AMI's HP ブログ別館

< 新しい記事

新着記事一覧(全1688件)

過去の記事 >

March 27, 2008

「中学生の15%が精神病様症状を体験」

カテゴリ：近況

本日、業界誌でちょっと気になる記事を見つけたので、それについてちらほら。
…せっ、専門外なんだからね！深くつっこんじゃダメなんだから！！（誰？）

「M県T市の中学生5000人を対象に無記名アンケート調査を実施したところ、約15%の子供に精神病様症状（PLEs）が認められた。」（平成19年10月12日、第35回日本精神科病院協会精神医学会にて報告）

報告によると、調査同意が得られたT市内公立中学校14校の全生徒数5335人（12-15歳）から、調査実施日欠席数205名をのぞく5130名に調査への協力を依頼し、うち協力拒否、白紙回答18名、除外回答40名をのぞく5073名が有効回答数（全生徒数の95.1%）となっている。
調査方法は無記名自記式（PLEs、GHQ-12を含む全54項目）、任意協力である。

結論から行くと、15.2%の子どもに精神病様症状体験があったとのこと。
（長期欠席児童が今回は含まれていないため、それを含めるとさらに高率になることが推測される）

年齢別にはPLEs体験者の割合は

・13歳　15.9%
・14歳　15.4%
・15歳　16.1%
で、全体として15.2%となっている。

PLEs体験者割合は多い順に
・幻聴　9.9%
・被追跡、被盗聴　7.4%
・思考の読み取られ　1.5%
・メッセージ暗号受信　0.7%
となっている。

このリサーチの結果だけ見るなら「へーそうなんだー、そうだよね思春期の子供は精神的に不安定だもんねー、そうかやっぱり数字的に見てもそうだったんだー。」で終わってしまいそうだが、もともとこのリサーチの背景には、統合失調症発症のリスクの高い人、いわゆるハイリスク群をいかに予測するかという目的があって（統合失調症は早期発見、早期治療が重要であるため）、このリサーチより前に、ニュージーランドで行われた出生コホート研究の結果がかなり大きな反響を呼んでいたのである。

11歳時、PLEsを認めた14%のうち、特に強い症状を有した3%の群は、26歳時までに25%が統合失調症を発症し（odds ratio 16）、70%は少なくとも1つ以上のPLEs体験をし、90%は社会適応困難、就業困難だったというのである。11歳時でPLEs体験がない群に比べて統合失調症の発症危険率が16倍というのは、やはり高い数値と言わざるを得ない。

…ざっと計算して1000人中強い症状を有した人が30人、うち7-8人が統合失調症を発症したことになる。そして27人が社会適応、就業困難ということになる。

今回の日本でのリサーチ結果もパーセンテージ的にニュージーランドのコホート研究と近似の数字になっている。また、今回の調査でさらに、PLEs体験群は、今現在、支援が必要な精神保健問題で特に悩んでいる子供たちと重なっていたようである。

PLEs体験群は、いじめられ体験、いじめる体験、大人からの暴力、ダイエット目的の嘔吐、飲酒、衝撃的自傷行為、衝撃的暴力行為、希死念慮様観念などの精神病理的項目と極めて高い相関を示し、特に2つ以上のPLEs体験があるとその傾向は一層強まったとのこと。

思春期に精神的に不安定になることは以前からよく知られているが、それが「思春期ってそんなもん」で済まなくて、明確にPLEsが認められるとその後の精神疾患発症率に有意に関わって来るということである。そうなってくると、例えば非行などの行動を起こす中学生に対する指導方法なども、検討が必要になってくるように思われる。非行とPLEsの高い相関性に着目するなら、必要なら医学的介入も視野に入れなければならない。

これら、思春期にPLEs体験をしている子どもをうまく掬い上げて、必要なら医学的にフォローアップすることで、全体的なメンタルヘルスの改善がかなり期待出来るのではないか。（実際のこの報告の演者の先生は、統合失調症発症のハイリスク群である、統合失調症の親を持つ子供を集中的に追跡調査することで、その子の統合失調症発症に際し極めて早期に介入できて、良好な治療成績を上げることが出来ているという。）

…やはり気になったのは、ニュージーランドでのリサーチ結果で、社会不適応、就業困難者とPLEs体験者層に相関関係があったこと。
このあたりがきちんと実証されれば、ニート等の問題に対して、もっと早期に手をさしのべる事が出来るのではないかと。
訳もわからず苦しんでいる子供たちに、もうちょっとピンポイントで手を出すことが出来るようになれば、いろんな意味で救われる人が多いように思われるのだが…。

お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう