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キース・ジャレットがゲイリー・ピーコック、ポール・モチアンのトリオでシカゴのディア・ヘッドインで行ったギグ(1992)の未公開分が公開された。24bit44.1kHzのハイレゾでのリリースなので、192kHzにアップコンバートして試聴した。録音は音に厚みがあり、ノイズのない、さっぱりしたもので、最新録音と全く遜色ない。音が前に出て迫力も十分で、キースの唸り声も盛大に聞こえる。会場ノイズも聞こえないため、ライブ感はあまりない。参考までに、昔出ていた最初のアルバムの演奏を192kHzにアップコンバートして聴いてみた。ピアノの音は細身で、全体に軽い。なので、今回の録音と同じ日の演奏とは到底思えなかった。今回の録音はリマスターしただろうから、ハイレゾ化と相まって目覚ましい効果を上げている。特にベースのバウンス感が凄い。ディストリビューターによると『彼が初期の活動を行ったペンシルベニアの会場に、即興的かつ後に歴史的とされる形で復帰した際の最初の演奏』とのことだ。ちなみに、このクラブはキースの故郷であるペンシルベニア州アレンタウン近郊に位置しており、彼が高校卒業後に工場で働いていた時期に、ハウスピアニストの代役として雇われた場所だ。そこから彼の輝かしい音楽人生が始まるという、彼にとって思い出深い地である。演奏については言うまでもないことだが、残りテープとは思えない素晴らしい演奏が続く。この時の演奏はスタンダーズでもほとんど演奏されているので、比較するのも一興かもしれない。タイトルチューンに関していうと、「Standars Live」(1985)でアンコールとして演奏されている。テンポが今回の演奏よりもかなり速く、アグレッシブな演奏で、演奏時間も約半分だ。良し悪しは別として、デジョネットの複雑なドラミングに比べると、モチアンのドラミングは単調に聞こえる。「All Of You」では、珍しく、約2分間にわたる少し長めの技巧的なピアノのカデンツァがイントロとして挿入されている。Keith Jarrett:The Old Country(ECM 6597656)24bit 44.1kHz FlacCole Albert Porter:All Of YouCole Albert Porter:Everything I loveJule Styne, Sammy Cahn:I Fall In Love Too EasilyThelonious Sphere Monk:Straight, No ChaserCole Albert Porter:All Of YouFrank Churchill:Some Day my Prince Will ComeNat Adderley:The Old CountryVictor Young, Jerry Livingston, Raymond B. Evans:Golden EarringsGeorge Gershwin:How Long Has This Been Going OnKeith Jarrett (p)Gary Peacock (b)Paul Motian (ds)Recorded: 1992-09-16,Deer Head Inn,5 Main St, Pennsylvania, United States
2024年11月30日
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宮田大とのセットが割安だったために聴きに行ったコンサート。ヴァイオリンの郷古廉(ごうこ すなお)氏は1993年に宮城県多賀城市で生まれたヴァイオリニスト。今年からNHK交響楽団のコンサートマスターになられたそうだコンサートマスターは3人いるが、正式なコンサートマスターは郷古氏だけ。通常だともう一人いるのだが、そこは第1コンサートマスターを引退し特別コンサートマスターになられた篠崎さんとゲストコンサートマスターで賄っているのかもしれない。郷古さんは映像でも観たことはなかったが、ディボール・ボルガ国際ヴァイオリンコンクール(1967年創設)で2013年に優勝されたそうだ。このコンクールでは、日本人も何人か入賞しており、最近では3人の優勝者が出ている。有名なところでは、前橋汀子が1969年に3位に入賞している。また、カントロフやレーピンといった著名なヴァイオリニストも入賞しており、権威あるコンクールなのだろう。特に目を引くのは、1位なしの年が何回かある点で、それだけ厳しい審査が行われているのかもしれない。閑話休題今回のプログラムはシューベルトや新ウィーン学派、ブゾーニと刺激的な曲が並ぶ興味深い内容であった。おそらくシューベルト以外は盛岡で演奏されたことがほとんどないと思うので、筆者としては画期的なコンサートだと感じた。ところで、筆者には、楽団で演奏している方のソロの演奏には、スケールが小さく主張が弱いという先入観がある。それは、その人がたとえ一流の楽団に所属していても同じなのだが、郷古氏の演奏はのびのびとしており、個性を前面に押し出すことはないものの、適度な主張が繰り広げられ、大変好感を持った。とにかくヴァイオリンの音が大変美しく、音楽も作為的でなく、スムーズに流れるものだ。今回の演奏は新ウイーン学派やブゾーニの作品が大変良かった。今回、シェーンベルクやウェーベルンの音楽を初めて生で耳にしたのだが、彼らの無調音楽には冷たさや無機質な印象はなく、むしろ血の通った、生き生きとした音楽に感じられたのには驚いた。暖かく、肉付きのよいサウンドが彼らの音楽に適度な温もりを与えており、ホールの音の良さもそれを引き立てているように思う。シェーンベルクの「幻想曲」Op.47は晩年の作品で、12音ではあるが冷たい感触は幾分和らいでいる。彼らの演奏は起伏のはっきりした演奏で、ヴァイオリンもピアノも激しい表情を見せる場面があり大変面白い演奏だった。筆者はこの曲を聴いたことがないと思っていたが、実はグールドの演奏を聴いたことがあったと気づいた。ただし、その演奏は今回のような激しいものではなく、印象に残らなかったのも無理はないと感じた。ウエーベルンも聞いたことがない筈で、この5分に満たない曲が大変面白い曲であることが分かった。12音の作品であるが、感情の発露が感じられる激しい部分や、第1曲の救急車の音のようなフレーズが聞こえる部分など、興味深い曲だった。技巧的には難しい曲だそうだが、そのような難しさは感じられず、ウエーベルンの冷徹さもあまり感じられなかった。さすがに現代音楽に強みを持っているのも頷ける。シューベルトはヴァイオリンを弱音重視で演奏しており、そのためかピアノとのバランスが悪く、ヴァイオリンが埋没気味になる場面が多かった。ところが、Andantino と次の Allegro vivace のブリッジ部分から突然音量が上がり、それまでの弱音重視の音楽が演出だったことに気づかされた。この幻想曲はシューベルト特有の親しみやすさが表れた曲であるが、彼らの演奏は優れているものの、あまり親しみやすさが感じられなかった。ブゾーニのヴァイオリン・ソナタは、筆者がこれまで聴いたことのない曲だった。少し前にフランチェスカ・デゴの新譜を入手していたが、未聴のままだったのも理由の一つ。この演奏会の後でデゴの演奏を聴いてみたが、今回の演奏の方がメリハリがあり、くっきりとした演奏で優れているように感じた。この曲はヴァイオリンに高い技術が要求される難曲で、難解なためあまり演奏される機会がない。今回の演奏でも、つまらなくはないが、それほど良い曲だとは思わなかった。長大な3楽章はエンディングの繰り返しが多く、いつまでたっても終わらない感じがして、不満を覚えた。アンコールはバッハのソナタ。それまでとは明らかに違った、ビブラートを殆ど使っていない。明るく温かみのあるサウンドで、心温まる時間を体験できたことが嬉しかった。なお、最初にR.シュトラウスの歌劇「ダフネ」のモチーフを基に作られた「ダフネ練習曲」という無伴奏ヴァイオリンのための小品が演奏された。ということで、現代曲に強い新しい感性を持つヴァイオリニスト、というのが現時点での筆者の感想だ。今回は全く知らない演奏家だったが、新感覚の優れた演奏を聴くことができ、大変有意義な時間を過ごせた。今後のさらなる活躍にも期待したい。郷古廉、ホセ・ガイヤルド デュオ・リサイタル前半1.R.シュトラウス:「ダフネ練習曲」2.シェーンベルク:幻想曲 Op.473.シューベルト:幻想曲ハ長調D.934後半4.ウエーベルン:4つの小品Op.75.ブゾーニ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ホ短調 Op.36aアンコールJ.S.バッハ:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第3番 ホ長調 BWV1016より 第3楽章 Adagio ma non tanto郷古廉(vn)ホセ・ガイヤルド(p)2024年11月23日 盛岡市民文化ホール 小ホール 8列15番で鑑賞
