《櫻井ジャーナル》

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2016.04.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 アメリカの選挙は資金力の戦いであり、多額の資金を提供できる富豪や巨大資本が選挙結果を左右することになる。資金力の差が宣伝力の差につながることは勿論だが、巨大資本に所有されている有力メディアの報道内容を決めることも可能。アメリカをはじめとする西側諸国だけでなく、ロシアや中国の記者や編集者も西側情報機関などの影響を受けていると言われている。 (注1)

 資金力によって政治や情報に最も大きな影響力を及ぼしている団体がイスラエル・ロビーのAIPAC。今回の大統領選挙でも候補者はAIPACで演説、共和党のドナルド・トランプも「イスラエルを愛している」と発言した。最初の原稿ではイスラエルを批判し、冷やかするような表現があったようだが、彼のスタッフによって親イスラエル的な内容に書き変えられたという。民主党の バーニー・サンダース はAIPACの招待を断った。イスラエルを批判しているとは言い難く、この国に対する姿勢を鮮明にすることを避けたと言うべきだろう。

 AIPACは「有力」とされる大統領候補が敵対することを避け、2008年の大統領選挙ではバラク・オバマもAIPACで講演、イスラエルを「真の友人」だと表現しているが、アメリカの利益に反する団体だということは過去の出来事が示している。

 例えば、ネオコン/シオニストによる偽情報を利用した軍事戦略に反対する声が高まりつつあった2005年5月、国防総省の分析官だったローレンス・フランクリンが機密情報をAIPACの幹部へ伝えた容疑でFBIに逮捕されている。その3年後に後の大統領がイスラエルを「真の友人」だと言ったわけだ。

 フランクリンは一時期、ネオコンの大物として知られるダグラス・フェイスのオフィスで働いていたことがあり、事件の背景には巨大な親イスラエル人脈が存在すると考える人は少なくなかった。必然的に、フェイスやポール・ウォルフォウィッツらとの連携が疑われた。AIPACでフランクリンから情報を受け取っていたのは外交問題の責任者だったスティーブン・ローゼンと、中東担当の上級アナリストを務めていたキース・ワイツマン。このふたりから情報はイスラエルの情報機関に伝えられたと信じられている。

 1967年6月、第3次中東戦争の際にアメリカの情報収集船リバティをイスラエル軍は攻撃し、乗組員9名が死亡、25名が行方不明、171名が負傷するという出来事もあった。アメリカ軍の艦船だと確認してから攻撃している。

 近くにいた米海軍第6艦隊の空母サラトガから救援のために4機のA1スカイホークが発進するのだが、報告を受けたリンドン・ジョンソン政権のロバート・マクナマラ国防長官は戦闘機をすぐに引き替えさせるようにと叫んでいる。 (注2)

 アメリカには親イスラエル派の議員や大統領は少なくない。そのひとりがハリー・トルーマン。フランクリン・ルーズベルト大統領の急死を受けて副大統領から昇格したのだが、その間、ルーズベルト大統領と会ったのは2度だけだったという。 (注3)



 こうした背景を持つトルーマンは日本への原爆投下を承認、イスラエル建国の問題ではジョージ・マーシャル国務長官、ジェームス・フォレスタル国防長官、ジョージ・ケナン国務省政策企画本部長らの反対を押し切り、認めることになる。なお、ルーズベルトが親イスラエル派だったという話はシオニストが流したもので、実際は違った可能性が高い。

 また、コラムニストのチャールズ・バートレットによると、フェインバーグは1960年の大統領選でジョン・F・ケネディに対し、中東の政策を任せてくれるなら資金を提供すると持ちかけ、ケネディはその条件を呑んだという (注4) が、ケネディ大統領はイスラエルの核兵器開発には厳しい姿勢で臨んだことも事実。イスラエルのダビッド・ベングリオン首相と後任のレビ・エシュコル首相に対し、半年ごとの査察を要求する手紙をケネディ大統領は送りつけ、核兵器開発疑惑が解消されない場合、アメリカ政府のイスラエル支援は危機的な状況になると警告している。 (注5)

 1963年11月22日にそのケネディ大統領は暗殺され、副大統領のジョンソンが昇格する。この人物はケネディと親しかったわけでなく、議会のおける親シオニスト派のリーダー格として知られていた。ジョンソンの後ろ盾はトルーマンと同じようにフェインバーグだ。

 そして現在、ネオコンの中心グループに属しているロバート・ケーガン、つまりビクトリア・ヌランド米国務次官補の夫が支援している大統領候補は民主党のヒラリー・クリントン。必然的に有力メディアはクリントンの肩を持つことになる。


(注1)

 ウィズナーはダレスと同じようにウォール街の弁護士で、大戦後は極秘の破壊工作(テロ)組織であるOPCを指揮している。ヘルムズの祖父にあたるゲイツ・ホワイト・マクガラーは国際的な投資家として知られ、ワシントン・ポスト紙の社主だったグラハムの義理の父はユージン・メイアー。この人物は金融界の大物で、世界銀行の初代総裁である。つまり、モッキンバードは金融資本と深く結びついた人びとによって動かされていた。

 ワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を取材、リチャード・ニクソンを辞任に追い込んだカール・バーンスタインによると、1977年の時点で400名以上のジャーナリストがCIAのために働いていたほか、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 2014年2月に CIAとメディアとの関係を告発する本 を出したフランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の元編集者ウド・ウルフコテによると、 ジャーナリストとして過ごした25年の間に嘘を教わったことは、嘘をつき、裏切り、人びとに真実を知らせないこと だという。ドイツやアメリカのメディアがヨーロッパの人びとをロシアとの戦争へと導き、引き返すことのできない地点にさしかかっていることに危機感を抱いての告発だと語っている。日本にはアメリカやEUのメディアを「権力を監視する番犬」、あるいは「言論の守護神」であるかのように語る人が少なくないが、戯言だということだ。

(注2) Alan Hart, “Zionism”, World Focus Publishing, 2005

(注3) Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012

(注4) Seymour M. Hersh, “The Samson Option,” 1991, Random House

(注5) John J. Mearsheimer & Stephen M. Walt, “The Israel Lobby”, Farrar, Straus And Giroux, 2007





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最終更新日  2016.04.02 11:57:59


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