2005年10月24日
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カテゴリ: OPERA
Wagner's Tristan und Isolde
From the Bastille in Paris

May 2005

Tristan ...... Ben Heppner (tenor)
Isolde ...... Waltraud Meier (soprano)
Kurwenal, Tristan's assistant ...... Jukka Rasilainen (baritone)
Brangäne, Isolde's maid ...... Yvonne Naef (soprano)
King Mark ....... Franz-Josef Selig (bass)
A shepherd/A young sailor ...... Toby Spence (tenor)
Melot ...... Alexander Marco-Buhrmeister (tenor)
A steersman ...... David Bizic (baritone)


Esa Pekka Salonen (conductor)

最近、いろんな偶然にびっくりさせられることが多い。
そのうちのひとつ、きょう、 SardanaさんのサイトにUPされたトビー・スペンス(テノール) 、私がたった今聴き終った、 ベン・ヘップナーの「トリスタンとイゾルデ」 に出演していたのですね。
若い水夫と牧童の役。ワーグナー歌うのですね。音楽評論家の三宅幸夫さんは冒頭の歌い出しなどについてけなしていましたが…。
この舞台、ヘップナーも歌詞間違えているところもあったり、さすが「舞台はなま物」でございましたが、やっぱりすごい!
三宅さんは「トリスタン」に関してだけは頭に血が昇ってしまうそうです。それ、わかります。私もスワン・レイクのThe Swan にはどうしても血が昇ってしまい、許容範囲が狭くなってしまいます。それだけどうしようもなく「愛してる」作品なわけです。
話がそれました。

この作品は、『タンホイザー』のように、音楽的に完璧にコンパクトにできている作品とは違い、私には、「指環」のような、哲学的な繰言をえんえんと喋り続ける作品に近いものを感じました。
これは主役の2人はすごく難しいでしょう。

でもヘップナーはすばらしくて、高音から低音まで自在、すばらしい声でした(なんせFM放送だったので音だけなのです。)
従者のクルヴェナールは、どうしても「タンホイザー」で言えば、ヴォルフラムの役どころなのですね。そしてイゾルデのおつきの者であるブランゲーネ(イボンヌ・ネフ)、この2人が泣かせます。
とてもまろやかな美しい声です。
国王マルケのゼーリッヒはキーンリーサイドの出演した「魔笛」でのザラストロ役の人でした。

あらすじですが、英雄トリスタンは、アイルランドの王女、イゾルデの許婚を討ち取ってしまいます。しかし深手を負い、彼は唯一傷を治せるイゾルデのもとに「タントリス」と名前を変えて転がり込みます。


傷の癒えたトリスタンは去り、和平のためにトリスタンの叔父である国王マルケとイゾルデを結婚させようとします。

トリスタンを愛してしまったイゾルデは恨みます。
「よりによってあの方が私を迎えに来るなんて!」
舞台の冒頭はコーンウォールに向かう船の中、イゾルデの恨み節で始まります。以上のようないきさつをイゾルデは侍女のブランゲーネに語ります。
そしてトリスタンを呼びつけますが、彼は来ません。
イゾルデは今度こそ復讐を果たそうと、母上の女王にもらった秘薬、毒薬を飲ませようとします。

トリスタンは杯を煽り、イゾルデもその半分を飲み干します。
すると不思議、二人は熱烈に愛し合うようになったのです。侍女ブランゲーネが秘薬を愛の薬とすり替えていたのでした。
しかし盛り上がったところで船はコーンウォールの岸壁に到着し、国王マルケが現れます。
茫然と青ざめた姫君を国王に引き渡すトリスタン。
二人の愛はこの時から苦しみに変わったのです。

トリスタンを憎む家臣のメロートは彼らの逢引の現場を押さえます。
国王マルケは愕然とします。
メロートはトリスタンに斬りかかり、トリスタンはわざと剣を落として刃に倒れます。

瀕死のトリスタンは故郷に運ばれます。従者のクルヴェナールが付き添っています。トリスタンは錯乱し、イゾルデの船が近付く幻影を見ます。今か今かとイゾルデの船の到着を待ち望む2人。
ついに船がやってきます。
トリスタンは最後の力を振り絞って立ち上がり、イゾルデの腕で息絶えます。

イゾルデは失神します。

そこへ乗り付けた国王マルケとメロートの船。
最愛の主人を失ったクルヴェナールは怒りに燃えてメロートに斬りかかり、殺します。
クルヴェナールは国王にも斬りかかろうとして殺されます。
国王はブランゲーネから愛の薬の顛末を聞き、二人を許そうとやってきたのに、そこにあったのは「すべての死」でした。
ブランゲーネの介抱で息を吹き返したイゾルデは「愛の死」を歌って息絶えます。
全幕了。


英雄トリスタンは、生まれたときから呪われている。彼は常に「死」を意識して生きている。
彼が「英雄」なのは、死を恐れず戦うからではなく、自ら「死」に飛び込んでいきたいからだ。
今の時代には失われているものだが、男には多分、自らの命をヒロイックなことに対して投げ出す快感があるのだ。ワーグナーのヘルデン(英雄)とはこれなのだ。イコール、死と最も近いところにいる男なのだ。

彼が生まれてすぐに父が死に、母が死んだ。
彼には昼(生)よりも夜(死)の方が近しいものであり、彼とイゾルデが夜に逢引するわけだが、彼はずっと夜の世界で生きている。
彼が瀕死の傷を負って伏しているとき、イゾルデに殺されかかったときも、そして毒杯を勧められたときも、彼は毒杯とわかっていて、彼はひたすら心の中で死を願っている。
彼にとっての夜(死)が訪れるのを願っている。
しかし、最後にイゾルデが現れたとき、彼は昼の世界の喜びを叫ぶ。そしてすぐに息絶えるのだ。
「イゾルデ…」と超高音でつぶやいて…。

非常に複雑なキャラクター。これはワーグナーの出演者の男はこのように複雑であることが多い。
常に悩み、苦しんでいる。

国王マルケも悩みを抱えている。
彼は甥のトリスタンを溺愛している。それで、彼が勧めた再婚を受け入れる気になった。
それというのも彼がトリスタンを愛していたからだ。

トリスタンの方も、自分を好いているイゾルデを自分の主君に捧げるという、これまた理解しがたい行動をするわけだが。

だから裏切られたと知ったときの国王の憎しみは激しいものになる。
彼はイゾルデに手を触れていないと述べている。これは彼女を尊重したからだと言っているが、本当は、国王が好きなのはイゾルデを好きなトリスタンだったのだ。

トリスタンとイゾルデにとって、愛の妙薬は、単なる触媒であり、愛から背を向けているトリスタンと、トリスタンを憎むイゾルデの本当の望みを叶える言い訳に過ぎなかった。愛と憎しみは常に裏返しなのである。

二人の秘められた愛は、秘め事であるからこそ激しく燃え上がるが、愛の喜びと、それに勝るほどの愛の苦しみがついて回る。愛すれば愛するほど、苦しくなり、すべてを終わらせたくなるのだ。だからこそトリスタンもメロートの刃を甘んじて受けたのだ。もう彼は終わらせたかった。これ以上、主君を苦しめ、自分たちを苦しめたくない。

また、えんえんと第2幕で語られる、ワーグナーの認識する愛の本質はかなり理解しがたく、ものすごく哲学的。まだそこまでたどり着けない。













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最終更新日  2005年10月25日 00時03分35秒
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