2024年11月28日
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マイルス・デイヴィスにとって極めて重要な年であった1954年に、彼がプレスティッジに録音したアルバムの70周年を記念して、その中から20曲をConcord Masteringのポール・ブレークモアによりリマスターしたアルバムがクラフト・レコーディングからリリースされた。この年にプレスティッジで録音された演奏は、5枚ほどのアルバムに収録されている。ほぼアルバムごとに固まって配置されているが、一部異なる部分もある。調べたわけではないが、どうやらクロノロジカルに並べられているようだ。まあ、プレスティッジのアルバム自体、編集がいい加減で、寄せ集めになることもよくあるので、整理されているほうが良いのは確かだ。そのため、麻薬禍からの脱出時期から徐々に体調が回復し、演奏にも活力がみなぎる時期が網羅されているので、そうした背景を踏まえて聴くと面白いと思う。2016年あたりにハイレゾ化されているアルバムもあるが、「Miles Davis All-Star Sextet」や「Miles Davis All Stars Vo.1,2」はハイレゾ化されていないようだ。筆者はここら辺のアルバムはそれほど所有していないし、特に「Walkin'」のハイレゾは未だに未入手なので、今回のラインナップに全曲収録されているのは有難い。手持ちの「Bags Groove」のCDをリッピングして192kHzにアップコンバートしてみたが、音はぼやけて乾き気味であまり生気がない。ハイレゾは抜けがよく、リマスターとハイレゾ化した効果があることは確かなようだ。古い絵画を修復した後で見るような、さっぱり感がある。久しぶりに聴くいたが、昔の記憶がよみがえってくるわけではない。古びた写真を見るような感じで、今となっては古き良き時代の思い出のような感じがした。昔聞いていた時と現在では環境も自分自身も変わってしまい、同じ印象にならないのは寂しくもあり仕方のないことでもある。全体に意外とのんびりした気分の演奏で、モンクとマイルスの逸話で有名なクリスマス・セッションの「The Man I Love」も自分の感性の退化なのかもしれないが、彼らの確執は全く感じられない。まあ、音楽としては非常にシンプルで、あんまり余計なことを考えないで聴くのがいいのだろう。麻薬禍からやっと抜け出した直後のアルバム「Blue Haze」からの3曲(track1-3)はまだ病み上がりなのか、たどたどしいプレイに終始している。ところが約一か月後の「I'll Remember April」ではかなり復調していてアドリブも力強くなっている。「Walkin'」ではラッキー・トンプソンのテナーが艶のあるサウンドで精彩を放っているのが目立つ。ホレス・シルバーの才気に富んだプレイもいい。ただ、「Bag’Groove」での原テープに起因するノイズが残っていることが惜しい。デジタルなので、何とかなるような気がするが。。。。これらのアルバムを既に所有している方や、ハイレゾ音源をお持ちの方にとって、音質の違いを理由に、新たに購入する必要があるかどうかは、かなり微妙なところだ。ただし、グラミー賞受賞の音楽史家アシュリー・カーンによるライナーノーツやグラミー賞受賞者ダン・モーガンスターンによるセッションノーツが含まれているので、そちらに興味のある方はCDまたはLPを購入されたら如何だろうか。Miles '54: The Prestige Recordings (Craft Recordings CR07836)24bit 192kHz flac1.Miles Davis:Four2.Burton Lane, Edgar Yipsel Harburg:Old Devil Moon3.Miles Davis:Blue Haze4.Miles Davis:Solar5.Don Raye, Gene DePaul:You Don't Know What Love Is6.Walter Donaldson:Love Me or Leave Me7.Gene DePaul, Patricia Johnston:I'll Remember April8.John Gillespie, Frank Paparelli:Blue 'N' Boogie9.Richard Carpenter:Walkin'10.Sonny Rollins:Airegin11.Sonny Rollins:Oleo12.George Gershwin:But Not for Me (Take 1)13.George Gershwin:But Not for Me (Take 2)14.Sonny Rollins:Doxy15.Milt Jackson:Bags' Groove(Take 1)16.Milt Jackson:Bags' Groove (Take 2)17.Thelonious Monk, Denzil Best:Bemsha Swing18.Miles Davis:Swing Spring19.George Gershwin:The Man I Love(Take 1)20.George Gershwin:The Man I Love(Take 2)Miles DavisHorace Silver; Percy Heath; Art Blakey(track 1-3,5)Horace Silver; Percy Heath; Kenny Clarke; Davey Schildkraut(track 4,6,7)J.J. Johnson; Lucky Thompson; Horace Silver; Percy Heath; Kenny Clarke(track 8,9)Sonny Rollins; Horace Silver; Percy Heath; Kenny Clarke(track 10-14)Milt Jackson; Thelonious Monk; Percy Heath; Kenny Clarke(track15-20)
2024年11月26日
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音楽の友の12月号別冊で「生誕200年最新ブルックナー」が発行された。中身はパラパラと見ただけだが、ブルックナーの演奏では、楽譜の校訂が盛んで、演奏様式も変化しているようだ。従来のノヴァークやハースの校訂に加え、最近ではベンジャミン・コースベット(クラーク大)の校訂した譜面による演奏が録音で聴かれるようになった。この本を読むと、新アントン・ブルックナー全集(NGB)を刊行したポール・フォークショー(イェール大学名誉教授)のインタビューが最初に掲載されており、このNGBの重要性が強調されているようだ。また、フォークショーが監修したマーク・ポシュナーの交響曲全集が完結し、Naxosからボックスセットとして発売されていることをこの本で知った。単売された時からその存在は知っていたが、カプリッチョは高価で手が出なかったし、配信でもほとんど聴いたことがなかった。この全集は「CAPRICCIO」レーベルと国際ブルックナー協会の主導で、ブルックナーの生誕200年に向けて、すべての交響曲の版(バージョン)を新たに録音する企画「#bruckner2024」の一環として制作されたものだ。ポシュナーの指揮は、ブルックナーの交響曲は教会音楽ではないという認識に基づき、作曲者のテンポや強弱記号を忠実に反映しているそうなので、NGBの姿がかなり再現されているのだろう。いつものpresto musicでは全集のダウンロード(現在はラインナップに入っている)はなく、CD18枚組という代物で、presto musicでも送料を入れると14,000円ほどと非常に高価だった。しかし、prostudiomastersをチェックしたところ、ハイレゾが何と税込みC$22.67(邦貨で約2,700円)で購入できることがわかり、早速ダウンロードした。これから少しずつ聴いていこうと思っている。この全集の特長は、ブルックナーのすべての版を演奏することだそうだ。筆者はこの全集以外にも別の版があるように思っていたが、整理すると、この全集に収められた版にまとまるようだ。もちろん、悪名高いシャルク版などは含まれていない。また、交響曲第1番のスケルツォ(1865年)、交響曲第3番第2稿のアダージョ(1876年)、第4番フィナーレ「民衆の祭り」といった、聴いたことのない音楽も収録されており、興味が尽きない。