本多勝一氏の「アメリカ合州国」で描写された1969年のニューヨークのハーレムは、白人ときたら警官くらいで治安の非常に悪いところだったようですが、当時だってさすがにここまで怖いところではないと思います。で、いまはハーレムもだいぶ改善されているわけで、まさに南アフリカのソウェトかくらいといったら違うかもしれませんが、私もいろいろ旅行していますけど、こんな怖いところは行ったことは(当然)ありません。

>それにしても、この状況下で、貧困と差別に対して憎悪をたぎらせる若者に「報道の自由」「言論の自由」と言っても、さすがにむなしい。そんなものより生きる自由の方が先だ、ということにならざるを得ないでしょう。

フランスって、「自由」「平等」「友愛(博愛)」を国家スローガンにしているじゃないですか。これではそんなものお題目にもなりません。そして、福祉とか失業者への救済制度は、日本などよりフランスのほうが整っているはずで、政治とか現実とかはそのようなものでしょうが、なんとも絶句するひどさです。

アファーマティヴアクションのたぐいもされているのでしょうが、何とも道遠しですね…。 (2015.01.21 07:13:02)

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2015.01.20
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テーマ: ニュース(95873)
仏スーパー:射殺容疑者育ちの街 偏見と貧困、渦巻く憎悪

クリバリ容疑者が育った同市ラグロンドボルヌ地区の市場に入るや、イスラム教徒とみられる4人の若い男に取り囲まれた。「この間も記者を袋だたきにした」。黒いマスクで顔を覆ったリーダー格の男が怒鳴るような口調で脅してきた。同行したフランス人助手が取材目的を説明しても、とりつくしまもない。憎しみに満ちたまなざしにぞっとして、言葉さえ出なかった。
モスクの建設募金をしていたオマールさんの取りなしで、その場を何とか切り抜けた。しかし、若者らは記者が地区外に向かうバスに乗り込むまでの数十分間、遠巻きに見張り続けた。
パリ中心部から南へ鉄道とバスを乗り継いで約1時間半。5階建てのアパートが無造作に並ぶ。レストランや商店は見当たらず、白人にも出会わない。パリ中心部から30キロも離れていないのに、まるで別世界だ。バスの運転手は「財布を手にした瞬間に強盗に襲われる。気をつけろ」と強くくぎをさしてきた。
ピザ配達さえ入ることができない地区−−。仏フィガロ紙がこう表現した現状を、オマールさんは話してくれた。「行政から見捨てられている。急患対応の医者や郵便配達も、治安が悪いからと来てくれない。火事が起きた時だけ消防がやってくる」。若者の未来も「がんばって大学を卒業し、就職先を探しても、出身地を書いた履歴書はゴミ箱に行く。不公平だ」と嘆く。
~街を歩いて、日常生活での孤立感や「テロの温床」との偏見を食い止めない限り、「第二、第三のクリバリ」は止められない気がした。(以下略)

---

フランスで、アルジェリア系移民などへの差別が存在することはもちろん知っていましたが、これほどまでの状況とは、絶句するしかありません。私は、南米でスラム街的な地域に足を踏み入れたことはありますが、もちろんそういうところには悪いやつ(スリ、かっぱらい)はいるにしても、割合ではあくまで少数派で、「珍しいやつが来た」という視線はあっても、憎悪の視線を多数受けた経験はありません。
日本でも、スラムと言っても間違いではないところに足を踏み入れたことは多々ありますが、こういう意味での危険を感じたことはありません。人格面に問題を抱えた特定の個人に、危険を感じたことならありますけど。

「行政から見捨てられている。急患対応の医者や郵便配達も、治安が悪いからと来てくれない。火事が起きた時だけ消防がやってくる」

火事のときだけ消防車が来るというのは、日本語では「村八分」と言いますね。それを行政自らが行ってしまうのは、発展途上国ならいざ知らず、先進国の一員としてはどうなのか、ということになります。もっとも、現実問題として、行政サービスに従事する職員や、宅配ピザの配達員の安全を保障できないでしょうから、こういう対応にならざるを得ないのでしょう。まさしく負の連鎖です。

