音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2010年01月16日
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 コーポロン=ノーステキサス大学ウインドアンサンブルの恒例の新譜が出ました。

価格面から、直接GIAで購入。

一枚$15.95、送料$5.5で合計$37.4、1$95円としても、日本円で3550円余りで、1枚当たり1800円弱と格安です。

 例によって、古典と最新作の組み合わせです。

今回の特徴は、古典はあまり多くなく、フサの作品が2つ入っていることが目立っています。

 今回は、「Archtypes」と題された一枚をレビューします。

ちなみに「Archtype」とは「アーチ」でArchtype bridgeはアーチ橋のことです。

このシリーズはアルバムの題名に曲名が使われることがなく、何を意味しているのか分からない場合がありますが、今回もその例にもれなかったようです。

 全9曲で、その中でつまらなかったのは、Kathryn Salfelder(1987-)の「Cathedrals」。

ジョバンニ・ガブリエリのいくつかのカンツォーナの主題を使った作品です。

主題が、ステレオ的に聞こえるのはいいのですが、全体が微温的で、退屈です。

コーポロンともあろう人がこんな曲を取り上げたのが全く理解できません。

 それから、ワーグナーの吹奏楽作品「ウエーバーのオイリアンテの動機による葬送音楽」も面白くないです。

Michael Vottaの編曲です。

分厚いハーモニーはなかなか心地よいのですが、現代に生きる人間にとっては、刺激が少なくて物足りないです。

それに、刺激的な音楽が多いこのアルバムでは、いかにも分が悪いです。

 他の曲はわくわくドキドキ、とても刺激的な曲が並んでいます。

まず、冒頭のデヴィッド・サンプソンの「Moving Parts」。

スピーディーな進行と、原色をふんだんに使った絵画を思わせる濃厚なテイストをもっています。

また、きらきらとした輝かしさもあります。

ヘスケスの「ディアギレフ・ダンス」の感じによく似ていて、ディズニーに出てくる音楽のような曲想です。

これは傑作。

 ブルジョアの近作「ウイリアムのための交響曲」は3楽章構成で演奏時間19分ほどです。

各楽章に名前がつけられていて、

この作品は、すでにベルギー・ギデと作曲者の指揮でハファブラ・ミュージックから出ていました。

この作品はブルジョアの友人であるティモシー・レイニッシュ夫妻の委嘱作品で、夫妻の息子ウィリアムスの悲劇にささげられた作品です。

作曲者自身のノートによると、次のような経緯があったそうです。

彼は数年前に結婚し、新婚旅行にブルジョアの住んでいるマヨルカ島を訪れたそうです。

その後、妻子とともにピレネーを訪れた時のことです。

ウイリアムは一人で山に出掛けたますが、山の斜面に横たわっているのを発見されました。

おそらく、稜線を歩いていて滑落したものと思われます。

 1楽章「Will-o'-the-Wisp」では、もやがかった沼地をぼんやりと照らす月明かりが描かれ、曲が進むに従って事故を暗示させる不穏な雰囲気を醸し出します。

「Will」とはWilliamの愛称で、前半のリズミカルで楽しげなフレーズは彼の性格を表しています。

 2楽章「Dianthus Barbatus」(美女撫子)というナデシコ科ナデシコ属(=ダイアンサス属)の耐寒性多年草で、英国ではスウィート・ウィリアムと呼ばれています。

ピンクや赤い花を咲かせる愛らしい植物で、その名の通り優しさと慰めに満ちた楽章。

ホルン・ソロがフィーチャーされますが、欲を言うと、フレーズの細部が安定せず、音色もいまいちです。

続く、オーボエやサックスのソロはいいです。

後半に出てくるテュッティの動機が、迫りくる悲劇を予感しているかのようです。

 3楽章はブルジョア特有のぎくしゃくしたリズムで進行します。

曲の終わり向けて次第に静けさを増し穏やかに幕を閉じます。

この部分 一部引用

 アダム・ゴーブの演奏会用序曲「Adrenaline City」は、以前「Time Lines」(2006)というポリフォニックのGreat British Music for Wind Bandシリーズの一枚に収録されていました。

ゴーブ特有のメロディックな旋律と湧き立つようなリズムが心地よい作品。

中間部の乾いた叙情も相変わらず素晴らしいです。

今回の演奏は、「Time Line」でのロイヤル・ノ-ザン・カレッジ・オブ・ミュージック(RNCM)と甲乙つけがたいです。

こちらの演奏のほうが6秒ほど長いですが、こちらの方がリズムが軽くのりがいいです。

RNCMはリズムが重く、なにかいまいち踏ん切りがつかないようなところがあります。

 ティケリの「Angels in the Architecture」(建築の天使)(2006)は冒頭にソプラノ独唱で19世紀のシェイカー教の歌「光の天使」が歌われ、一瞬英国の王朝音楽ものかと思わせます。

テンポが速くなった後、サスペンス調で勢いのあるフレーズが洪水のように噴出します。

ここからは、人智を超えた神と悪魔の対立、神の光、悪魔の暗部と続き、ベルの乱打共に金管のコラールがクライマックスを築きます。

最後に再び「光の天使」が表れ、神の勝利を告げます。

途中の、神と悪魔の対立の部分が、ヴァイオレンス調で非常にエキサイティングです。

この曲はマンハッタン・ビーチ・ミュージックの サイト で聞くことができます。


カレル・フサの「Al Fresuco」(1975)はイサカ大学のウォルター・ビーラー・メモリアル・コミッション・シリーズの委嘱作品です。

原曲は自身の「管弦楽のための3つのフレスコ画」(1946)からの題材をまとめたものです。

特にテーマはありませんが、巨大なスケールの傑作です。

冒頭はマリンバとピアノに支えられて、ミュートをつけた金管や木管がモチーフの断片を吹きます。

フルートにテーマが出ます。

テーマはアルト・サックスに引き継がれ、次第に泡立ってきます。

テンポが速くなり、変形されたたテーマがエネルギッシュに進行していきます。

ここでのハーモニーは分厚く、快感です。

ミュートをつけたトロンーボーンのグリッサンドも効果的です。

この部分は、凄味があり実に見事です。

特にテーマはないそうですが、フレスコ画からインスピレーションを得た物語でも見ているようなような起伏に富んだ音楽で退屈しません。

また、後半、ギャロップ風リズムに乗ってひたひたと押し寄せる楽想は迫力満点です。

続く、金管のコラールが吹きならされるヒンデミット風の楽想が表れる部分は鳥肌が立ちます。

速いパッセージの木管、金管のユニゾンなどがあり、かなり難易度の高い曲です。

私はこの曲は初めて聞きましたが、とてもいい曲で、何故埋もれているのか分かりませんでした。


 録音は、とても充実してます。

とくにバスドラムの音は素晴らしいです。

North Texas Wid Symphony:Architypes


1.David Sampson:Moving Parts (2003)
2.Frank Ticheli:Angels in the Architecture (2008)
3.Kathryn Salfelder:Cathedrals (2007)
4.Karel Husa:Al Fresco (1975)
5.Richard Wagner:Trauermusik, WWV 73 (1844)
6.Derek Bourgeois:Symphony for William (2004)
7.Adam Gorb:Adrenaline City (2006)

North Texas Wind Symphony
Eugene Migriaro Corporon,conductor

Recorded June 29,2008:April 3-6,2009;June 29,2009 at University of North Texas Winspear Performance Hall,Murchison Performing Arts Center







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Last updated  2010年01月20日 22時50分51秒
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