第1番のスケルツォなどは、馴染みのある旋律以外に、全く聴いたことのないモチーフが入っていて非常に新鮮に感じる。別冊の巻末にあるブルックナー会議で、若手の「ブルックナーオタク」(所謂ブルオタ)たちによる鼎談があり、第3番第2稿の第4楽章コーダの弦が驚くべきことになっているという話を聞いて、それを実際に聴いてみた。筆者は第3番に関しては初稿と最終稿しか聴いたことがなく、この第2稿は初めて聴いたが、非常に刺激的な版であることを初めて知った。この全集は版の違いだけでなく、最新の知見を取り入れた解釈と、ブルックナーの支持を丹念に反映したポシュナーの指揮が「私たちが習慣にしていた聴き方や伝統とみなしてきたものを問いただす企画」としてICMA2024の特別賞を受賞したとのこと。何しろ大部なもので、18時間弱の演奏時間があり、一通り聴くだけでも大変だが、普段聴き慣れた版でもかなり違う点があるようなので、楽しみが尽きない。例えば第7番第1楽章を聴いたら、エンディングが異常なスピードで驚かされる。フォークショーによれば、ブルックナーが書いていないとされたり、弟子たちに圧力で消されたと見なされていた数十か所のテンポや演奏指示を復活させたことにより、曲の多彩さが堪能できるようになったとのこと。この第1楽章のエンディングもその一つだろう。その他、第2番第2稿の中間楽章の入れ替えなど、聴く前からワクワクする内容が盛りだくさんで、ブルックナーが好きな人にはたまらない企画だろう。現在、つまみ聞きしている状態なので、断定はできないが、演奏はくすんだサウンドで、一流の演奏に比べると物足りない。録音の音質は高域の抜けが悪く、低音も十分ではないが、鑑賞には差し支えない。なので、名演奏を期待するのではなく、史料価値に重点を置いた聞き方をするのが正しい?鑑賞方法だろう。また、ダウンロード版にはブックレットは付いていない。なお、qobuz JPでもリリースされており、ハイレゾは約3,200円で購入できる。prostudiomastersのアカウントをお持ちでない方は、少々高くなるが、こちらを利用されては如何だろうか。Markus Poschner Bruckner: The Symphonies(CapriccioNR C2006)24bit 96kHz FlacBruckner Orchester LinzORF Vienna Radio Symphony OrchestraMarkus Poschner
2024年11月24日
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ニューヨーク在住のピアニスト、山中みきのアルバム「Chance」を聴いた。彼女を知ったきっかけは、Bandcampのメールで、何回か聴いて良かったのでダウンロードしたからだ。彼女の経歴は自身のnoteに詳しい。岡山大学のジャズ研究会出身で、2021年に大学を卒業後、単身で渡米し、13年に一時帰国。その後、さらに前進を目指して、14年1月からQueens Collegeに通い、修士課程を15年12月に修了。その後は現地のライブハウスを中心に活躍している。ニューヨークでは、最も忙しい若手ピアニストの一人とされ、NYジャズの中心地であるSmalls Jazz Clubでは、2016年に最も多く演奏したミュージシャンに選ばれている。ジャズ・ミュージシャンは、普通の大学などでジャズを始める人が多いが、生活していけるかは別として、クラシック音楽とは違って敷居が高くないのかもしれない。才能があるのはもちろんだが、彼女の行動力と胆力には驚かされる。彼女にとってリーダー・アルバムはこれが3作目。2作目は昨年のリリースで、なんとマーク・ターナーとの共演(Shades of Rainbow)だった。今回はピアノ・トリオでの演奏で、プログラムはジャズ・ミュージシャンの曲と2曲のスタンダードという構成で、生き生きとした演奏が繰り広げられている。彼女のピアノは打鍵が強く、確信に満ちており、女性ピアニストという印象はない。圧巻なのはモンクの「Trinkle Tinkle」。モンクの弾きにくい譜面を、確信に満ちた、骨太のタッチで弾いている。構成にも工夫があり、中間部の4ビートの演奏は、ストレスから解放される効果があり、聴き手はほっと一息つける。「I Wish I Knew」は、テンポが速く、変拍子のアレンジが特徴だ。ベースがメロディーを担当した、独特のノリで演奏されており、異色の解釈と言えるだろう。ボビー・ハッチャーソンの「Herzog」は、このトリオが行っていたストリーミング・シリーズの中でボビー・ハッチャーソンへのトリビュートとして取り上げられた曲だそうだ。原曲に比べ、テンポが非常に速く、重戦車が突進するような迫力がある。アルバム随一の聞き物だろう。ファッツ・ウォーラーの「Jitterbug Waltz」は遅めのテンポで、ユーモアたっぷりに演奏されている。エロール・ガーナーが演奏したバージョンに触発されたという。ジェリ・アレンの「Unconditional Love」は同名のアルバム(2004年)に収録された曲。エンディングに向かってじわじわと高揚する様子が良い。「Body and Soul」は彼女のお気に入りの曲だという。装飾音符に女性らしさが感じられる。ケニー・バロンがヴィレッジ・ヴァンガードで演奏した夜に触発された可愛らしいコードも加えられているそうだ。彼女のコメントによると、「タイトルチューンの『Chance』は誰もが知っている曲だが、難しいのであまり演奏されない曲で、私は現在も練習中」とのこと。筆者は聴いたことがないが、スリリングでなかなか良い曲だ。ドラムスのピアノを煽り立てるようなドラミングも素晴らしい。タイロン・アレンのどっしりとしたベースとJimmy Macbrideのドラムスは、重厚なサポートぶりを示している。ノイズは「Jitterbug Waltz」のベース・ソロで多少気になる程度で、全く問題ない。オンマイクで、彼らの演奏をヴィヴィッドに楽しむことができる。気になったのは、ジャケットが多少サイケデリックであること。演奏がいいので、聴き手が購入をためらわなければ良いなと思う。ということで、全く知らなかったピアニストだったが、かなりの実力を持っており、今後他のアルバムもチェックしたいと思う。Miki Yamanaka:Chance(Cellar Live CM031824)24bit 96kHz Flac1.Geroge Cables:Dark Side, Light Side2.Thelonius Monk:Trinkle Tinkle3.Harold Warren:I Wish I Knew4.Bobby Hucherson:Herzog5.Fats Waler:Jitterbug Waltz6.Charlie Parker:Cheryl7.Geri Allen:Unconditional Love!8.Jonny Green:Body And Soul9.Kenny Kirkland:ChanceMiki Yamanaka(p)Tyrone Allen(b)Jimmy Macbride(ds)Recorded at Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, NJ on March 18th, 2024
2024年11月22日
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このところ活躍が目覚ましい女性ジャズ・ヴォーカリスト、サマラ・ジョイの新作を聴く。バックは7人編成のラージ・アンサンブルで、チョコレートのような滑らかでゴージャスなサウンドが聞かれる。このバンドは録音のために編成されたわけではなく、1年もの間ツアーを重ねて熟成させたサウンドだという。全体的にノスタルジックな雰囲気が漂っている。サマラの歌は圧倒的で、声量や持続力も素晴らしい。特にミンガスの「Reincarnation of a Lovebird」での、2分にもわたるア・カペラの歌唱にはただただ驚かされる。しかし、何度も聴いているうちに、やや鼻についてくるような印象を受ける。筆者だけの感想かもしれないが、歌いすぎることで聴き手が圧倒され、逆に疲れてしまうのだ。4曲目のメドレー「Peace Of Mind / Dreams Come True」では、作詞も手掛けているようだ。ジョビンの「No More Blues」では、力強く迫ってくる演奏が素晴らしいものの、少し乱暴な印象を受け、ボサノヴァの爽やかさが薄れてしまっているように感じる。彼女の歌が最優先され、曲自体は二の次に扱われているように思えるのだ。全体的にパワーで押しまくる感じが強いが、スロー・バラードの「Now And Then」では少し救われた気がする。アルバムを通じて、サマラの圧倒的な実力が示された演奏であることには間違いないが、どの曲もエンジン全開で、聴き手が疲れてしまうのが正直なところだ。