inti-solのブログ

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2025.08.19
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テーマ: ニュース(95921)
駆除のヒグマは26歳を襲った個体


現場付近では15日に親子とみられる3頭のクマが駆除されていて、男性を襲った個体かどうかDNA鑑定が行われていました。
その結果、3頭のうち母グマの肝臓と、男性の衣服についていた体毛と唾液のDNAが一致したことがわかり、男性を襲い死亡させたクマと断定されました。
北海道内ではクマによる人身事故が度々起きています(最近の死亡事故は以下の通り)
■2023年5月 幌加内町の朱鞠内湖で、釣り人の54歳男性がクマに襲われ死亡。
■2023年10月 福島町の大千軒岳で、1人で登山していた22歳の男子大学生がクマに襲われ死亡(男性を襲ったクマはその後、消防隊員3人を襲うも、ナイフで返り討ちに遭い死ぬ)
■2025年7月 福島町で、52歳の新聞配達員の男性がクマに町中で襲われ死亡(DNA鑑定で2021年7月に福島町内で農作業中の77歳女性を襲い死亡させたクマと同一個体と判明)

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人を襲ったヒグマが駆除されたことが確認され、とりあえずホッとしています。
一度人を襲い、その味を知ってしまったヒグマは、再び人間を襲う可能性か高いと言われます。引用記事でも、2021年7月に77歳女性を襲った個体が、今年7月に52歳男性を襲っていたことがDNA鑑定で判明したとあります。従って、人を襲ったクマは駆除しなければあまりに危険です。そして、人里に出てきて農地などを荒らすクマについても、同様のことが言えます。人間活動への被害は無視できないし、何らかの異変で人を直接攻撃するリスクもありますから。

というわけで、何が何でもクマを殺すのはけしからん、という言い分には、私はまったく同調できません。やむを得ない場合には駆除するしかないのです。
しかし、みんな駆除してしまえ、絶滅させてしまえ、という言い分に対しては、これもはっきりと反対です。生態系の一員として、ヒグマは(本州のツキノワグマも)必要な存在です。

ヒグマの事故が起きた羅臼岳には、私は2回登っています。2007年と2021年ですが、そのうち2008年の時、私もヒグマと鉢合わせをしています。岩尾別温泉から羅臼岳への登山道は、途中にアリの巣の多い一帯を通るのですが、アリは、ヒグマの大好物の一つなのです。そのため、当時はこのような警告板がありました。


下山時、丁度この警告板の区間でヒグマに遭遇しました。その時のことは 以前に記事を書いたことがあります。 。若い、少なくとも体長は私よりだいぶ小柄な(でも体重はどうだったか分かりませんが)個体でした。私を見て必死で逃げていく、そのスピードのすさまじく速かったことはよく覚えています。

で、この警告板は650m岩峰と呼ばれる付近にあったようです。ここから、警告板にある「オホーツク展望」までの距離は500mあるかどうか、というところ。もう一つ「560m岩峰」というものもあり(昭文社登山地図には560m岩峰しか記載がありません)、今回の事故があった550m地点というのは、この560m岩峰か、その近辺のことでしょう。ということは、当時の警告板が示していた「ヒグマ遭遇多発区域」内で起きた事故であったことが分かります。


なお、この警告板は2度目に行った2021年には見当たりませんでした。ヒグマ遭遇多発地帯の始めと終わりに同じ看板があったのに往復とも気付かなかったので、見落としではないでしょう。理由は分かりませんが、おそらく撤去されたのだろうと思います。

その翌年2008年にも知床でヒグマに遭遇していますが(この時は羅臼岳には登っていません)、この時はバスの車内から窓ガラス越しに見たので(わざわざ運転手がバスを止めて乗客に撮影させていた記憶があります、私は写真は撮りませんでしたが)、意味合いがまったく違います。この時はかなり大きな個体でした。

