2010年07月18日
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Peter Konwitschny´s Don Carlos (French 5-act)

Vienna State Opera 2004

Production: Peter Konwitschny

Cast:
Ramon Vargas (Don Carlos)
Iano Tamar (Elisabeth)
Nadja Michael (Eboli)
Bo Skovhus (Posa)
Alastair Miles (Phillippe)



***

ペーター・コンヴィチュニー演出の「ドン・カルロス」

ある方の御親切のおかげで見ることができました。ありがとうございます!!

※内容にふれますのでご注意ください。

コンヴィチュニーの作品には駄作と傑作がある。
この作品に関しては傑作の方に入るのではないかと思う。

彼は基本的に設定を変えてない。この作品に関しては。
しかしところどころ彼流の脱線や妄想がちりばめられていてそこがおもしろい。
ノーマルな部分に関してはそう脱線していない。

いちばんおもしろい部分は普段はカットされているバレエ音楽の部分だ。
コンヴィチュニーはこのシーン、バレエさせるどころかまったく違う演劇を演じさせている。


本筋は16世紀のスペインで演じられるのに
妄想部分やコンヴィチュニーの思い入れの部分は現代。

エボリは妊娠中の主婦。
お料理しながら夫の帰りを待っている。
サラリーマンの夫が帰ってくる。

お料理がこげちゃったり酒を飲んだりして日常生活をエンジョイしている。
そこに夫の両親が妊娠のお祝いにやってくる。
ホームパーティ。
料理が失敗したのでピザをとる。
ピザ屋は「ポーザのピザ」という店。
(もちろんスコウフス)

しかしサービスでピザに塩コショウしていたエボリ、夫のにかけ過ぎる。
カルロスが激怒し、すべてのものに塩コショウし始める(笑

こんなバカみたいな妄想、
こんなおもしろいのはここだけで
あとはだいたいもともとのストーリーに沿っている。

結局最後まで逸脱しないんだよな。
いつも見られるパラダイム転換はないんだよね。
そこは物足りない。

あともう一つコンヴィチュニーらしいシーンは、客席も劇場全体もステージにしてしまうシーン。

第3幕の反逆者を処刑するシーン。
ここは皆現代の服装になっている。なぜか。
劇場の入り口から鎖につながれた囚人が入ってくる。
オケピの中にレッドカーペットが敷かれている。
アナウンサーがリポートしながら国王と王妃、ポーザ公らが入場してくる。
国王一行が客席の中に立った時、音楽が止まる。
沈黙の中、客たちはいっせいにブーイング。
このブーイングもすごくサクラっぽいんですけど(笑
願ってもないリアクション(?)に国王(フェリペ2世)は渋い顔。
そのままオケピのレッドカーペットを通ってステージへ。
あとは普通と同じ流れ。

第4幕の国王の書斎。

書斎ではなくて布団が敷かれていて、エボリと寝ている。
寝室だ。

コンヴィチュニーはモノローグが嫌いらしく、
モノローグはなく、常に相手に話しかけている設定で歌わせる。
したがってこのシーンも国王のモノローグではなく、ひたすらエボリに妻の愚痴を言っている男の構図になっている。
なんかその方がお話としては説得力がある。

大審問官が入ってくるのでエボリが脱ぎ捨てた衣類を拾おうとするが、盲目の大審問官は(わざとなのか)エボリのドレスを踏みつけたまま。エボリがすごく困ってる(笑)

そのほかはいつもの展開と同じだな~

次に歌手だが、

フェリペ2世のアラステア・マイルズ、唾棄すべき凡人をうまく演じていた。
彼にはカリスマ性もオーラも魅力もない。そういう設定なのだろう。
だから余計バレエ音楽での寸劇がさまになっていた。普通の男。人のいい男。
しかし国王として権力を振るう場合、なんの魅力もない男。

いちばん気にいったのは、ボー・スコウフスのポーザ公。
ロドリーゴ。
金髪の長髪をひっ詰めている。
ド近眼でぶあつい眼鏡をかけている。
背が高くてスリムで演技がうまくてもう~魅力的なロドリーゴです。
舞台巧者なんですよね~
いつも手帳に書きつけていて、フランドルの現状なんかもびっしり書いているんだろう。
しかしそういうわりには人柄は軽妙で、いつものスコウフスという感じ。
エボリに眼鏡を取り上げられて意地悪されて
やすしみたいな
「めがね、めがね~」というのがおもしろすぎだった。

カルロスのヴァルガスの歌唱はやはり美しい。
体当たりの演技でお疲れさまという感じ。
ロドリーゴが死ぬときには本当に泣いていた。
ピュアな人なのかな~?
スカラの日本公演では評判悪かったので心が痛みながら見ていた。
彼はあの時辛かったと思うから。

エボリのナジャ・ミヒャエルもすごく気にいった。
スレンダーな美人。
エボリは絶世の美女の設定だがオペラの舞台ではそうでない歌手も多いのだが、彼女は本当にエボリだった。
演技もうまい!
でもこの役に必要な爆発的な歌唱力とまでは行っていない。

あとは感想なし(笑

コンヴィチュニーの演出作品ではあまりにもどう演技するのかとかを見てしまうので
いまひとつ歌唱に集中できない。
そういう意味では歌手には気の毒な作品にいつもなってしまう。

客と演出家の戦い、みたいな感じにいつもなるので、オペラ本体としては楽しめない。

このフランス語版、コンヴィチュニーは目いっぱいカットせずにやっていると思う。
異様に長かったもん。
4時間7分の上演時間と書いてある。
本当長い。

ロドリーゴの葬送歌もちゃんとありました。

最初のフランスのフォンテンブローの森から始まって。

満点の星空のもと語り合うカルロスとエリザベッタ。

しかしスペインにシーンが移ると、四角い異様な壁に取り囲まれた舞台がえんえんと続く。

ミニマムといえば聞こえはいいが、なんか変。

服装は16世紀のスペインで壁は真っ白。
何もセットはない。

カルロス5世は印象的に出てくる。

庭に苗木を植えるのだ。

最後でもこの先王が出てきて2人を連れていく
本来はカルロだけ連れていくのだが
集団リンチになってエリザベッタも連れて行かれる。
そういう意味ではハッピーエンド?

エボリは自分の美貌を呪って左目を刺す。
その後は眼帯で登場する。

エボリは修道院に行く前に暗殺される。
国王の愛人は存在を許されないらしい。

教会と一体になった絶対権力にすべての登場人物が潰されていくということらしい。

個人的な結論を言うと
ドンカルロ(ス)
はかつてないほど私を理性のない行動に駆り立てた
あの スカラの来日公演 が私にとってベストなのは永遠に変わらないんだろうな。
あれは異様に美しくて歌唱が立ちまくる演出だった。
来年METが来てもきっとその感想は変わらないんだろう
(MET演出はニコラス・ハイトナー、ROHと同じプロダクションです。)





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最終更新日  2010年07月24日 22時28分10秒


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