2004年01月29日
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カテゴリ: 雑考生活
昨夜は仕事の後にやや飲みすぎたため、二日酔い気味の頭で、阪急梅田行きのいつもより遅い電車に乗り込んだ。いつもは本を読んでいるか寝ているのだが、今日はあいにく手持ちの本がなくさほど眠くもなかったので、乗客の人間観察をする。

隣に座っているのは、ジーンズに革のジャケットにスニーカーという、ごく普通の若者のファッションの女の娘。
彼女の名前は、樋口ユカリ(仮名)。美容専門学校に通う、どこにでもいそうな19才だが、首から上の様子が変だ。マフラーを頭の上でクルリと頬かむりのように巻き、その両端を顎の下でクロスさせる形で左右の手で持つという不思議なポーズをしているので、周囲の乗客の視線が集まっている。
昨夜彼女は、今まで自分の両親だと思っていた人たちが実は赤の他人で、本当の両親は自分が生まれてすぐに自分を置いて、マダガスカルの奥地で猿のアイアイの研究をするために移住してしまったということを初めて聞かされたのだ。
その理解不能な事実に対するショックとストレスのせいか、今朝駅に向かう途中で、頭に500円硬貨ぐらいの円形脱毛が3コもできていることに気付き、彼女は慌てて持っていたマフラーを被って隠している、というワケだ。ま、あくまでワシの想像だけど。

向かいに座っている初老の男性は、日経新聞を広げ、何かリズムを取るように「タパタン、タパタン」と靴底で床を叩いている。
彼は、大阪に本社のある大手商社の役員、大門敬ー(仮名)59才。さっきから眉間に皺を寄せて新聞の株式欄を見ているが、実は頭の中では、先日出会い系サイトで知り合い、今週ついにデートすることになった20才の女子大生のことでいっぱいなのだ。
大門は読んでいた新聞をバサバサと畳むと、今度は膝の上の鞄の中を覗き込み、雑誌を一冊取り出して少し怪訝な顔つきになった。実は、女子大生との会話に困らないようにと、同じく女子大生である娘が居間に置いていた雑誌「ViVi」を鞄に入れてきたはずが、間違えて横にあった「すてきな奥さん」を入れてきてしまったのだ。特集は、「500円で作れる豆腐のおかず一週間」。ま、これもあくまでワシの想像だけど。

ドアのすぐ横にすっくと立っているのは、 170センチ近い長身に茶髪でショートカットの女性。

宝塚は月給制で、もらえる給料は予想外に低く世間の一般的なOLとさほど変わらないレベルである。そのうえ、稽古事やメイクにかかる経費などはすべて自分持ちなので月末になると生活はかなりピンチの状態になってしまう。そこで、彼女は昨晩冷蔵庫に入っていた賞味期限切れのハムを「ま、いいか」と思って食べたのだが、これがいけなかった。朝から猛烈にお腹を下してしまったのだ。座席に座るとつい気が緩んで大変なことになりそうなので、気合を入れて、ああやって立っているのだ。ま、これもあくまでワシの妄想だけどな。


一方、座席のちょうど真ん中付近に座り、キョロキョロと周囲の乗客の顔を眺めているかと思えば、何やら物思いにふけってニヤニヤしている挙動不審の男がひとりいる。サラリーマンにしてはネクタイもせず、見た目は結構若いが、中身は中年のオッサンだ。
あくまで、ワシ自身のことだけどな。

そして電車は行く。





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最終更新日  2005年08月25日 18時03分27秒
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