まあ、筆者だけの感想なのかもしれないが。。。ということで、彼女に対する印象がネガティブに傾きつつあるのが、現在の心境だ。Samara Joy:Portrait(Verve 6801315)24bit 192kHz Flac1.Nacio Herb Brown, Gus Kahn:You Stepped Out Of A Dream2.Charles Mingus:Reincarnation of a Lovebird3.Josef Myrow, Kim Gannon:Autumn Nocturne4.Samara Joy, Kendric McCallister, Sun Ra, Jae Mayo:Peace Of Mind / Dreams Come True5.Donavan Austin:A Fool In Love (Is Called A Clown)6.Antonio Carlos 'Tom' Jobim:No More Blues7.Barry Harris:Now And Then (In Remembrance Of…)8.Axel Stordahl, Paul Weston, Sammy Cahn:Day By DaySamara Joy (vo)Jason Charos (tp,flh)David Mason (as,fl)Kendric McCallister (ts)Donavan Austin (tb)Conor Rohrer (p)Felix Moseholm (b)Evan Sherman (ds) Recorded: 2024-03-22、at Van Gelder Studio、Englewood Cliffs, NJ,USA
2024年11月20日
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北上サロンコンサート2024-2025 vol.2は須川展也のサックスと小柳美奈子のピアノというお馴染みの組み合わせ。今回はコロナで活動停止を余儀なくされていた頃に始めた「須川家のおうちライブ」というyoutubeの125本の動画の中からのナンバーを取り上げた第1部と、オリジナルと親しみやすい編曲物で構成された第2部というプログラム。須川(1961-)さんは今年でデビュー40周年を迎えたそうだ。前髪に白髪のメッシュ?が入っていて、さすがに還暦を過ぎているのを感じた。演奏は往時の凄味こそ感じられないが、技術的なミスは殆どなく安定した演奏だった。フレージングの滑らかさは、さすがだった。MCはご夫婦が分担していて、長めの解説は小柳さんがお話しされていた。「須川家のおうちライブ」はコミカルな車の絵画がかけられた自宅での録音で、アットホームな雰囲気が感じられる。演奏もほのぼのとした雰囲気が感じられ、心が癒される気がする。第1部は「ロンドンデリーの歌」のほかはフランス物の編曲。興味深かったのはイベールの間奏曲とF.ヴォルヌのカルメン幻想曲。イベールはスパニッシュムードの大変な難曲で、スリル満点。F.ヴォルヌの「カルメン幻想曲」は初めて聞いたが曲の構成が面白く楽しく聴かせていただいた。フランソワ・ボルヌ(1840-1920)はフランスの作曲家でフルート奏者。この曲はもともとフルートのために作られているが、今回はI.ロトのアルトサックス用の編曲。使われている曲のメドレーではなく変奏曲が付いていて、その変奏曲が高速のアルペジオがやたらと出て来て、聴き手はスリリングな演奏が楽しめた。「アルルの女」からの「間奏曲」も大変美しく、改めてビゼーのメロディーメーカーとしての才能を再認識したといったら大げさだろうか。それまで映画音楽に関心があった須川さんが、クラシックに目覚めるきっかけになった音楽だそうだ。後半も変化を持たせた構成で楽しめる。ポール・ボノー(1918 - 1995)の「ワルツ形式によるカプリス」はアルペジオが多用されているが、フランスの作曲家らしいエスプリの効いた曲で、楽しめた。リムスキー=コルサコフの「くまんばちの飛行」は須川さんの編曲で、フラッタータンギングを交えた高速のの演奏で、一部循環呼吸を使った部分もあったように思う。グリサンドを使ったエンディングもおしゃれだ。真島俊夫の「シーガル」では真島さんの編曲した「宝島」のレコーディングのエピソード(コードしか書いていないので、原曲のスクエアのピアノのアドリブを耳コピして移調して演奏したそうだ)を交えて演奏された。ジョン・ウイリアムズの映画「chatch me if you can)から3曲を組曲にした「エスカペイズ」はあまり面白くなかった。アンコールは2曲でバッハの「G線上のアリア」とミュージカル「マイ・フェア・レディ」のナンバー「踊りあかそう」だった。ロンドンデリーの歌北上サロンコンサート2024-2025 vol.2 須川展也・小柳美奈子第1部1.石川亮太編:ロンドンデリーの歌2.ラヴェル(長生惇編):亡き王女のためのパヴァーヌ3.J.イベール(須川編):間奏曲4.ビゼー(伊藤康英編):アルルの女第2組曲より間奏曲5.ビゼー(朝川朋之編):花の歌~カルメンより~6.F.ヴォルヌ(I.ロト編):カルメン幻想曲第2部1.P.ボノー:ワルツ形式によるカプリース2.啼鵬編曲:アメージング・グレイス3リムスキー=コルサコフ(須川編):くまんばちの飛行4.真島俊夫:シーガル5.ジョン・ウイリアムズ:エスカペイズアンコール1.バッハ:G線上のアリア2.フレデイリック・ロウ:マイ・フェア・レディーより「踊りあかそう」須川展也(as,ss)小柳美奈子(p)2024年11月16日北上市文化交流センターさくらホール(小ホール)
2024年11月18日
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bandcampのお知らせで知ったデンマークのジャズ・ピアニスト、ヤコブ・クリストファーセン(1967-)のトリオのアルバム。トーマス・フォンネスベックが参加したトリオなので、spotifyで聞いてみたら なかなか良かったので購入した一枚。彼はデンマークの女性ヴォーカリストのシーネ・エイとのコラボが有名らしいが、筆者は知らなかった。筆者はシーネ・エイのアルバムをほとんど入手しているが、サイドマンとしての彼には関心を持ったことがなかったからだ。クリストファーセン自身のリーダアルバムは数枚しかないようで、ChatGTPによると今回のアルバムを除き5枚あるようだ。その中にはフォンネスベックと共演した「The Song I Never Sang」 (2020)も含まれている。ディストリビューターによるとプログラムは『内省的なバラードからエネルギッシュなファンク風のトラック、ソウルフルなブラジルのリズムまでさまざまなムードのオリジナルに、伝説のデンマークのロックバンド、ガソリン(Gasolin 1968-1978)の「Hva'gor vi nu, lille du」や「Danny Boy」の全11曲』という構成。クリストファーセンのピアノはスイング感こそそれほど強くないが、何よりその超強力な打鍵が圧倒的な迫力を感じさせる。基本アコースティック・ピアノで一部エレクトリックピアノを弾いている。ベースのフォンネスベックは豊かな音色で、いつもながらの卓越した技術を発揮している。ドラムスおラスムス・キルバーグは力強い骨太のサウンドで、パワフルなピアノやベースに引けを取らず渡り合っている。最初の「Bargemon」は夢見るような愛らしいメロディーが特徴のバラード。タイトルはフランスのプロヴァンス地方にある美しい自然景観や歴史的な建物が魅力的な小さな村の名前のようだ。可憐なメロディーなのに、ガシガシと進んでいくのはミスマッチのように感じられるが、これがうまくはまっているのが不思議だ。タイトルチューンはカントリー風で堅牢な演奏が、まさに地に足が付いた印象を与える。「Country」はアルバムの中では穏やかなメロディーが印象的だ。この曲や「Bargemon」でのクリストファーセンの柔らかい感触の作曲のセンスはなかなかユニークだ。ただしアドリブになるととたんに硬派になるところが普通のミュージシャンとは違うところだ「Hva' gor vi nu, lille du」は原曲が爽やかなのに対し、カントリー風味の重厚な解釈がユニークだ。エレクトリック・ピアノを弾いている「Land of Lydia」は爽やかで、スピード感にも欠けない。ボサノヴァ風の『Lost in Rio』はリズミカルで楽しい曲だが、少し重たく感じる。もう少し軽やかにできなかっただろうか。「Excuse My Blues」はブルースながら、明るくノリのいい曲だ。「Armando's Blues」はチック・コリアの作品が有名だが、これはクリストファーセンのオリジナルのようだ。