※そう考えると、日本では、清川・日本堤だろうが百人町だろうが、寿町だろうが、釜ヶ崎だろうが、警察も救急も郵便も、税務署も保健所の保健師も介護のケアマネも、生活保護のケースワーカーも、おそらく宅急便もピザの宅配もすし屋の出前も、何の問題なく、一人でやってきます。日本ってすごいかも、と思わないでもありません。

それにしても、この状況下で、貧困と差別に対して憎悪をたぎらせる若者に「報道の自由」「言論の自由」と言っても、さすがにむなしい。そんなものより生きる自由の方が先だ、ということにならざるを得ないでしょう。そして、テロ対策も何も、このような差別と貧困の温床を放置したままでは、お酒を飲みながらアルコール依存の治療をするようなもので、効果が望めるとは思えません。
フランスという、世界有数の先進国の一角に、同じフランス人でありながらおよそ先進国の生活レベルとは隔絶した人たちが放置されている、多分こういう状況はフランスに限った話ではないですけど、国家を分断して治安を悪化させる、もっとも根源的で深刻な要因はそこにありそうです。





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最終更新日  2018.06.09 08:21:05
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Re:あまりに根の深い問題(01/20)  
Bill McCreary さん

Re:あまりに根の深い問題(01/20)  
gaulliste さん
百人町って、新宿区のですかね?
小学生の頃、人生で一度だけのカツアゲにあったところですねw
もう、40年近く前です。一銭も渡しませんでしたが。
相手も数人の小学生か中学生で、ちょっと殴られたりした後に、大人が通りかかって、すぐに逃げて行きました。
当時は分からなかったのですが、ラブホテル街でしたから、夜は怖いところなのかも知れませんね。

現在のフランスがこんなにひどいとは思いませんでした。
少なくとも、20年くらい前から人種差別的な話は聞いたことがありますが、あまりにもレベルの違う話に驚きました。
実は昔からこうだったのか、つい最近、こうなったのか。 (2015.01.21 20:47:06)

Re[1]:あまりに根の深い問題(01/20)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

>本多勝一氏の「アメリカ合州国」で描写された1969年のニューヨークのハーレムは~すがにここまで怖いところではないと思います。

そうですね。何というか、「治安」とか、そういうレベルの話ではもはやないように思います。

>私もいろいろ旅行していますけど、こんな怖いところは行ったことは(当然)ありません。

私もです。1980年代ペルーの、センデロ・ルミノソ支配地域は、かなり危険があったと思われますが(特にアヤクーチョ)、さすがにそのような地域には足を踏み入れていません。
と、言いたいところですが、実は、インカの都だったクスコから、チチカカ湖畔の町プーノまでの鉄道は、どうもセンデリスタに襲撃されたことがあるらしく、1989年当時、いくつかの駅の壁に、センデリスタのスローガンがスプレーで書き込まれていました。
あの当時、ペルーの治安状況は、明らかに破綻していました。

>福祉とか失業者への救済制度は、日本などよりフランスのほうが整っているはずで、政治とか現実とかはそのようなものでしょうが、なんとも絶句するひどさです。

そうですね。フランスの国籍制度は血統主義が基本のようですが、聖地主義の要素もあって、旧植民地出身者や移民から何世代も経過している人は、簡単に国籍が取れるようです。だから、ここに取り上げられている人たちの多くはフランス国籍を持っているものと思われますが、それにもかかわらず、これではフランス人としての扱いを受けていない、ということになりそうです。 (2015.01.21 23:56:20)

Re[1]:あまりに根の深い問題(01/20)  
inti-sol  さん
gaullisteさん
>百人町って、新宿区のですかね?

