最初私が相対性原理を立てようという思想を得たのは、およそ十七年前でした。それがどこから来たかということは、もとより明確には言い表わすことは出来ません。しかし、それがもちろん、運動体の光学に関する問題のなかに含まれていたのは確かです。エーテルの海のなかを透して、光は伝わってゆきます。そしてそのエーテルのなかを、地球はやはり動いています。もし地球から見たなら、エーテルはこれに対して流れているのです。けれども、このエーテルの流れを明らかに私たちに実証するところの事実は、物理学の文献のなかに少しも見出すことが私に出来ませんでした。 私はそこで、どうにかしてこのエーテルの地球に対する流れ、即ち地球の運動を実証して見たいと考えました。私は当時、この問題を自分の心に起こしたとき、エーテルの存在と、そして地球の運動とを決して疑いはしなかったのでした。そこで、一つの光源からの光を適当に鏡で反射せしめ、地球の運動方向とこれに反する方向とに従って、そのエネルギーに差のあるべきことを予想し、二つの熱電堆を用いて、これに生ずる熱量の差によってためそうとしました。この考えは、丁度マイケルソンの実験に於けるものと同様でありますが、私はまだこの実験を充分に明らかにしなかったのでした。しかし、私がまだ学生としてこれらの思考を自分にもっていたときに、このマイケルソンの実験の不思議な結果を知り、そしてこれを事実であると承認すれば、おそらくはエーテルに対する地球の運動ということを考えるのは、私たちの誤りであろうと直覚するに至りました。(注1)これを読むと、MM実験の説明のためのアインシュタインの理論、という方向性は正しいように思えます。
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