真実一路

真実一路

2025.03.11
XML
カテゴリ: 映画

ブルーベルベットー日本語吹替音声収録 4K レストア版ー【Blu-ray】 [ デヴィッド・リンチ ]

映画界の奇才デヴィッド・リンチ監督(米国)が1月15日に亡くなった。
故人を偲んで『ブルーベルベット』(1986)をもう一度観ることにした。リンチ監督の作品はほとんど観ているのだが、この作品だけはまじめに見ておらず内容も覚えてなかったからだ。

のどかな田舎町を舞台とした話なのだが、社会の表と裏の対比をエログロに映し出して妖しい空気に満たされた奇作である。
高い評価を受け多くの賞を受賞したのだが、私にはそれほど優れた作品とは思われない。全撮影分で4時間あるものを2時間にカットして劇場公開版にしているせいか、話のつながりがわかりにくい部分があるし、主人公(演:カイル・マクラクラン)の行動もなんか不自然でリアリティがない。むしろ悪人グループボスのフランク(デニス・ホッパー)やその仲間たちの奇矯な言動の方が自然に見えてしまうちぐはぐさなのだ。これは未完成版、あるいは不完全版だと思う。

また「これはテレビシリーズにしたほうがよかったのに」と思いながら、観進めるうちにハッとあることに気づいた。同じ作風で、舞台設定や地域社会の暗部をミステリアスに映し出したよく似た作品がある。あの『ツイン・ピークス』だ。そのテレビ版放送開始が’90年だから『ブルーベルベット』後の企画、制作期間に合う。推測だが、リンチ監督や製作陣が『ブルーベルベット』の未完成度を意識し、作品の特徴を生かしつつ話を翻案してテレビシリーズとして完成させたのが『ツイン・ピークス』なのではないだろうか。なにより両作品でカイル・マクラクランが主人公を演じているのが決定的で、世の表と裏、魂の善悪、異世界と妖しげな登場人物たちなど共通点はたくさんあるのだ。

ところで、リンチ監督は日本(日本人)嫌いだったのではないかと私は思っている。
『マルホランド・ドライブ』DVDの特典映像にリンチ監督へのインタビューが入っているのだが、インタビュアー(たぶん日本人)への受け答えがかなり横柄で不躾なのだ。なんであんな態度で受けるのか?と奇異に感じられた。また『ツイン・ピークス』のある回で、ステテコを着て尺八を吹く悪人が登場したのを覚えており、私のなかでそれは確信に近い。
でも彼の作品の個性は評価する。特に、暴くことがタブー視されている人の世の闇、心の闇、善と悪の正体、魂が往くべき異世界の想像...等々、これらを映像作品として形に残した功績を評価する。とかく商業主義を押し付けられることが多い映像製作の世界で、よくぞこれだけ独自の創作を続けたと感心する。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2025.03.11 13:11:09
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: