『運命を分けたザイル(TOUCHING THE VOID)』ですよ。新年早くも今年観た映画DVDの私的ベストワン候補である。「雪山遭難」系で「実話にもとづく作品」とのことだったので、同じアンデス山中を舞台にした映画『生きてこそ(ALIVE)』(雪山に飛行機墜落遭難&カニバリズムというテーマでこれもまあまあ良かったが)をすぐに連想したが、結論から言うと、今回の作品はそれを大きく凌ぐ秀逸さ。というか、テーマは似ているが見せ方はまったく別モノのアプローチである。
唯一この映画で最悪にダメな点は、作品自体ではなくて日本の配給側のスタンスである。まず、邦題の付け方がナンセンス。「運命を分けたザイル」なんて言うと「ザイルが切れる事態」のスリリングな展開だけを想起させるし、予告編も(意図的に)そんな作りになっているのだが、前述のように、内容はそんな単純明快なドラマでは全然ない。原題(「TOUCHING THE VOID」)の正確な意味(虚空に触れる?)はわからないが、おそらく死の淵を彷徨った登山家の内面的心理描写を核とするこの原題の持つエッセンスを、もっと忠実に伝えるべきであると思う。たぶん、興業的には難しいんだろうけどさ。