凄まじいスピードで爆走する演奏が、3分半に凝縮された有無を言わせぬ圧倒的な迫力で、聴き手を圧倒する。ラストでテンポを落として締める演出もおしゃれだ。このアルバムのハイライトだろう。最後の『ダニー・ボーイ』はソロ・ピアノでの演奏で、この曲にしては音数が多く饒舌な解釈だが、悪くない。ということで、クリストファーセンの充実した多面的な作品と重厚な演奏のギャップが、独自の魅力を引き出すユニークな作品と言えるだろう。中音が充実した粘り気のあるサウンドで、彼の芸術を余すところなく捉えた録音も素晴らしい。Jacob Christoffersen:A Good Day(Storyville Records 1014362)24bit 96kHz Flac1. Bargemon2. A Good Day3. Hva' gor vi nu, lille du4. Country5. Long Tail Dexter6. Land of Lydia7. Lost in Rio8. Excuse My Blues9. Break of Dawn10. Playground11. Pardon My Friends12. Armando's Blues13. Danny BoyJacob Christoffersen (p)Thomas Fonnesbaek (b)Rasmus Kihlberg (ds)All composed by Jacob Christoffersen (except 'Hva' gor vi nu, lille du' by Kim Larsen, and 'Danny Boy')
2024年11月16日
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黒メガネをかけた女性が絵画を背景にして映っているジャケットに惹かれて買ってしまった一枚。アレクサンドラ・クルジャク(1977-)というポーランド出身のソプラノ歌手のアルバムだった。ブックレットの写真を見ると割とふっくらとして柔和な表情の女性だったが、ジャケ写は顎のあたりが引き締まっていて、凄味のある顔になっている。車に乗っているときにロッシーニを聞いていてコロラトゥーラの超高音に唖然としてしまった。コロラトゥーラにしては声が太く強靭で、圧倒的な声量と安定感がある。この部分はフランスの歌手にはない、優れた能力だろう。何よりも透明感とビロードのような滑らかさが、何とも言えない魅力を放っている。wikiによると出産後に声の豊かさが増し、そのため『トゥーランドット』のリュー、『道化師』のネッダ、『オテロ』のデズデモナなどをリリコの役も歌うようになったという。ディストリビューターによると『このアルバムは19世紀フランスの歌姫として時代の寵児になるも短い期間で声を失ってしまったコルネリー・ファルコン(1814-1897)へのオマージュ』とのことだ。彼女は1820年代〜1850年代頃にパリで起こったグランドオペラの花形歌手。ところが18歳でデビュー後僅か5年で舞台から姿を消してしまった。理由は舞台で声が突然出なくなったからだという。何とも痛ましい出来事だ。ここら辺の事情はこちらに詳しい。ジャケ写のクルジャックの背景の肖像画は、どうやらファルコンの肖像画のようだ。クルジャックは表現過多にならず、すっきりとした表現で好感度大。コロラトゥーラの凄さを味わうのならロッシーニの『オリ伯爵(Le Comte Ory)』第2幕のオリ伯爵に追いつめられる女性の一人ラ・コンテスの心の苦しみと彼女の内面の変化を表すアリア「En proie à la tristesse(悲しみに支配されて)」が、素晴らしい。前半の悲痛な曲調から一転して、後半の超絶技巧コロラトゥーラが続く展開は圧巻。特にエンディングの超高音の持続力は圧倒的で、聴き手は口をあんぐり開けてしまうしかない。ベートーヴェンはコンサートアリア「Ah! Perfido(ああ、不実な人よ!)」が取り上げられている。この曲はソプラノ歌手にとって技術的にも表現的にも挑戦的な曲として知られているようだ。このアルバムでは3つのトラックに分かれていが、裏切り者に対する激しい感情と優しい感情が交差する劇的な歌唱が実に素晴らしい。アリア部分をバルトリが歌っている音源がSpotifyにあったので、参考までい聞いてみたが、声がか細く、まるで年を取った歌手がつぶやいているようにしか聞こえなかった。それもクルジャクの歌唱が素晴らしすぎるためなのかもしれない。ガスパーレ・スポンティーニ (Gaspare Spontini, 1774-1851) は、19世紀初頭のフランスとプロイセンの宮廷で活躍したイタリア出身のオペラ作曲家。彼のオペラは、華麗なオーケストレーションと壮大なドラマ性を持ち、ベルカントからロマン派音楽へと移行する時代の橋渡し的存在として知られているそうだ。《ヴェスタの巫女 (La Vestale)》(1807)はフランス時代に大ヒットした作品。「Toi que j’implore avec effroi(恐怖とともにあなたに懇願する)」は主人公のジュリアが歌う感情的で心を打つアリア。神々に赦しを請い、救済を懇願する心の叫びを表したアリアで、クルジャック劇的な表現はオペラの中に没入しているような気分になる名唱だ。フロマンタル・アレヴィ(1799-1862)の最高傑作《ラ・ジュイヴ》(「ユダヤの女」)(1835)のナンバー「Romance. ‘Il va venir’(彼は来る)」は第2幕で主人公のラシェルが恋人のレオポルドを待つ心境を歌う切ないロマンス。クルジャックはラシェルの感情を情感豊かに歌いあげている。ただ、個人的には曲の前後に入るホルンの二重奏がいまいち野暮ったく感じる。クルジャクは、ラシェルの純粋な想いを繊細に表現し、聴き手の心を捉えて離さない。ルイ・ニーダーメイヤー(Louis Niedermeyer)の代表作の一つ『ストラデッラ(Stradella)』(1857)はバロック期の作曲家アレッサンドロ・ストラデッラを題材にしたオペラ。「Ah! quel songe affreux(なんという恐ろしい夢)」では、レオノールの内面的な恐怖と不安が表現され、クルジャクの深みのある声がその情感をさらに高めている。ファルコンをzっさんしていたというベルリオーズの初期の作品「若いブルターニュの羊飼い」(1834)は穏やかな曲調で文字通り牧歌的な気分を味わえる。最近、演奏家に焦点を当てたアルバムが昔に比べて多くなってきたように感じる。そのようなアルバムの利点は、演奏家に関連する作品が取り上げられているため、聴き手がこれまで知らなかった作品を知るきっかけとなる点だ。今回のアルバムも、筆者にとって未知のオペラに出会う貴重な機会となり、非常に有難いと感じている。それを、現在が全盛期であると思われるクルジャクの名演で味わえるのだから、これ以上ない贅沢だろう。アレクサンドラ・クルジャク:ファルコン~オペラ・アリア集(Aparte AP353)24bit 96kHz Flac1. Mozart:Don Giovanni, K. 527, Act II : “Crudele ? Ah no, mio bene” (Donna Anna)2. Mozart:Don Giovanni, K. 527, Act II : “Non mi dir, bell’idol mio”3. Beethoven:Ah Perfido!, Op. 65 “Ah! Perfido”4. Beethoven:Ah Perfido!, Op. 65 :Aria. “Per pietà, non dirmi addio” 5. Beethoven:Ah Perfido!, Op. 65 :“Ah crudel! tu vuoi ch’io mora!”6. Spontini, La vestale, Act II :Air. “Toi que j’implore avec effroi” (Julia) 7. Spontini, La vestale, Act II :Halévy, La Juive, Act II :Récit et air. “Sur cet autel sacré que ma douleur assiège” FROMENTAL HALÉVY La Juive8. Romance. “Il va venir” (Rachel) 9. Meyerbeer, Les Huguenots, Act IV :Récitatif et air. “Je suis seule chez moi…Parmi les pleurs, mon rêve se ranime” (Valentine)10. Niedermeyer, Stradella :Récit et air. “Ah ! quel songe affreux” (Léonor)11. Rossini, Le comte Ory, Act I : “En proie à la tristesse” (La Comtesse) 12. Berlioz:Le jeune pâtre breton, H 65 5’27CARL MARIA VON WEBER Der Freischütz13.Von Weber Der Freischütz, J.277, Act II: “Wie nahte mir der Schlummer… Leise, leise, fromme Weise!” (Agathe) Aleksandra Kurzak(s)Morphing Chamber OrchestraBassem AkikiRecorded October 19 to 24, 2023, at the Lorely-Saal in Vienna, Austria
