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2011.12.20
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カテゴリ: 音楽
もともとアメリカ大陸には弦楽器がなく、従って先住民の伝統的な音楽は笛と太鼓だけで演奏されます。初めて弦楽器を見たインカの人々は、仕方がなく太鼓(ケチュア語で「ティンヤ」)と呼んだと言われます。しかし、それから500年経った現在では、ギターはラテンアメリカで最も重要な楽器になりました。

ところでギターってのは誰もが知っている楽器ですけれど、いつの時代からある楽器かはご存じでしょうか。
ギターの祖先に当たる弦楽器は古い時代からありましたが、現在の形の6コース6弦のギター(クラシックギター)が完成したのは、1800年前後のことでした。ただし当時のギターは、形は現在と同じですが、今より小振りでした。現在のサイズに大型化したのは、19世紀の終わり、つまり実は完成してからまだ100年ちょっとしか経っていない楽器なのです。

ということは、スペイン人がアメリカ大陸を征服した当時、今のギターはまだなかったわけです。ではその当時スペイン人がもっていた弦楽器はどのようなものだったか。
当時のヨーロッパで盛んだった弦楽器(撥弦楽器)は主に2つあったようです。一つはリュート。そして、もう一つはビウエラ・デ・マノです。このうち、ギターの祖先となったのはビウエラ・デ・マノだったと考えられています。

Wikipediaによると、ビウエラ・デ・マノに関する文献や楽譜はたくさんあるものの、肝心の実物が世界に3台しか現存しておらず、それも互いに形やサイズが異なっているそうです。ただ、現存する3台のうち1台はエクアドルで発見されているので、この楽器が南米大陸に渡っていたは確かです。
もう一つはっきりしているのは、ビウエラ・デ・マノは6コース複弦楽器だったこと。複弦というのは、1コースに複数の弦が張ってあることです。現在のギターは、1コースに1本の弦が張ってある単弦楽器です。
ビウエラ・デ・マノから、19世紀初頭頃に生まれた現在のギターまでの間には、今日では「ルネサンスギター」「バロックギター」と呼ばれる弦楽器が存在しましたが、これらも複弦楽器です。

現代に復元されたビウエラ・デ・マノの演奏動画が、YouTubeにアップされています。




ギターと比べて、どうでしょうか。音は華やかですが、低音は乏しい気がします。
ギターが複弦から単弦に変化したのは、巻弦が発明され、低音弦に使われるようになったことが大きく影響しているようです。現在のギターの高音弦は、かつてはガット(羊の腸)、現在はナイロンで作られています。一方低音弦は、低音弦は芯線の周りを針金で巻いた巻き弦が使われていますが、これが発明される前は低音弦にもガット弦が使われていたそうです。
ナイロン弦は高音の響きが美しいのですが、低音はあまり豊かに響きません。ガット弦も多分ナイロンと同様でしょう。だから、巻き弦がなかった時代には、低音弦の音量と音質を保つために、複弦が必須だったのでしょう。

と、ここで気がつくのは、アンデスのフォルクローレに必ず登場するもう一つの弦楽器、チャランゴのことです。
チャランゴ



チャランゴもまた、ビウエラ・デ・マノから派生した楽器と言われています。しかし、複弦であること、現在のギターより小型であることなどから、むしろチャランゴの方がギターよりビウエラ・デ・マノの特徴をより多く受け継いでいるのかも知れません。奏法はかなり異なりますが。
チャランゴ発祥の地と目されるボリビアのポトシ北部地方には、金属弦を用いた独特のチャランゴとその奏法があります。(現在のチャランゴはナイロン弦を使用)



コードで擬似的にメロディーを弾く、独特の奏法が使われます。

同じくポトシ北部の弦楽器コンコータ



見た目はバロックギターに似ているのですが、フレットが5フレットあたりまでしか刻んでありません^^;

そして、同じくビウエラ・デ・マノから派生したと思われる、南米特有の弦楽器が他にもあります。
まず、エクアドル・コロンビアの金属弦の複弦ギター「ティプレ」



これは、確か4コース12弦だったと記憶していますが、どうだったかな。(自分じゃ弾いたことがないのです)

そして、ベネズエラのクアトロ



これは単弦4コースで、ウクレレに酷似しています。(ウクレレより大型ですが)
チャランゴのストロークも独特ですが、このクアトロのストロークというのは、それ以上に独特で、複雑怪奇です。ただのストロークなのに、どういうリズムになっいするのか、よく分からなかったりします。

ところで、もう一つのヨーロッパの古弦楽器リュートはどうでしょうか。




リュートはスペインにはほとんど入ってこなかったそうです。ということはアメリカ大陸にも入っていないはずですが、マンドリンは現代のラテンアメリカで比較的よく使われる楽器です。普通のマンドリンは丸底で4コース8弦ですが、南米のマンドリンは平底(フラットマンドリン)で、4コース10弦(高音弦は1コース3本ずつ弦が張ってある)、から4コース12弦(全コース3弦ずつ)もありますが、調弦はヨーロッパのマンドリンと全く同じです。(バイオリンとも同じ)



それにしても、これだけラテンアメリカ特有の弦楽器があっても、それでももっとも普遍的でもっとも基礎になる弦楽器は、やっぱりギターなのです。まあ、聞き比べれば分かると思いますが、これらのラテンアメリカで土着化した弦楽器とギターを比べると、ギターの方が明らかに低音が響くのです。ギターはある程度エレキベースの代わりになると書きましたが、さすがにチャランゴやクアトロでは、どう弾いたってベースの代わりにはなりません。
だから、100年前、現在の形のクラシックギターが完成したとき、あっという間にラテンアメリカ中に広まったのでしょう。
しかし、逆に言うと、ギターに基礎を置くラテンアメリカの民謡はすべて、100年前以降に現在の形になったということでもあります。アンデスのフォルクローレはさらに新しい時代(完成が1960年代)の音楽ですが、そのほかの民謡も、実はそれほど古いものではない、ということです。





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最終更新日  2018.04.22 18:49:16
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