《櫻井ジャーナル》

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2014.03.08
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 現在、ウクライナの首都、キエフには「西側」が支援する暫定政権が存在しているが、 その成立過程が憲法の規定に違反している

 その過程を振り返ってみると、まず議会の議長を務めていたボロディミール・リバクを脅迫して辞任させ、アレクサンドル・トゥルチノフを新議長に据えるところから始まる。そのとき、議会は暴力に支配されていた。

 ところで、トゥルチノフはユリア・ティモシェンコの「祖国」に所属する人物で、ティモシェンコは投機家で旧ソ連圏の体制転覆を仕掛けてきたジョージ・ソロスの強い影響下にあったことで知られている。2月22日、議会は憲法の規定を無視してトゥルチノフを大統領代行に任命した。その後、首相のポストに就くアルセニー・ヤツェニュクも「祖国」の幹部だ。

 21日にビクトル・ヤヌコビッチ大統領はキエフから追い出され、暫定政権の成立が宣言されたわけだが、その段階に到達するためにネオ・ナチ、つまり「スボボダ(自由)」、「右派セクター」、「UNA-UNSO」などのメンバーは武装蜂起に近い活動を展開した。今年1月にシリアからウクライナへ約350名が入ったとも言われている。

 つまり、こうした戦闘集団は棍棒、ナイフ、チェーンなどを手に、石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルを撃つだけでなく、警官隊(ベルクト)の隊員を拉致、拷問、そして殺害している。 目を潰された状態で発見された隊員の死体 もあるようだ。

 その過程で反ヤヌコビッチ派の人びとや警官が屋上から狙撃され、多くの死傷者が出ている。「西側」の政府やメディアはベルクトが撃ったと宣伝していたが、リビアやシリアの状況を調べている人たちは、ウクライナでも狙撃が始まると予想していた。勿論、政府側ではなく、体制転覆を仕掛けている勢力による狙撃である。

 トゥルチノフが大統領代行に選ばれた3日後、エストニアのウルマス・パエト外相はキエフを訪れて状況を調査、26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)に電話で「 全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合体が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合体の誰かだというきわめて強い理解がある。 パエト外相はその音源が本物だと認めている

 クーデターでネオ・ナチの果たした役割は大きく、経済は「国境なき巨大資本」につながるオリガルヒが押さえているようだが、治安や軍の関係はファシストが主導権を握った可能性が高い。

 暫定政権の陣容を見ると、ネオ・ナチの中心的な存在であるスボボダ(自由)からはオレクサンドル・シクが副首相、アンドリー・モクニクがエコロジー相、オレクサンドル・ミルニーが農業相に就任し、またオレー・マクニスキーが検察を統括することになった。スボボダ創設者のひとり、アンドレイ・パルビーは国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の書記に就任している。

 また、右派セクターを率い、アル・カイダともつながるドミトロ・ヤロシュは同会議の副書記に、NATOとの緊密な関係が噂されているUNA-UNSOからは、テチャナ・チェルノボルが反腐敗委員会の委員長に、またドミトロ・ブラトフが青少年スポーツ相に就任したという。

 この暫定政権に正当性がないと東部や南部の人びとが考えるのは当然で、クリミアの最高会議がロシアへの編入を全会一致で議決、今月16日に住民投票が実施されるという流れは、住民の感情を考えると、自然だろう。アメリカならまず「独立」を宣言させて承認し、そこから本格的な軍事介入を始めるのだろうが。

 ただ、ロシア軍がクリミアへ軍事侵攻したという話は正しくないようだ。1990年代のウクライナとロシアで結ばれた協定により、ロシア軍は2万5000名までクリミアへ駐留できることになっていて、実際、1万6000名が駐留していた。これをキエフの暫定政権は軍事侵攻と表現したわけだ。

 そしてアメリカ政府はロシアとウクライナの一部当局者を対象に、渡航禁止や資産凍結などの制裁を発動する大統領令に署名したという。微妙な決定だ。

 ジョン・ケリー国務長官が査証の発給禁止、資産凍結、貿易面での制裁などを検討する考えを示した際、ウラジミール・プーチン露大統領の経済顧問を務めている セルゲイ・グラジエフ は「個人的な意見」として、経済制裁が発動されたなら、貿易の決済に使う通貨をドルから別のものに変更、「西側」の金融機関から受けている融資の返済を拒否する可能性を指摘していた。石油や天然ガスの供給を止めるという選択肢も、当然、ある。

 もっとも、貿易の決済をドルから別の通貨へ変更することは昨年秋の段階でロシアは中国と取り決めているようなので、アメリカからの制裁がなくても実行に移される可能性は高い。問題は、どの程度の割合でドルを残すかだけ。アメリカ政府の「制裁」が微妙な表現になっているのはそのためだろう。

 「制裁戦争」を始めると、アメリカは苦境に陥る可能性が高く、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)が想定する核戦争へ発展することもありえる。日本もロシアへの制裁を明言するべきだと主張する人もいるようだが、それは、事情に関係なく、ひたすらアメリカに追随するべきだという議論。そうした人びとは「集団的自衛権」にも賛成しているのだろうが、正しい選択だとは思えない。





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最終更新日  2014.03.08 17:33:40


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