2024年11月12日
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先年亡くなったトランペットのロイ・ハーグローブ(1969-2018の未発表だったアルバムを聴く。4管にギターやピアノそしてパーカッション&ドラムのセクションを強化したラージ・アンサンブル="クリソル"による、大ヒット・アルバム「Habana」に続く第2作として録音されたという。ロスレスしかなかったがpresto musicからダウンロード。タイトルはフランスの海外県グアドループにある島の一つグランド・テール島のこと。このアルバムがここで録音されたことから名付けられたのだろう。今まで未発表だったことが不思議に思えるほどラテンの雰囲気満点で、ご機嫌なアルバムだった。世界的コンガ奏者であるミゲル・アンガー・ディアス(1961-)やチャンギート(1948-)、ハバナ生まれのドラマーJulio Barreto(1967-)というキューバ生まれの彼らの活躍がなければ、全く別の作品になっていただろう。ヴァラエティに富んだ曲が並び、聴き手を飽きさせることがない。ラテン音楽ながら、一曲目の「Rumba Roy」から情熱的な音楽が繰り広げられる。激しいラテン・パーカッションに、ホーンのバップ風メロディーが重なり合う。トランペットやトロンボーンのソロも力強い。ハーグローブのトランペットは絶好調で、特に高音の柔らかく澄んだ美しいサウンドはほれぼれする。ベースのジェラルド・キャノンの「A Song for Audrey」は少し速めのミディアムテンポの曲。優しいメロディーでホーンのハーモニーが心地よい。トランペットのきっぱりとしたソロが印象的だ。「A Song for Audrey」はミディアム・テンポで落ち着いた曲。南国の夜を思わせるような雰囲気で、エレクトリック・ピアノが相応しい。ハーグローブの「Lake Danse」は典型的なハード・バップだがラテン・パーカッションが入ることで様相が一変している。グアドループ出身のジャック・スワルツ・バルト(Jacques Schwarz-Bart)(1962-)のテナー・ソロも力が入っている。ハーグローブの「Kamala's Dance」はバラード系の曲で、まったりとした気分になる、なかなかいい曲。フリューゲルホーンのメロウなトーンがここちよい。ウイリー・ジョーンズ3世の「Another Time」はフリューゲルホーンをフィーチャーしたムーディーでトロピカルムードたっぷりのバラード。リズムの種類はわからないが、このパーカッションが作り出すリズムは何とも心地よく、癖になるものだ。曲のムードに沿ったヘルナンデスのピアノ・ソロも悪くない。ギターのエド・チェリーの「B and B」は典型的なサルサのリズムに乘ってにぎやかに繰り広げられる。バルトのオリジナル「Lullaby From Atlantis」は、静かなホーンのアンサンブルで始まりながら、子守歌とは思えないダイナミックな展開を見せる。中間部に登場するホーンのアンサンブルも秀逸だ。アルバム中最もラテン色の薄い曲だろう。シダー・ウォルトンの「Afreaka」は、速いテンポでお祭り騒ぎのような曲だ。ノリが良く、聴いているとウキウキする。ハーグローブのソロも曲調に合わせたコミカルさがあり、思わず笑ってしまう。トロンボーンのソロには馬のいななきや象の鳴き声が入っていて面白いが、他の曲でも同じパターンが続くため、少し飽きてしまう。ピアノとのデュオであるラリー・ウィルスの「Ethiopia」でも、何よりもそのメローなトランペットの音色に惹きつけられる。最後はハーグローブの民族色豊かな「Priorities」。言葉はわからないが、セリフが入ることでラテンの気分が一層感じられる。ガブリエル・ヘルナンデスの端正なピアノが、ともすればお祭り騒ぎになりがちな音楽を引き締めている。また、ソロこそないものの、エド・チェリーのファンキーなギターが良いスパイスとなっていた。期待していなかったが、録音はノイズが殆どなく、高域の抜けが良く、悪くなかった。欲を言えば低域がもう少し欲しいところだ。 ということで、これが第2作目とは思えないほどの完成度で、繰り返しになるが、なぜ当時リリースされなかったのか(契約関係?)が気になるところだ。Roy Hargrove:Grande-Terre(Verve 7511258)16bit 44.1kHz Flac1.Gabriel Hernandez:Rumba Roy2.Gerald Cannon:A Song for Audrey3.Roy Hargrove:Lake Danse4.Roy Hargrove:Kamala's Dance5.Ed Cherry:B and B6.Willie Jones:Another Time7.Jacques Schwarz-Bart:Lullaby From Atlantis8.Cedar Walton:Afreaka9.Larry Willis:Ethiopia10.Roy Hargrove:PrioritiesRoy Hargrove(tp,flh)Frank Lacy(tb)Sherman Irby(as)Jacques Schwarz-Bart(ts)Gabriel Hernandez(p)Larry Willis(p)Ed Cherry(g)Gerald Cannon(b)Miguel "Anga" Diaz(perc.)Jose Luis Changuito Quintana(perc.)Julio Barreto(ds)Willie JonesⅢ(ds)Recorded April 1998,La Terreur studio ,Guadeloupe,Pointe-à-Pitre
2024年11月10日
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以前取り上げたことのある、ラトビアのアコーディオン奏者クセーニャ・シドロワ(1988-)の新譜が出ていることを知り、昨年発売された一枚とともに、eclassicalからダウンロードした。昨年出たアルトゥルス・マスカツ(Arturs Maskats)の作品集も面白いが、今回は「Crossroads」というアルバムに触れてみたい。最初はバッハの「ピアノ協奏曲第1番」。筆者にとって殆ど馴染みのない音楽だが、シドロワによる編曲は全く違和感がない。普通だと少し古めかしい感じのする曲だが、アコーディオンだとかえって新鮮に聞こえる。また原曲だとソロが貧弱に聞こえる印象があるが、アコーディオンでは何故かそういう感じではない。バックとともに、生気に富んだ音楽が展開されている。次の6曲はウクライナのキエフ生まれのセルゲイ・アフノフ(Sergey Akhunov)(1967-)の作品。ChatGTPによると、『伝統的なロシア音楽や民族音楽を現代的な視点で再解釈し、無調音楽や新しい音響技法を駆使して、自由なリズムや音色の探求を行った革新的な作曲家』とのことだ。アコーディオンは現代音楽との親和性があり、アフノフの音楽でもそれが感じられる。最初の『Sketch III』はアコーディオンの独奏曲。バッハの『平均律クラヴィーア曲集』のアルペジオ奏法の前奏曲スタイルで作曲されたピアノのための作品で、シドロワがアコーディオン用に編曲したものだ。『協奏曲シャコンヌ』は管弦楽との共演で、暗くひんやりとした感触の静かな作品だ。アコーディオンはあくまで管弦楽に色を添える位置づけだろう。メロディアスな一曲であり、アルバムの中でも特に印象的な作品だ。Ⅰは暗い色調で静かに始まるが、後半の持続力のあるテュッティによる圧倒的なダイナミズムに度肝を抜かれる。Ⅱはアコーディオンのモノローグで、ビブラフォンのサウンドが絶妙にマッチしている。Ⅲでは、弦のさざ波のようなサウンドにアコーディオンが色を添え、印象的な楽曲となっている。一見すると柔らかく優しいサウンドに感じられるが、その内に心をざわつかせるような要素が潜んでいる。