《櫻井ジャーナル》

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2022.07.29
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 リチャード・ニクソン大統領が1972年2月に中国を訪問、国交を回復させて以来、アメリカ政府は中国を承認、台湾は中国の一部だと認めてきた。中国は「一国両制」を表明している。中国はひとつだが、その中に違うシステムを存在させるということだ。それによって東アジアの均衡を作り出すことにしたと言えるだろう。その均衡をナンシー・ペロシ米下院議長が壊そうとしている。

 ウクライナの場合、2013年11月から14年2月にかけてアメリカ政府が仕掛けたクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。ヤヌコビッチ大統領は間一髪のところで脱出したようだが、拘束された場合、殺された可能性もある。その際、クーデターの中心になったのはNATOの訓練を受けていたネオ・ナチで、ベルクト(警官隊)に所属していた隊員の命を狙い、検察官事務所へ押し入り、銃を振りかざしながら検察官を恫喝していた。

 ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部ではクーデター政権を拒否し、ドンバス(ドネツクやルガンスク)ではその時から戦争が続いている。大統領に就任した直後に「ルビコンを渡った」ジョー・バイデン大統領は今年3月からドンバスで大攻勢をかけようとしていたと見られている。その直前にロシアが動き、計画は狂った。

 それに対し、台湾の場合はコソボと同じように、いきなり中国から分離させようというわけだ。蔡英文総督の心情はともかく、中国はペロシの行動を座視することはできない。必然的に軍事的な緊張が高まり、アメリカ海軍は空母「ロナルド・レーガン」と艦隊を7月25日にシンガポールから出港させ、台湾へ向かわせた。そのアメリカ軍もペロシの台湾訪問を「良い考えではない」としている。中国が台湾周辺に飛行禁止空域を設定する可能性もある。

 ペロシの台湾訪問には批判的な意見も少なくないが、積極的に支持している人物もいる。その代表格が1995年1月から99年1月まで下院議長を務めたニュート・ギングリッチだ。この人物はカジノ経営者の シェルドン・アデルソン やシカゴの富豪ピーター・スミスをスポンサーとするネオコン。彼自身、1997年に台湾を訪問しているが、当時と今では米中関係が根本的に違っている。

 ペロシは自分の台湾訪問がどのような事態を招くかを承知しているはずである。彼女は4月30日に下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓っている。戦争を続けろということだ。

 親衛隊などゼレンスキー政権の戦闘部隊は住民を人質にとってロシア軍に抵抗していたが、3月の段階で敗北は決定的だった。4月21日に​ ミコライフ州のビタリー・キム知事は「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と語り、住民を脅していた ​が、これは人心が離反していたことを示している。ゼレンスキー政権の内部も動揺していたはずで、それを抑える意味がペロシのウクライナ訪問にはあったのだろう。

 東アジアの場合、5月10日から大統領は文在寅から尹錫悦へ交代、アメリカへ従属する政策へ切り替わり、朝鮮を刺激している。8月には大規模な米韓合同軍事演習が予定されている。日本では2016年に与那国島、19年に奄美大島と宮古島に自衛隊が施設を建設、23年には石垣島にも建設する予定だ。





 アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」は今年、アメリカのGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する戦略について分析、インド・太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないと考えているが、日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。

 そこで、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力することになると見ている。そうしたミサイルによって台湾海峡、東シナ海、中国沿岸の一部をカバーできるという。つまり射程距離500キロメートル程度のミサイルを考えているが、当然、反撃も想定しなければならない。

 本ブログでは繰り返し指摘していることだが、イギリスの長期戦略の中で明治維新は引き起こされ、その流れは現在まで続いている。アングロ・サクソンは中国支配を諦めていない。

 明治体制は廃藩置県を実施した翌年の1872年に琉球国王を琉球藩王として琉球国を潰し、イギリスとアメリカの「アドバイス」で74年に台湾へ派兵、ここから日本のアジア侵略が始まる。

 1875年には李氏朝鮮の首都を守る要衝、江華島へ軍艦を派遣して挑発、「日朝修好条規」を結ばせて清国の宗主権を否定させることに成功、94年に朝鮮半島で甲午農民戦争が起こって閔氏の体制が揺らぐと「邦人保護」を名目にして軍隊を派遣、朝鮮の要請で派兵した清(中国)と戦争、1904年2月8日には仁川沖と旅順港を奇襲攻撃して日露戦争を始めた。

 日露戦争ではセオドア・ルーズベルト米大統領と金子堅太郎が重要な役割を果たしている。ふたりはハーバード大学の出身で、1890年にルーズベルトの自宅で知り合い、親しくなった。

 ルーズベルトは1898年のアメリカ・スペイン戦争を主導した人物で、スラブ系のロシアを敵視、日露戦争の勝者が東アジアで大きな影響力を持つと見ていた。そこで日本に肩入れしたわけだ。日露戦争の後、セオドアは日本が自分たちのために戦ったと書いている。

 その一方、金子は日露戦争の最中に日本政府の使節としてアメリカへ渡り、1904年にハーバード大学でアンゴロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説。同じことを金子はシカゴやニューヨークでも語っていた。日露戦争後に日本は韓国を併合しているが、これはルーズベルト、金子、そして桂太郎らによって話がついていたことで、反対意見が聞き入れられる余地はなかったという。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015)

 この構図は今も生きていて、アメリカが東アジアで戦争を始めれば日本も巻き込まれる。既にアメリカは1995年までに日本を自分たちの戦争マシーンに組み込んでいるので、そのマシーンを始動させるだけだ。安倍晋三殺害のタイミングは興味深い。






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最終更新日  2022.07.29 14:04:21


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