2022.04.29
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ポール・サイモンが「American Tune」を書いたのは1972年(発表は1973年)。彼自身が「あまり政治的な歌詞は書かない、でもこの曲はかなりそれに近いものだった」とインタビューで語っている。アメリカは国内的にも国際的にも苦難の時代を通りすぎていた。ベトナム戦争はまだ終わっていなかった、ランド研究所の研究者がペンタゴン・ペーパーズを新聞社に流した、ニクソン大統領のウォーターゲート事件は深く静かに進行していた、人種差別撤廃の為のバス通学が連邦政府によって強制されることも可能になった。「American Tune」の歌詞には、そういったアメリカの苦悩の歴史と、と同時に民主主義を守ろうとする折れそうで折れない意志が刻まれている。

しかし、この曲の歌詞が多くのアメリカ人に今でも受け入れられているのは、それ以上の何かがあるからだ。この詞には、個々のアメリカ人、あるいはどこの国の人でも、が時代を越えて共感することのできる人生の試行錯誤が象徴的に描かれている。人々はそこに自分の夢を、苦悩を、誤解を、疲労を、孤独を読み取って、深くうなだれる。それでも、一休みしたらまた立ち上がって仕事に向かうしかない。そんな時にふと口ずさむ、そんな歌だから愛されてきた。

Many's the time I've been mistaken
And many times confused
Yes, and I've often felt forsaken
And certainly misused
But I'm all right, I'm all right
I'm just weary to my bones
Still, you don't expect to be bright and bon vivant


しょっちゅう誤解を受け、心はぐちゃぐちゃに乱れた
人から見捨てられたし、もちろん利用もされた
それでもなんとかボクは大丈夫
だけどさぁ、疲れたよ、骨の髄まで
それでもって明るく元気にしてろってのは無理な話さ
そりゃそうだろ、心の故郷はここにはないんだ、遠く離れてるんだ

And I don't know a soul who's not been battered
I don't have a friend who feels at ease
I don't know a dream that's not been shattered
or driven to its knees
But it's all right, it's all right

Still, when I think of the road we're traveling on
I wonder what's gone wrong
I can't help it, I wonder what's gone wrong

誰だって打ちのめされたことがある
友達はいるけどなんかみんな距離を置いてるしね

それでも大丈夫だよ
だって僕たちは長い間まあ申し分なく生きてきたんだから
とはいうものの、振り返ってみるとどこで道を誤ったんだろうと思う
そう思わざるをえないんだよね

And I dreamed I was dying
I dreamed that my soul rose unexpectedly
And looking back down at me
Smiled reassuringly

自分が死んでゆく夢を見た
驚いたことに自分の魂が空中高く昇って行くんだ
そこから自分を見下ろしてる、安心させるように微笑んでね

And I dreamed I was flying
And high up above my eyes could clearly see
The Statue of Liberty
Sailing away to sea

自分が天空を翔んでいる夢を見た
ずっと高いところから自由の女神がはっきりと見える
まるで海の上を走り去っていくようなんだ
自分が天空を翔んでいる夢を見た

We come on the ship they call the Mayflower
We come on the ship that sailed the moon
We come in the age's most uncertain hour
and sing an American tune
But it's all right, it's all right
You can't be forever blessed
Still, tomorrow's going to be another working day
And I'm trying to get some rest
That's all, I'm trying to get some rest

僕たちはメイフラワー号という船でやって来る
月面を走った船に乗ってやって来る
歴史上もっとも不確かな時にやって来る
そして、アメリカの歌を歌うんだ
それでも大丈夫さ、うんうん大丈夫
永遠に祝福されるなんてことはないんだしね
でもね、明日もまた仕事に行かなくちゃいけないんだ
だから、今はもう少し休もうと思う
それだけだよ、もう少し休もうとね

最後にもう一度、ユーチューブでサイモンとガーファンクルの「American Tune」を聴く。 彼らが解散したのは、どこにでもあるエゴのぶつかり合いで仕方がなかった。それでもやはり、ガーファンクルの<天使のような声>は美しい。この演奏は、1981年9月19日、ニューヨーク、セントラル・パークでのコンサートでのコンサートのものらしい。





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最終更新日  2022.04.29 16:46:21
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