《櫻井ジャーナル》

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2019.09.18
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 世界の回転軸はアメリカから中露へ移動しつつある。1991年12月にソ連を消滅させることに成功、ネオコンをはじめとするアメリカの支配層は自国が唯一の超大国になったと思い込んだことが間違いの始まりだったと言えるだろう。

 ソ連が消滅した後、その中核だったロシアは西側巨大資本の傀儡だったボリス・エリツィンが実権を握る。彼の周辺にいた腐敗勢力は西側の手先として国の資産を盗む手助けをし、自分たちも巨万の富を築いた。それがオリガルヒだ。

 ロシアを欧米巨大資本の属国にしたエリツィンの時代は1999年まで続くが、その間にロシア人の大半は貧困化し、街は犯罪者と売春婦であふれたと言われている。その8年間にロシア人は西側、あるいは資本主義の実態を知った。

 そのロシアを再独立させたのがウラジミル・プーチンを中心とする勢力。プーチン人気の原因はここにあるが、かれはエリツィン時代に国の資産を略奪した人びとへの対応が甘いとも見られている。現在、プーチンを批判する人の多くは西側とつながっている人脈の完全な排除を望んでいるという。

 エリツィン時代にはアメリカ人もロシアに入り、略奪に参加していた。そのひとりとしてウィリアム・ブラウダーの名前も挙がっている。ブラウダーは投資ファンドを経営していたが、そのファンドはモスクワの法律会計事務所ファイアーストーン・ダンカンと契約していた。その事務所で税金分野の責任者だったのがセルゲイ・マグニツキー。

 ロシアの捜査当局はブラウダーを脱税容疑で調べはじめ、マグニツキーを2008年11月に逮捕する。​ ECHR(欧州人権裁判所)が今年8月に出した判決

 ECHRによると、その捜査は正当なもので、政府高官の不正をマグニツキーやブラウダーが主張し始める数年前から当局はふたりを脱税容疑で調べ始めている。告発に対する弾圧というシナリオは成り立たないわけだが、アメリカの政界や有力メディアはそのシナリオに乗った。

 マグニツキーの死因は心臓病だという説は当初からあった。彼の妻もそう考えているようだ。(Andrey Nekrasov, “The Magnitsky Act. Behind the Scenes,” 2016)適切な医療が受けられなかった可能性が高いのだが、それはロシアの刑務所におけるシステム的な問題。マグニツキーの事件だけの個別的な問題ではない。

 2013年にロシアの裁判所はブラウダーに対し、脱税で懲役9年の判決を言い渡している。ロシアの検察当局によると、ブラウダーはロシアで脱税に手を染めていただけでなく、石油会社ガスプロムの株式を違法に取得していたという。

 告発者の弾圧というシナリオを宣伝するため、ブラウダーは反プーチンで知られている映画監督のアンドレー・ネクラソフを雇うのだが、取材の過程で彼はブロウダーの会社で働いていた女性が本当の内部告発者で、脱税はブロウダーが行っていたことをつかむ。しかも、その不正にマグニツキーは金庫番として関わっていたこともわかった。

 ネクラソフは雇い主の意向を「忖度」せず、事実をドキュメンタリーの中に盛り込む。そのためにふたりは対立、作品を公開することが困難になった。それだけの圧力がかかっている。

 一方、西側ではブラウダーの主張が事実として宣伝されてきた。そもそもブラウダーが西側支配層の手先として活動していた可能性もある。アメリカでは彼の主張に基づいてロシアを「懲罰」するための法律、いわゆる「マグニツキー法」が2012年に制定された。その後、2016年に法律の対象は全世界に広がり、アメリカ政府が人権を侵害したと認定した人物の資産を凍結、アメリカへの入国を禁止することができることになる。この法律を正当化するために使われたシナリオをECHRは今回、否定したのだ。






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最終更新日  2019.09.18 19:53:20


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