Ⅳは静けさの中に突如として凶暴な楽想が現れ、心穏やかに聴くことが難しい。ここでもビブラフォンの響きが強く印象に残る。アコーディオンのリズム部分にバッハの『シャコンヌBWV 1004』の引用も聞かれる。Ⅴでは、弦の優しい旋律が流れる中、途中でアコーディオンのソロが挿入される。時折聞こえる木魚やビブラフォンの音も効果的だ。トライアングルのような、チーンという音も聞こえてくる。続いてはバッハの『オルゲルビュヒライン』の中の『主イエス・キリストよ, われ汝に呼ばわる』BWV639。シドロワの子供のころから弾いていた曲で、オルガンでは平板な印象になりがちだが、アコーディオンでは表情が豊かになり、より楽しめる。ブルガリア生まれのドブリンカ・タバコヴァ(Dobrinka Tabakova)(1981-)のThe Questから第2曲『Horizons』(2023)。タバコヴァは交響曲から合唱曲まで数多くの作品を作曲しており、録音も多数ある。タバコヴァはシドロワがロンドン時代に親しくなったそうで、『Horizons』はピアノ協奏曲(2010)の第二楽章を編曲したものだそうだ。宇宙の広がりを連想させるスケールの大きな楽曲だ。Gabriela Monteroはヴェネズエラのピアニスト兼作曲家ガブリエラ・モンテロのピアノの即興演奏を基にした曲。編曲に際してカデンツアが改訂されたという。原曲は後半ジャズ風になってしまっているが、アコーディオン版ではバッハ的な雰囲気を残しつつも、端正な表情を崩さず、柔らかで安らぎに満ちた音楽に仕上がっており、感動的だ。作曲者自身のピアノによる演奏もyoutubeにアップされている。原曲のほうが、よりバッハのイメージに近い感じだ。シドロワの故郷ラトヴィアの交響楽団の音楽は、メリハリの効いた積極的なアプローチで、透明で清々しいサウンドとともに、とても心地よいものであった。曲にまつわるエピソードを知ると、シドロワの探求心と積極的な行動が、この素晴らしいアルバムを生み出したことがよくわかる。アコーディオンに興味のある方には、ぜひ聞いていただきたい。Gabriela Montero:Beyond Bach原曲Ksenija Sidorova:Crossroads(Alpha ALPHA1090)24bit96kHz Flac1.Johann Sebastian Bach:Concerto in D Minor, BWV 1052 (Transcr. for Accordion and Orchestra by Ksenija Sidorova)4.Sergey Akhunov:Sketch III5.Sergey Akhunov:Concerto Chaconne10.Johann Sebastian Bach:Ich Ruf Zu Dir, Herr Jesu Christ, BWV 639 (Transcr. for Accordion by Ksenija Sidorova)11.Dobrinka Tabakova:The Quest: II. Horizons12.Gabriela Montero:Beyond Bach (Arr. for Accordion by George Morton and Ksenija Sidorova)Ksenija Sidorova (accordion)Latvian National Symphony OrchestraAndris PogaRecorded in September 2023 at Riga Sound Recording Studio, Latvia.
2024年11月08日
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渡辺貞夫カルテットの演奏を北上さくらホールで聴く。駐車場が異常に混んでいて、第3駐車場という殆ど整備されていない草ぼうぼうのところに止めなければならないことになった。後で気が付いたのだが、午後二時から北上フィルの定期がありそれで混んでいたと思われる。確か創立30周年記念の演奏会でマーラーの「巨人」が演奏されるので混んでいたのだろう。自分も行くつもりだったのだが日曜日だと思い込んでいて、忘れてしまった。同じ日だったらハシゴでもよかったのだが、後の祭り。。。閑話休題今回は山形、宮城以外の東北4県を回るツアーで、前半は春にリリースされたアルバム『Peace』を中心とした内容、後半はブラジル音楽を中心としたプログラムだった。定刻からしばらくして、貞夫さんが、よたよたと登場した。御年91歳なので無理もない。前半は音はきれいだったものの生気に欠け、バックに助けられて何とか持ちこたえているような印象だった。リードの調子もいまいちで、アドリブの途中で止まったり、自分の出番を忘れてピアノに何度か促される場面もあった。また、MC中に言葉を忘れてしまうような場面もあったが、年代は正確に覚えていたのが不思議だった。今回は一曲ごとに貞夫さんのMCが入り、曲にまつわるエピソードなども紹介され有難かった。特に、エリス・レジーナの追悼曲『ELIS』にまつわる話には胸を打たれた。前年の来日公演で共演し、レコーディングする約束を交わしていたが、彼女が帰国してすぐに亡くなってしまったという悲しい出来事だった。後半になるとだいぶ持ち直し、次第に調子が上がってきたようだった。ボサノヴァが大半を占めていたが、その中でも速いテンポのバップチューンがひときわ精彩を放っていたように思う。最後の『I Concentrate On You』はバップ仕立ての急速調の演奏だった。この原稿を書いている際に『I'm Old Fashioned』(EAST WIND)をチェックしたところ、この曲が演奏されており、アレンジも同じだったようだ。今から50年も前の演奏だが、何とも凄まじい演奏で、全盛期の貞夫さんの実力を再確認してしまった。アンコールは小野塚のピアノとのデュオでジョビンの「Por toda a minha vida」がしっとりと演奏された。バックは安定したバッキングで渡辺をサポートしていた。中でも竹村一哲のドラムは、繊細さよりもむしろガンガンとドラムを叩く攻撃的なスタイルが目立っていた。往時の演奏は望めないかもしれないが、これからも演奏を続けてほしいと思う。また、今後もスケジュールが立て込んでいるようなので、健康に留意してほしいと、他人事ながら心配してしまう。ただ、演奏することが健康の秘訣などと本人は思っているのかもしれないが。。。渡辺貞夫カルテット 20241.ホレス・シルバー:Peace2.渡辺貞夫:バタフライ3.渡辺貞夫:One For ??4.渡辺貞夫:Only My Mind5.渡辺貞夫:Tree Tops(梢)6.渡辺貞夫:サイクリング7.チャーリー・マリアーノ:Lopin'8.Cole Porter:I Concentrate On You休憩1.ジョビン:フェリシダージ2.渡辺貞夫:曲目不詳3.渡辺貞夫:エリス4.渡辺貞夫:Call Me5.バーデン・パウエル:Samba em préludio6.渡辺貞夫:Waitng Song7.渡辺貞夫:Manhattan Paulista8.Frank Sinatra;Jack Wolf;Joel S.Herron:I'm A Fool To Want You9.Tad Dameron:Tadd's DelightアンコールAntônio Carlos Jobim:Por toda a minha vida(私の愛のすべてを)渡辺貞夫 (as) 小野塚晃 (p)須川崇志(b)竹村一哲(ds)2024年11月4日北上市文化交流センターさくらサクラホール 中ホール 9列30番で鑑賞
2024年11月06日
