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2013.01.30
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カテゴリ: 戦争と平和
帝京大学教授・志方俊之 邦人救出へ自衛隊法改正を急げ


だが、問題は現行法に大きな制約が課されていることだ。
第1に、外務大臣の依頼が必要であること、輸送の安全が確保されていること、自衛隊の受け入れに関わる当該国の同意を要すること、という3つの前提が満たされるときに限定されている。
外務大臣の依頼は当然だが、現地で輸送の安全が常に確保されているとは限らない。そもそも安全が確保されていないからこそ、邦人の緊急避難が必要になるのだ。当該国が混乱して自衛隊の受け入れに同意しない最悪の状況も考えておかなければならない。
「行動権限」も極めて非現実的な範囲に限られている。自衛隊の行動はあくまで「輸送」であって「救出」はできない。使用する輸送手段も輸送機(今回は政府専用機)、船などに限定され、陸上輸送は想定外となっている。

≪ついでに助けての小切手外交≫
輸送の安全が確保されているのは、緊急避難が極めて早期に発令されてまだ現地が安全な場合か、現地に危険があっても、当該国や他国の部隊が在外邦人を安全な空港や港湾まで輸送してくれる今回のような場合か、である。
邦人が輸送されて安全な空港や港湾に集まっているのなら、自衛隊の航空機や艦船が迎えに行くまでもなく、民間航空機か、チャーター機が迎えに行けばよい。今回は、迅速性を重視した政府の特別判断で政府専用機(航空自衛隊が管理・運航)が使われた。
多くの邦人が危難に直面する場合、邦人だけが大挙して緊急避難することはほとんどなく。多国籍の避難者多数がその場にいることが多い。そうした状況下では、避難者の多い関係国が、協働・調整・協力して救出活動や輸送活動をするのが国際常識である。
緊急避難すべき外国人の中で在外邦人がかなり多いと、現地の日本大使や領事、防衛駐在官は関係国の担当者と会談して、次のような交渉をすることになる。
「日本の国内法で、自衛隊は安全が確保された地域での海空の輸送に限った任務しかなく、救出に当たれない。申し訳ないが、貴国の避難者を救出するついでに日本人も救出して安全な所(空港や港湾)まで運んでいただきたい。経費と礼金は必ず支払う。そこから先の輸送は自衛隊が行う」。まるで「小切手外交」である。

≪国際非常識の武器使用権限≫
わが国特有の制約はもう一つある。現場での自衛隊の武器使用権限を極端に制限していることだ。輸送の安全が確保された場所で航空機や船舶を守るため、保護下に入った邦人などを航空機や船舶まで誘導する経路で襲撃された場合に限り、正当防衛・緊急避難としての武器使用が許される。
テロ集団と銃火を交え、自国民だけでなく日本人も救い出し安全な場所まで警護してくれた諸外国の避難者が、空港などの別の地点で襲撃されているのを見ても、自衛隊は自国の避難者と保護下に入った者を経路上で守るためにしか武器を使用できない。恩ある国の避難者を見殺しにして国際的な顰蹙(ひんしゅく)を買っても、である。(以下略)

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アルジェリアのテロ事件で日本人が10人も殺されるという、衝撃的で痛ましい事件をきっかけにして、自衛隊法改正という意見が沸き上がっているそうです。たまたまそのような主張の代表例として産経新聞の「正論」があったので、引用しました。
中身を読んでいると、どうも首をかしげたくなるような内容です。志方俊之は、現行法による邦人輸送の3条件を「非現実的」と言っていますが、私には志方俊之の言い分の方が非現実的であるように思えます。

3条件とは
外務大臣の依頼が必要であること
輸送の安全が確保されていること
自衛隊の受け入れに関わる当該国の同意を要すること

だそうです。いずれも、当たり前の話だと思うのです。外務大臣の依頼という条件は、さすがの志方も異を唱えていないので、問題になるのは残る2条件です。

当然のことながら、邦人輸送は戦争ではありません。あくまでも海外で法人の安全を確保することが目的です。であれば、邦人の安全を確保するための輸送で邦人を危険に晒すとしたら、それは自己矛盾というものです。人輸送に自衛隊の輸送機が出張ってきたが、撃墜されて輸送中の邦人は全員死亡なんて事態になったら本末転倒なので、輸送の意味がないのです。従って、輸送の安全確保は絶対条件でしょう。


同じく、「保護下に入った邦人などを航空機や船舶まで誘導する経路で襲撃された場合に限り、正当防衛・緊急避難としての武器使用が許される。」というのも、当然の話だと思います。それ以上の範囲で武器を使用したら、それはもう戦争です。

更に、陸上輸送なんてことまで言っていますが、現実にそんなことが可能だと思っているのでしょうか。

「現地の日本大使や領事、防衛駐在官は関係国の担当者と会談して、次のような交渉をすることになる。」なんて、まことしやかに書いていますが、その内容は本当に事実なんでしょうか。私は首をかしげざるを得ません。なぜなら、自国民の陸上輸送のために、世界のどこにでも軍の車両を派遣する能力がある、なんて国は、米国以外にはないからです。アルジェリアを例に取れば、アルジェリアまで自衛隊の車両を持ち込んで、現地で陸上輸送に当たる、なんてことが、能力的な面で不可能であることは明らかでしょう。そもそも、アルジェリア政府がそんなことを認めるとは思えません。

緊急時の邦人輸送が問題になったのは、イラン・イラク戦争時のイランと、湾岸戦争時のイラクですが、現地で空港までの陸上輸送は、すべて現地で車を手配したはずです。もちろん、チャーター料を払って、志方の言う「小切手外交」をやったはずです。
そんなことは当たり前で、その当時のイランやイラクに、いったいどこの国が軍の車両を派遣できたというのですか。米国すら(というより、米国こそ)そんなことは不可能に決まっています。

結局のところ、あり得ない想定で煽って、自衛隊法を改正して海外派兵への敷居を低くしてしまおうという魂胆がミエミエなのです。





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最終更新日  2013.01.30 22:50:12
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