二度目の羅臼岳となった2021年には、幸い私自身はヒグマと遭遇することはありませんでした。ただし・・・・


岩尾別温泉木下小屋脇の登山道入口にヒグマ情報が出ていました。


入山者の多い週末を中心に、連日ヒグマとの遭遇が報告されているとのことでした。


羅臼平にはフードロッカーが設置され、荷物をデポする場合は食料はこの中に入れて、ヒグマに取られないようにします。私はテン泊ではなかったので、荷物をデポせず、従って食料も残置しませんでしたが。

なお、この時に聞いた話で、その数日前に、登山道の真ん中に(前述のアリの巣の多い地帯なのだと思います)ヒグマが1頭居座ってしまい、一心不乱にアリを食べ続けていて、登山者が下山できなくなる事態が発生した、ということです。最後は結局、やむなく、アリに無我夢中のヒグマの脇を恐る恐るすり抜けた(ヒグマには完全無視された)そうです。伝聞ですが、そんな事態もあったと聞いています。

でも、当時知床ではヒグマによる人身事故は1件も起きていないと聞きました。もちろん、その陰にヒヤリ・ハットはあったのだと思います。ヒグマに対してカメラのフラッシュを焚く観光客、食べ物をやってしまう観光客の話は耳にしており、それが続けばいつかは、という危惧は関係者にはあったものと思います。しかしそれでも、今回の人身事故が初めての事例だったようです。
コロナ前の数値ですが、知床国立公園の利用者は年間170万人以上に達するそうです。事故のあった斜里側が120万人以上、羅臼側が50万人以上です。そして、羅臼岳の年間入山者は岩尾別側から年間6000人(羅臼側は不祥だが岩尾別側よりかなり少ないと思われます)です。それに対して人身事故は今回が初めてとすると、その「事故率」は極めて低いものです。

さらに言えば、知床以外の場所ではヒグマによる人身事故は続発していましたが、それでも、その 被害規模は、過去64年間で死者60名、けが人122人 というものでしかありません。なお、 各年の詳細な統計 を見ると、近年でもっとも人身事故が多かったのは2021年ですが、死者4人、けが人10人という規模であったことが分かります。


それに対して、人身事故は前述のとおりです。事故に遭遇する確率は、どんなに高く見積もっても毎年1万分の1よりかなり低いことは確実です。人間を餌たと思っているヒグマがいることは確かですが、その割合が極めて低いこともまた確かなのです。
子連れの母熊とか、餌を横取りされると思われるなど、ヒグマが狂暴化する条件がいくつかありますが、それらを忌避すれば、ヒグマはそこまで危険な存在ではない、ということです。

個別具体的に、人を襲った履歴のヒグマがまだうろついている場所に限定すれば、全体平均の発生確率よりも人身事故の発生確率ははるかに上がるので、そういった場合に放置してよい、ということてはありません。ただ、フラットに全体の平均として言えば、そこまで極度に恐れる必要があるわけではないく、多分交通事故に遭う確率の方がはるかに高いのです。

従って、冒頭に書いたようにヒグマを絶滅させろ、なんて極論は論外なのです。そもそも、そんなことは実現可能性もありません。そういう極論を言う人に限って、行政はヒグマをまったく駆除していない、と思い込んでいるのですが、そんなことはありません。2023年には、年間1804頭のヒグマが捕獲され、過去最多だったと 報じられています。 この数字はおそらく駆除と狩猟の合計ですが、大半が駆除です。昨年は700頭前後と捕獲数は大幅に減少していますが、それでも過去の統計の中では捕獲数はかなり多い年になります。なお、捕獲数の増減は、駆除に力を入れたかどうかに左右されているわけではなく、自然界における餌の豊富さに左右されます。自然界がエサ不足だと、人里に出てくるヒグマが増え、駆除数も増えます。

従って、ある程度の駆除は行いつつも、ヒグマとは共存していく、好むと好まざるとにかかわらず、それ以外の選択肢はありません。





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最終更新日  2025.08.20 06:52:52
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