《櫻井ジャーナル》

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2015.10.21
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 南沙群島(チュオンサ諸島、あるいはスプラトリー諸島)を舞台にしてアメリカと中国が軍事的な緊張を強めている。アメリカの好戦派はソ連消滅後、旧ソ連圏や中東/北アフリカなどを先制攻撃、破壊と殺戮を繰り広げてきたが、シリアやウクライナではロシアに主導権を奪われ、イランだけでなくイラクもロシアへ接近、戦乱の炎は弱まりそうだ。そうした中、アメリカは戦乱の舞台を東アジアへ移動させるつもりかもしれない。

 東シナ海を「友愛の海」にしようと語っていた鳩山由起夫首相が検察とマスコミの力で首相の座から引きずり下ろされたのは2010年6月。次の菅直人政権は棚上げになっていた尖閣諸島(釣魚台群島)の領有権をめぐる問題に火を付け、日本と中国との関係は悪化していく。

 実際に火を付けたのは海上保安庁。2010年9月、 「日中漁業協定」を無視する形で尖閣諸島の付近で操業していた中国の漁船を取り締まった のが始まり。漁業協定に従うなら、日本と中国は自国の漁船を取締り、相手国漁船の問題は外交ルートでの注意喚起を行うことになっていると自民党の河野太郎議員は指摘している。

 こうした展開はアメリカ支配層の思惑通り。2012年にヘリテージ財団アジア研究所北東アジア上席研究員のブルース・クリングナーは 「日本国民のあいだに中国への懸念が広がりつつあるという状況」を歓迎 しているが、これは好戦派の一致した気持ちだろう。

 20世紀の初頭からアメリカやイギリスの支配層はロシア/ソ連や中国を包囲して締め上げる戦略を立てている。現在、中国を封じ込める枢軸としてアメリカの好戦派が想定しているのは日本、フィリピン、ベトナム。そこへ韓国、インド、オーストラリアを結びつけようとしている。フィリピンとベトナムの中間にあるのが南沙群島(チュオンサ諸島、あるいはスプラトリー諸島)で、そこに中国は軍事的な拠点を作ろうとしている。

 この群島は南シナ海にあるのだが、6月1日に開かれた官邸記者クラブのキャップとの懇親会で安倍晋三首相はこの海域に触れている。 「安保関連法制」は「南シナ海の中国が相手」 だと口にしたというのだ。週刊現代のサイトが紹介、外国でも話題になっていた。安倍政権は中国との戦争を想定しているわけだが、その背後にいるのがアメリカの好戦派だ。



 アメリカ経済は中国なしに成り立たないとして戦争にはならないと高をくくっている人たちもいるが、同じような話をイラクへアメリカが先制攻撃する前にも聞いた。ネオコンは軍事的な緊張を高めることが目的ではなく、世界制覇を目指している。

 その野望が顕在化したのは1992年。前年の12月にソ連が消滅、 自分たちが支配するアメリカが「唯一の超大国」になったと考え、潜在的なライバルを潰し、ライバルを生む出すのに十分な資源を抱える西南アジアも支配するプロジェクト を始めた。ソ連の消滅を「冷戦」の終結と考え、平和な時代が訪れると思った人がいるとするならば、それは「冷戦」の本質を理解していなかったということだ。

 そうしたプロジェクトを文書化したのが国防総省で作成されたDPGの草案。作業の中心がポール・ウォルフォウィッツ国防次官だったことから、「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。

 その影響は日本へも波及する。1994年には「国際平和のための国連の機能強化への積極的寄与」を掲げる「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」が出される一方、武村正義官房長官が排除された。武村排除はアメリカ側の意向だったとされている。

 樋口リポートを読んだアメリカの好戦派は「日本が自立の道を歩き出そうとしている」と反発、国防大学のスタッフだったマイケル・グリーンとパトリック・クローニンがカート・キャンベル国防次官補を介してジョセフ・ナイ国防次官補やエズラ・ボーゲルに会い、1995年に発表された「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」につながる。

 1997年には「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」が作成され、「日本周辺地域における事態」で補給、輸送、警備、あるいは民間空港や港湾の米軍使用などを日本は担うことになる。「周辺事態法」が成立した1999年にはNATOがユーゴスラビアを先制攻撃した。

 アメリカで大統領選があった2000年、ネオコン系シンクタンクPNACがDPGの草案をベースにして「米国防の再構築」という報告書を発表した。作成にはウォルフォウィッツやビクトリア・ヌランド国務次官補の夫であるロバート・ケーガンなどネオコンの大物たちが参加しているが、実際に執筆したのは下院軍事委員会の元スタッフ、トーマス・ドネリー。2002年からロッキード・マーチンの副社長に就任している。この報告書は戦争ビジネスの意向でもあったわけだ。

 2000年にはナイとリチャード・アーミテージのグループによって「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」も作成されている。この報告では武力行使を伴った軍事的支援が求められ、「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している」と主張、「この禁止を解除すれば、より緊密かつ効果的な安保協力が見込まれる」としている。

 ナイ・レポートで日本をアメリカの戦争マシーンに組み込む第一歩を踏み出し、アーミテージ報告で集団的自衛権を打ち出した。こうした報告書や新ガイドラインなどの危険性を理解、警鐘を鳴らす研究者やジャーナリストもいたが、マスコミは無視する。

 2000年にネオコン系シンクタンクPNACはDPGに基づく報告書「米国防の再構築」を発表、その執筆者たちに担がれたジョージ・W・ブッシュが2001年1月、アメリカの大統領に就任した。その年の9月11日にはニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、アメリカ国内では憲法の機能が停止、国外では軍事侵略が本格化する。



 日本に対して集団的自衛権、憲法第9条の放棄、そして国連軽視をアメリカが求めてきたころ、日本で問題になっていたのは「耐震偽装問題」。ある一級建築士の構造計算書偽造が2005年に発覚したのだ。建築業界で「手抜き」は常態化していると言われ、この問題を掘り起こしたなら大変な問題になるはずだったが、2007年頃には「個人犯罪」で幕引きになった。2006年から10年にかけての頃には、アメリカの好戦派から嫌われていた小沢一郎と鳩山由起夫が攻撃されている。

 この当時、アメリカの好戦派は自信満々で、2006年には外交問題評議会が発行しているフォーリン・アフェアーズ誌にキール・リーバーとダリル・プレスの論文「未来のための変革と再編」が掲載され、その中で ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張 している。その攻撃に日本も使うつもりだった可能性は高い。

 2011年3月8日、巨大地震で東電福島第一原発が「過酷事故」を起こす3日前、イギリスのインディペンデント紙に掲載されたインタビュー記事の中で東京都知事だった 石原慎太郎は核武装への憧れ を口にしている。彼によると外交力とは核兵器であり、核兵器を日本が持っていれば中国は尖閣諸島に手を出さないだろうという。






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最終更新日  2015.10.22 05:41:27


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