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久々のブラック・ダイクバンドの演奏会を観に行った。前回はすみだトリフォニーホールで2019年の演奏会だったので、五年ぶりになる。今回は大規模な曲はオリヴァー・ヴェースピの「ウィリアム・バードの主題による“アンティフォニー”」で18分ほどの曲。この曲は聞いたことがなく、検索したら、ブラックダイクの演奏がこちらで聴けるようだ。オリバー・ヴェースピ(1971-)はスイスの作曲家で、吹奏楽やブラス・バンドの曲を多く書いている。この曲はイギリスの作曲家ウイリアム・バードの没後400年記念としてブラックダイクが委嘱し、その年のヨーロピアン・ブラスバンド選手権で演奏されたという。出典猛烈なスピードで展開される前後半と中間部の緩やかな部分からなり、ブラックダイクの高度な名人芸が最大限に発揮された素晴らしい演奏だった。特にヤナーチェックを思い起こさせるようなティンパニの強打と壮大なエンディングの盛り上がりは鳥肌ものだった。いつもならリリースされるヨーロピアン・ブラスバンド選手権のハイライトがコロナ禍以降リリースされていないので、この曲は是非録音してほしいものだ。最後に演奏されたポール・ロヴァット・クーパーの「上にそして彼方へ」も難曲で、お決まりとはいえエンディングの盛り上がりなかなかだった。他のプログラムはソロをフィーチャーした曲や映画音楽など肩の凝らない構成だった。このバンドのプリンシパル・コルネットのリチャード・マーシャルの独奏によるケニー・ベイカーの「ヴィルトゥオシティ」はさすがのテクニックだったが、前回聞いたときに比べ音量が小さく、音もパサついていて今ひとつ。今回の独奏者の中で最も良かったのは、アダム・ボカリスのユーフォニアムをフィーチャーした「ダブリンの空の下」だった。優れたテクニックと少しかためのサウンドが心地よかった。ギャレス・ハンドのシロフォンによる「ヘルター・スケルター」は、色物として面白かった。彼の抜群のテクニックに加え、ユーモアのある仕草や表情のコントラストが印象的だった。他の曲でも何度か写真を撮っていたので、バンドの中でもユニークな存在なのかもしれない。今回のステージは、楽員が立ったり座ったりとかなり忙しそうだったが、ショーアップされた演出で楽しませてくれた。席は12列と比較的前の方だったが、ブラスバンドの特性で音があまり飛んでこない。すみだトリフォニー・ホールの時は4列目で素晴らしい音だったので、ブラスバンドの演奏会は出来るだけ前の席の方がよさそうだ。12月に岩手ブリティッシュブラスの演奏会があるので前のほうの席で楽しみたい。ブラック・ダイク・バンド 20241.E.ボール:行進曲「スター・レイク」2.ヴェルディ(ハワード・ローリマン編):歌劇「ナブッコ」序曲/3.ケニー・ベイカー(ジャック・ベベーディ編):ヴィルトゥオシティ(コルネットソロ:リチャード・マーシャル)4.【ストリクトリー・ブラック・ダイク】 アーヴィング・バーリン(ゴフ・リチャーズ編):レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス ピアソラ(プライス編):リベルタンゴ ラヴェル(スネル編):ボレロ5.ポール・ロヴァット・クーパー:グリーン・バレーにて(テナーホーンソロ:しヴォーン・ベイツ)6.オリヴァー・ヴェースピ:ウィリアム・バードの主題による“アンティフォニー”休憩7.J.ウィリアムズ(グレイアム編):オリンピック・ファンファーレとテーマ8.【ソリスト・ショーケース】 伝承曲(ロバーツ編):キャラックファーガス(バリトンソロ:マイケル・カヴァナー) ポール・ロヴァット・クーパー:ダブリンの空の下(ユーフォニアムソロ:アダム・ボカリス) W.G.レモン(ウッドフィールド編):ヘルター・スケルター(シロフォンソロ:ギャレス・ハンド)8.【ブラック・ダイク 映画コレクション】 J.ウィリアムズ(ダンカン編):映画「ハリー・ポッター」シリーズより B.コンティ(バリー編):映画「007 ユア・アイズ・オンリー」より H.ジマー(ロバーツ編):映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」より9.ポール・ロヴァット・クーパー:上にそして彼方へアンコール1.ローリマン:Highland Cathedral2.ピーター・グレイアム:ゲール・フォースブラック・ダイク・バンドニコラス・チャイルズ2024年10月29日さくらホール 1階12列25番にて鑑賞
2024年11月04日
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今月号のジャズ批評を見ていたら、寺島レコードからヘンリック・グンデ(Henrik Gunde Pedersen)(1969-)というピアニストのアルバムが2枚リリースされていることを知った。ジャズ批評では大きく取り上げられていたが、Jaz.Inでは新譜紹介で触れられているだけだった。ふたつの雑誌の編集方針の違いが伺える、とても興味深い扱いだと思う。CDはリリースされていなくて、寺島さんが、どうしてもということでリリースされたようだ。念のため配信されていないかチェックしたところ、spotifyで聞くことができた。なかなかいい演奏だったのでダウンロードできないかチェックしたところ7 degitalとQobuzでリリースされていることが分かった。それで、Qobuz usからハイレゾをダウンロードした。ジャズ批評の豊嶋淳志氏の記事によると、「Moods」(2022)は各種配信で数か月のうちに500万回を超える再生回数に達したという。この結果続編の「Moods,vol.2」がリリースされたとのこと。ベースはイェスパー・ボーディルセン(1970-)、ドラムスがモーテン・ルンド(1972-)という布陣。どちらもデンマーク生まれで、3人とも50代半ばの脂の乘りきったミュージシャンだ。彼らは90年代から本格的に活動し、今回のアルバムの前には「Corner Love」(2008)と来日した際に残した「Dark Eyas」(2009)がある。グンデの演奏は聞いたことがなかったが、リリカルで粒立ちのよい透明なピアノが実に心地よい。曲の解釈にはが感じられる。スタンダードを中心にした選曲で、最後にオリジナルを演奏している。特に新奇な解釈は見られないが、キース・ジャレットの影響がかなり感じられる。また、かなり斬新なアレンジが施されている曲があり、スタンダードの演奏としては尖ったものだろう。最初の「Blame It on My Youth」はオーソドックスな解釈で遅めのテンポでじっくりと歌いあげている。目についたのはグリーグの「ソルヴェイグの歌」。原曲はペールの帰りを待つソルベーグの気持ちを歌ったものだが、原曲の静かな佇まいとは異なるアグレッシブなアレンジ。ピアノのメロディーは感情の高まりを抑えた静かなものだが、今回の演奏はベースとドラムスが激しいプレイで、(良い意味で)原曲のイメージから大きく離れている。こういう解釈もありか、という目から鱗の演奏だと思う。「My Funny Valentine」はやや速いミディアム・テンポのリズミカルな解釈でピアノのアドリブも躍動的だ。ぐいぐいと突っ込んでくるベースとドラムスのプッシュも強力だ。「Kärlekens ögon」はスウェーデンのバリトンサックス奏者で作曲家のラーシュ・グリン(1928 – 1976)の作品。穏やかな叙情に満ちた曲で、癒される。イントロに短いドラムソロが入るルグランの「シャルブールの雨傘」は速いテンポで進む、スタイリッシュな演奏。歯切れのいいドラムスが印象的だ。「バイバイ・ブラック・バード」もテンポが速く、スピーディーな進行で、ノリのいい演奏。「Softly as in a Morning Sunrise」は前乗りの素っ気ない感じの風変わりなテイストが感じられるアレンジ。通常の陽気な感じではなく、乾いた感じになっているところが面白い。最後はグンデのオリジナル「Fanølyng」。Fanølyngはデンマークのファン島に生えているヒース(低木の一種)を指す様だ。ファン島の自然の景観を表しているのだろうか。カントリー・テイストの穏やかな曲調で、まったりできる。全曲を通じて、重心が低く美しいサウンドのベースと、多彩なドラムのプレイが、トリオの厚みとスケール感のある演奏を生み出している。「Mood,vol.2」も同じような傾向の演奏で甲乙つけがたい。録音は骨太のサウンドで、どちらも優れているが、Mood,vol.2のほうが鮮度が高く、高音の抜けもいい。特にシンバルの澄み切ったサウンドが実に心地よい。ヴォリュームを上げてもうるさくならない。ということで、今まではCDのベストセラーにばかり関心を持っていたが、配信のみの音源にも目を向ける必要があることを痛感させられた。Henlik Gunde:Moods(Mingus Records )24bit 96kHz Flac1.Oscar Levant:Blame It on My Youth2.Richard Rodgers:My Funny Valentine3.Edvard Grieg:Solveigs Sang4.Lars Gullin:Kärlekens ögon5.Michel Legrand:I Will Wait for You6.Ray Henderson:Bye Bye Blackbird7.Henry Mancini:Moon River8.Sigmund Romberg:Softly as in a Morning Sunrise9.Henrik Gunde:FanølyngHenrik Gunde(p)Jesper Bodilsen(b)Morten Lund(ds)Recorded 2020
2024年11月02日
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