《櫻井ジャーナル》

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2015.10.05
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ロシア軍がシリアで行っているアル・カイダ系武装集団/IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISISやダーイシュとも表記)に対する空爆は実際に「テロリスト」の司令部や武器庫などを破壊しているようだ。アメリカが主導してきたものとは違う。西側の政府やメディアが批判するのは当然だろう。何しろ、自分たちの傭兵が攻撃されているのだ。

 本ブログでは何度も書いているが、 アル・カイダとは故ロビン・クック元英首相が説明したように、CIAから訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル 。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味、「データベース」の訳としても使われている。

 その始まりはアフガン戦争。パキスタンのバナジル・ブット首相の特別補佐官を務めていたナシルラー・ババールによると、アメリカは1973年からアフガニスタンの反体制派へ資金援助しはじめていた(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)が、武装集団が本格的に編成されたのは79年7月。ズビグネフ・ブレジンスキー大統領補佐官のプランに従ってジミー・カーター大統領がアフガニスタンの武装勢力に対する秘密支援を承認、その術中にはまってソ連の機甲部隊がアフガニスタンへ入って来たのは、その年の12月。そのソ連軍と戦わせるためにアメリカは戦闘員を集め、訓練し、兵器を与えた。資金を出したのはサウジアラビアで、戦闘員のリストが「アル・カイダ」。アフガニスタンとパキスタンをまたぐ山岳地帯では資金調達のためにケシが栽培され、ヘロインの密輸が飛躍的に増大する。

 シリアではアル・カイダ系の武装集団としてアル・ヌスラという名前が出てくるが、この名称はAQI(イラクのアル・カイダ)がシリアで活動するときに使っていたとDIA(アメリカ軍の情報機関)は説明している。 DIAが2012年8月に作成した文書 によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQIで、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けている。AQIは2004年に組織され、06年にISIが編成されたときにはその中心になり、今ではISと呼ばれているわけで、アル・ヌスラもISも実態は同じ。

 そうした武装集団をロシアは本当に攻撃している。その攻撃についてFoxのニール・カブトに質問された米大統領候補の ジョン・マケイン上院議員は、アフガニスタンのときと同じように、戦闘機を撃墜できる武器を武装集団へ提供するべきだと語っている

 口にするかどうかはともかく、アメリカの好戦派はマケインと同じように考えているだろう。シリアの体制を転覆させるプロジェクトには、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、カタールといった国々が参加してきた。現在、ISを使っているのはトルコで、ISの最も重要な兵站ラインはトルコからシリアへ延びている。こうした国々がアル・ヌスラやISへ携帯防空システムを提供する可能性は高い。



 当然、そうしたことをロシア政府も承知しているはずで、対策を練っているだろう。ロシア、アルメニア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、そしてウズベキスタンで組織されたCSTO(集団安全保障条約機構)が動き始め、9月15日にはその幹部がタジキスタンで会合を開いてシリアやイラクでのテロ活動を批判、国連の下で軍隊を派遣する容易があるとする声明を出している。さらに、ロシア、シリア、イラン、イラクの4カ国はISに関する情報を交換するセンターを設置した。アメリカの「支援」がISに対して全く効果がないこともあり、イラクの現政権もアメリカ離れを始めている。また、すでにロシアは経済面だけでなく、軍事面でも中国との関係を緊密化させている。これはアメリカの好戦派が進める世界制覇プロジェクトに対する反発の結果。

 このプロジェクトによって中東や北アフリカは不安定化しているが、それによって大量の難民がヨーロッパへ向かい、その中にはアル・カイダ系戦闘集団やISで戦っていた戦闘員も含まれている可能性が高い。ロシアの空爆を受け、逃げ出した戦闘員の一部もヨーロッパへ向かったという。そこでEUはアメリカに対する警戒を強めているようだが、ここにきてサウジアラビアもアメリカ好戦派の戦略に疑念を抱きはじめている。

 現在、最もISと緊密な関係にあるトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンはマケインのようなネオコンと同様、孤立しはじめている。そのネオコンに従っている日本の立場も微妙だ。





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最終更新日  2015.10.05 16:46:36


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