4月に入り、アメリカ空軍はウクライナへ物資を少なくとも3回にわたって空輸していると伝えられている。ドイツのラムシュタイン空軍基地からC-130輸送機とC-17輸送機がキエフへ、アメリカからリビウへC-17、そしてポーランドのポズナンからイギリスのBae 146-200がキエフへそれぞれ飛来しているという。
本ブログでも書いてきたが、ウクライナでは軍事的な緊張が高まっている。キエフ政権は新たな部隊を東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)へ派遣しているほか、トルコ政府がキエフ政府への軍事的な支援を始めていた。
こうした動きに合わせてロシア軍はウクライナとの国境近くへ移動している。ロシア軍がロシア国内を移動しただけだが、これをアメリカの国務省のネッド・プライス報道官は「挑発行為」だと記者会見で主張、さすがに記者からも皮肉られている。
現在のキエフ政権はアメリカのバラク・オバマ政権が2014年2月にネオ・ナチを利用し、クーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したところから始まっている。そのクーデターではヤヌコビッチの地盤だったウクライナの東部や南部で反クーデターの動きがあり、クリミアはロシアと一体化した。ドンバスにも同じ動きがあったが、そこまでは至らず、戦闘になったわけだ。オデッサでは反クーデター派の市民が惨殺されている。ロシアはクリミアの防衛体制も強化しているようだ。
ウクライナの状況を考える上で参考になる出来事がある。2008年8月、ジョージアは南オセチアを奇襲攻撃、ロシア軍の反撃で惨敗しているのだ。ジョージアの背後にはイスラエルとアメリカが存在していた。
イスラエルの場合、2001年からジョージアへ武器/兵器を含む軍事物資を提供、将兵を訓練している。アメリカの傭兵会社も教官を派遣してジョージア軍を訓練していた。奇襲攻撃が行われる前の月にアメリカの国務長官だったコンドリーサ・ライスがジョージアを訪問している。
その当時、アメリカやイスラエルはロシア軍を甘く見ていた。例えば フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文
ベトナム戦争の時もそうだったが、アメリカには自国軍を無敵の「神の軍隊」だと考えている人が少なくない。しかも、エリートは戦争を知らない。ベトナム戦争時代、アメリカには徴兵制があったのだが、有力者の子どもが戦場へ派遣されないようにするため、「シャンパン部隊」が存在していた。CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の「フォーチュネート・サン」はこうした部隊のことを歌っている曲である。今は徴兵制もない。戦争を知らないだけでなく、負けるという発想がアメリカのエリートにはない。それだけ危険な存在だということだ。