そうです。カツアゲですか。そりゃ大変でしたね。実は、私のFB友達が、近く日本に来る(観光目的)のですが、東京で取った宿が、百人町だというのです。
おいおいおい、と思って、一応百人町とはどんな場所かは伝えたんだけど、実際には具体的なトラブルに巻き込まれる可能性は高くはないでしょうけどね。

>当時は分からなかったのですが、ラブホテル街でしたから、夜は怖いところなのかも知れませんね。

怖くはない、と思います。そのとなりの歌舞伎町は、いわずと知れた風俗街ですが、夜に一人で歩いて怖い、と思ったことはありません。ただ、環境という意味ではね・・・・・・(そういえば、新宿区役所は、文字どおり風俗街のど真ん中に立っています。あんなとんでもない立地環境の役所は、日本唯一ではなかろうかと)

>実は昔からこうだったのか、つい最近、こうなったのか。

想像ですが、ある程度は昔からでしょうが、急増したのは近年じゃないでしょうか。 (2015.01.22 00:06:22)

Re:あまりに根の深い問題(01/20)  
Bill McCreary さん
>近く日本に来る(観光目的)のですが、東京で取った宿が、百人町だというのです。
おいおいおい、と思って、一応百人町とはどんな場所かは伝えたんだけど

外国人旅行者には、山谷とか釜ヶ崎あたりの宿が人気があるようですね。もちろん安宿として。百人町についても、たぶんバックパッカー系の連中には有名なのかもです。

そういえば、ラウルは知りませんが、フィデル・カストロが国連総会でニューヨークに来るときは、ハーレムのホテルに泊まるという話を聞いたことがあります。なんでハーレム、と思ったのですが、宿泊代を節約するとか、いろいろな意味合いがあるんでしょうね。米国とキューバの国交が回復したら、カストロ兄弟、少なくともラウルはワシントンに行くのでしょうかね。

>だから、ここに取り上げられている人たちの多くはフランス国籍を持っているものと思われますが、それにもかかわらず、これではフランス人としての扱いを受けていない、ということになりそうです。

そうなんですよね。上の記事でもあるように、履歴書に出身地を書いただけで嫌がられるなんてまさに世も末です。白人がいないなんてのも、最悪の場所だから・・・というものでしょう。先のコメントにも書いたように、まさにかつてのハーレムかソウェトのようなところです。フランスは、米国や南アフリカほど治安が悪いところではないはずですから(実は私もパリですりにあったのと、2人組の黒人に絡まれそうになったことがあります。これは幸い逃げられました)、まさに社会の吹き溜まりみたいなところですね。 (2015.01.22 07:29:48)

Re[1]:あまりに根の深い問題(01/20)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

>外国人旅行者には、山谷とか釜ヶ崎あたりの宿が人気があるようですね。もちろん安宿として。

はい。日本人でも、知り合いが、卒業旅行で大阪に行ったとき、西成に泊まったとか。「ドヤ」も「簡易旅館」も、言葉として知らなかったのですね。就職して、そういうところに関係する仕事に就いたとたんに、自分が泊まったのがどういう場所だったか気が付いたようですが。

百人町についても、たぶんバックパッカー系の連中には有名なのかもです。

かも知れませんね。彼は男性なので、あまり問題はないでしょうけど。女性だったらちょっとねえ。

>フィデル・カストロが国連総会でニューヨークに来るときは、ハーレムのホテルに泊まるという話を聞いたことがあります。

そうですね。ただ、1960年の国連総会出席のときは有名ですが、それ以降はどうだったのかな、と思います。

>米国とキューバの国交が回復したら、カストロ兄弟、少なくともラウルはワシントンに行くのでしょうかね。

そうですね。でも、フィデルは体調の面からちょっと難しいでしょうね。

>そうなんですよね。上の記事でもあるように、履歴書に出身地を書いただけで嫌がられるなんてまさに世も末です。

はい。これでは自由平等博愛の名がなくというものです。 (2015.01.22 21:50:48)

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