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2015.11.29
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テーマ: 戦争反対(1248)
カテゴリ: 戦争と平和
報道ステーション」の偏りぶりに『新潮』が噛みついて 「イスラム国を利するもの」…


朝日新聞の投書欄「声」、TBS系「サンデーモーニング」のコメンテーター田中優子法大総長などの意見を批判した後、〈真打ち〉として取り上げたのが「報ステ」の古舘伊知郎キャスター。16日の放送ではこう言い放ったという。
〈この残忍なテロはとんでもないことは当然ですけども、一方でですね、有志連合の、アメリカの誤爆によって無辜の民が殺される(中略)ドローンによって無人機から爆弾が投下されて、皆殺しの目に遭う。これも反対側から見るとテロですよね〉~
要するに「報ステ」、古舘キャスターは「空爆もテロ」「ISには軍事力より対話を」と言いたいらしい。が、〈論外の主張〉と中西輝政京大名誉教授が一刀両断。
〈「テロとは一般の庶民の生命と財産を意図的に奪い、人々に恐怖を与え、自らの主張を通そうというもの(中略)誤爆は決して故意ではない(中略)人道的な意味でのモラルのレベルがテロとはまったく違うのです」〉
〈「テロと同一視する議論は、テロの悪質さを覆い隠してしまうという意味で、結果的にイスラム国を利するもの(中略)そのレベルでの発言しかできないのは、国際社会における日本への信頼を傷つけることに繋がります」〉~

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テロと誤爆は違うというのは、もちろん理論上はそのとおりです。だけど、現実にはどうか。誤爆の被害を受けた人たちに「これはテロリストに対する正義のための戦いのやむを得ぬミスだから、あきらめてください」と言えば、彼らが納得するのか?納得しないからこそ、反欧米のイスラム過激派が勢力を伸ばしているのでしょう。その現実の前で、こんな理屈が何の説得力を持っていないことは、明らかなのです。

「空想的平和主義」を非現実的だと批判したり嘲笑する自称「現実主義者」は数多くいます。しかし、そういう「自称」現実主義者が本当に現実主義なのかは、大いに疑問の余地があります。
イスラム国をめぐる問題などは、まさしくその典型だと思われます。

いうまでもなく、イスラム国がやっていることは、凶悪なテロであり、また「内政」(イスラム国を国家として承認している国はないけれど)も大変な抑圧による恐怖の支配であるようです。そのような組織を擁護したり賞賛する気は、私にはまったくありません。
しかし、です。ここまでの経緯を見る限り、イスラム国の勢力拡大を助長したのは、間違いなく欧米諸国です。
シリアにおいては、もともと「アラブの春」を契機として、アサド政権と反政府派の激しい内戦が始まりました。アサド政権は親ロシア派の独裁政権である、というので、欧米諸国はこぞって反政府勢力を支援していました。しかし、反政府勢力の実態は、主張も思惑もまったく違う様々な勢力の呉越同舟に過ぎなかったのです。その中には、現在のイスラム国の母体となった武装組織もありました。そのことは、当時の時点でも盛んに報じられていたように記憶していますが、欧米諸国は、それにもかかわらず、シリア反政府勢力の支援を行っていました。アサド政権のほうがイスラム過激派組織より憎かったのでしょう。
彼らは、凶悪ではあったけれど結束が強く、戦意が高かった。それに、資金力もあったのでしょう。それに対して、他の反政府勢力はそうではなかったため、欧米諸国からの軍事援助をイスラム国へ横流し、などという例もあったようです。
つまり、イスラム国を、少なくとも途中まで支援してきたのは他ならぬ欧米諸国に他なりません。


そして、その構図は以前、他の地域で起こったことと瓜二つのように思えます。それは、アフガニスタンです。1980年代のアフガニスタンは、旧ソ連が支援する親ソ派のカルマル政権と、反ソ派のムジャヒディンとの泥沼の内戦でした。旧ソ連は軍事介入したものの、西側諸国が支援するムジャヒディン(イスラム戦士)のゲリラ戦に屈して撤退に追い込まれました。が、西側諸国の支援を受けて勢力を拡大し、ソ連に勝ったムジャヒディンの中に、後のタリバンがいたことはよく知られています。
9.11のあと、米国の支援を受けた北部同盟がタリバンを首都から追い払いましたが、米国の支援と軍事介入にもかかわらず、できたのはそこまでです。タリバンは首都を追い払われて山岳地帯に追い詰められますが、壊滅はせず、近年は勢力の復調も著しいと言われます。
シリアの例と同様で、タリバンは、もちろん非人道的な勢力ですが、現実問題として、アフガニスタンに、非人道的でない政治勢力など存在しないのです。

イラクにおいては多少経緯は異なりますが、結局イラク戦争でフセイン政権を倒したところ、なおいっそう状況がひどくなってしまった、という点では似たようなものです。イラクにおいてイスラム国の主力になっているのは、新政権で冷遇されたフセイン時代の政権・軍関係者で、能力的には新政権より高いといわれます。一方の新政権は腐敗がひどくて、統治能力が低い。政府軍の兵士に給料が行き渡らない(途中で中抜きされてしまう)ので、政府軍の戦意は低く、武器も横流しして金に替えてしまうので、イスラム国との戦闘でも圧倒されてしまっている、と報じられています。そもそも、シーア派主体の政権なので、スンニ派に対しては互いに敵対的な関係で人心を掌握できていません。

さらに古い話を持つ出せば、かつてイランでイスラム革命が起こったとき、欧米諸国(旧ソ連も)はこれを敵視して、イランに攻め込んだフセイン政権のイラクを支援していた、という事実もあります。そのイラン・イラク戦争が終わったとたんに、フセインはクウェートに攻め込んで欧米の敵になった。それから更に紆余曲折を経て、今ではスンニ派のイスラム国という共同の敵を前にして、米国はイランとの和解を進めようとしている。

結局のところ、欧米諸国が短期的な視野で、「独裁政権」や「非人道的なイスラム過激組織」を武力を以って倒したら(シリアでは、完全には倒れていませんが)、もっとひどい連中が勢力を伸ばしてしまった、という事態を何度も何度も繰り返して現在に至っているわけです。もはや、誰が敵で誰が味方か、さっぱり分からない状態です。
イスラム国と話し合うのは、なかなか難しいでしょう。が、間違いなく言えることは、イスラム国を倒したとしても、それに変わる別の過激組織が勢力を拡大するだけだ、ということです。

世の自称現実主義者どもは、いったいどういう出口戦略をもってイスラム国に当たれというのか。空爆で戦果を誇って、その実、大した打撃を与えることもできず、彼らの怒りと復讐心だけを掻き立てて、外見上の「成功」を誇れば良しとするのか(当然、その後には激しい報復テロが繰り返される)、あるいは、イスラム国を完全に覆滅させればよいのか(そのあと、イスラム国よりひどい過激組織が勢力拡大しても、それは見て見ぬふりをする)、イスラム過激派敵勢力をこの世から完全に消滅させるまで戦うのか(当然、地上戦ということになり、何十万か何百万の兵力と、果てしない時間が必要、戦費は、想像もつかないし、そもそも成功の保証もない)。
私の見るところ、上記に挙げたようなどのようなやり方よりも、軍事的には何もせずに成り行きに任せる(もちろん、人道的支援は行うにしても)ほうが、多少なりともマシな結果になりそうだと思えるのですが、自称現実主義者たちの目算は違うのでしょうか。





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最終更新日  2015.11.29 13:39:10
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