笑いながら、韓仲遠の目的は梓元の味方を排除することだと言った。
「私のことはいい、君は自分の足場を固めろ」
「ここで死ぬつもり?!この10年間、助け合ってきたのよ?他の全てを捨ててもあなたを救う」

洛銘西の投獄はかえって皇帝を追い詰める結果になった。
民衆は皇太后の断罪もしないうちに忠臣の洛銘西を投獄したと不満を募らせ、重陽門にはひざまずく書生たちが日に日に増えている。
苑琴は暴動が起きそうな勢いだと報告したが、梓元はすでに大理寺の黄浦(コウホ)を向かわせていた。
どちらにしても10年も守った皇位は簡単には揺るがないだろう。
「もう待てない、帝家の件は今日中にけりをつけるわ」

その頃、韓燁は嵐清(ランセイ)殿でひざまずいていた。
皇帝はようやく顔を見せた皇太子に不満げだったが、洛銘西の命乞いに来たと分かっている。
「洛銘西は獄中で拷問を受け、命の危機にあります、そろそろ釈放してはいかがですか?
 …刑に処さぬのは放すおつもりだからでしょう?」
韓燁は洛銘西の行いは罪でななく、むしろ韓家の負い目を軽くしてくれたと訴えた。
実は重陽門で相変わらず帝家潔白の勅命を請う者が後を立たないという。
「まだ騒いでいるのか?!くだらぬ噂を真に受けおって!」
「陛下、民が勅命を求めるのは陛下が正義を示されると信じているからです
 靖国と陛下を信頼していればこそです!」

つづく


(  ̄꒳ ̄)こう見えて洛銘西は…身体が弱いのですw





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最終更新日  2024.04.25 23:12:54
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