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「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「あんたの所為で、うちの人生滅茶苦茶や~!」「まぁ、八千代さん、こんな夜中にうちに何の用どす?」 歳三がそう言いながら外に出ると、八千代は彼の頬を平手で打った。「あんたやろ、うちの事を旦那さんに告げ口してカフェーをクビにさせたんは!」「いやぁ、そないな事うちは何も知りまへんえ。逆恨みも大概にしとくれやす。」 飄々とした歳三の態度に、八千代はますます苛立ちを募らせた。「あんたなぁ!」「おいあんた、何してるんや!」「この疫病神~!」 警察官に連行されながらも、八千代は歳三に向かって怨嗟の言葉を吐き続け、しまいには彼に草履を投げつけた。「姐さん、大丈夫どすか?」「大丈夫や。おかあさん、顔洗うてきます。」「わかった、お休み。」「へぇ。」 翌朝、歳三達は昨夜の事を一切話さなかった。「ほなおかあさん、舞の稽古に行って来ます。」「そうか。気ぃつけてな。」「へぇ。」 歳三は舞の稽古へと向かったが、稽古場で日頃彼を目の敵にしている梅がやって来た。「いやぁ、あんたその顔どないしたん?」「昨夜畳に突っ伏して寝てもうたんどす。」「そういえば、昨夜あんたの所に警察来てはったけれど、何かあったんか?」「あぁ、酔っ払いがうちの前で暴れてなぁ、えらい迷惑でしたわぁ。」「そうか、それは難儀やったなぁ。」「へぇ。」 舞の稽古が終わり、歳三が稽古場から出ると、外は雨が降っていた。(チッ、ついてねぇな・・) 風呂敷を頭の上に掲げて雨を凌ごうかと歳三が思った時、すっと誰かが彼に傘を差しだしてきた。「どうぞ。」「おおきに。」 歳三は自分に傘を差しだしてくれた青年に礼を言うと、彼は、“門屋の仲吉どす”と自己紹介してくれた。「そうどすか。」「姐さん、気を付けて。」「へぇ。」 歳三が“野村”に戻っても、雨は止まなかった。「今日はよう降るなぁ。」「へぇ。夜までに止めばええんどすけど。」「そうやなぁ。」 雨は、夜更けまで降り続いた。「トシちゃん、入るえ?」「おかあさん・・」「あんた、どないしたん?」「何や、頭が痛うて堪らへんのどす。」「気圧の所為やろか?」「そうやろうなぁ。暫くお座敷を休みよし。」「へぇ。」「余り無理したらあかんえ。あんたは頑張り過ぎる所があるさかいなぁ。」「すいまへん。」「謝らんでもよろしい。これは神様から与えられたお休みやと思うてゆっくりしおし。」「へぇ。」 謎の頭痛に襲われた歳三は、数日お座敷を休む事になった。(一体何だってんだ、帯状疱疹が治ったっていうのに・・) 布団の中で寝返りを打ちながら、歳三は溜息を吐いた。「春月、おまんの姐さんはどうした?」「竜胆さん姐さんは、体調を崩してもうて・・」「そうかえ。八千代の事は聞いたぜよ。あの毒蛇な女につきまとわれて、竜胆もとんだ災難ぜよ。」「へぇ。」「まぁ、こういったものは中々治らんぜよ。気長に待つしかない。」「そうどすな。」「春月、竜胆の事頼んだぜよ。」「へぇ。」 坂本は、風呂敷包みの中に入っていた菓子の箱を千鶴に手渡した。「これは?」「この前、ちょいと仕事で札幌まで行ったんじゃが、美味いクッキーを見つけてのう。みんなで食べや。」「おおきに。」「“人生は山あり谷あり”じゃ。嫌な事ばかりじゃないぜよ。」「そうどすな。」 千鶴が“野村”に戻ると、玄関先には見慣れない男物の靴が置かれてあった。「おかあさん、ただいま帰りました。」「春月ちゃん、お帰り。」「お客様どすか?」「そうや。春月ちゃん、それは?」「坂本様からの、札幌土産どす。」「そうどすか。竜胆は後でうちから渡しておくさかい、あんたはもう部屋に戻ってお休みや。」「わかりました。」 千鶴は、あの靴の持ち主が誰なのか、何となく察しがついた。 それは・・「トシさん、大丈夫?」「あぁ。」「ねぇ、本当に大丈夫なの?」「耳元で喚くな、うるさい。」「ごめんなさい。」「それで、わざわざ東京からこっちに来た理由は一体何なんだ、八郎?」 歳三はそう言うと、突然自分を見舞いに来た八郎を睨んだ。「ねぇトシさん、本当にあの人とは縁が切れたの?」「それは、お前ぇには関係のない事だ。」「でも・・」「俺の為を思ってくれているのなら、もう俺とあの人との事を尋ねるのはやめてくれ。」「わかった。」「トシちゃん、入ってもええか?」「どうぞ。」「これ、坂本様から札幌土産や。」「お気遣いして貰うておおきにと、坂本様にお伝え下さい。」「わかった。邪魔してもうて、堪忍え。」 さえはそう言うと、部屋から出て行った。「八郎、これからどうするんだ?」「そうだよなぁ、今夜は何処かのホテルに泊まるよ。」「八郎、俺ぁもうあの人と別れた。」「え?」「向こうの奥さんから、もううちの亭主と会うなと直接言われたら、そうするしかねぇだろう。それに、俺は他人の家庭を壊す事なんざ考えちゃいねぇよ。」「そうか。」「八郎、まだ泊まる所を決めていないのなら、うちに泊まるのか?」「え、いいの?」「あぁ。」 歳三はそっと布団から起き上がると、さえの元へと向かった。「そうか。あんたがえぇと言うのなら、うちは何も言わへん。」「おおきに、おかあさん。」「さてと、もう夜ももう遅いし、ゆっくりお休みや。」「へぇ。」 翌朝、歳三が目を覚ますと、隣に寝ていた筈の八郎の姿は何処にもなく、丁寧に畳まれた布団の上には、“お世話になりました”という、置き手紙があった。「おかあさん、おはようさんどす。」「おはようさん。伊庭様なら、つい先程出て行かはったえ。」「そうどすか。」「それにしても、これから忙しゅうなるさかい、余り無理したらあかんえ?」「わかってます、おかあさん。」 数日休んだだけで、歳三を襲った謎の頭痛は治まった。「竜胆さん姐さん、お久しぶりどす。」「久しぶりやなぁ、元気にしてたか?」「へぇ。これから、師走やさかい忙しくなりますなぁ。」「そうやなぁ。」「竜胆さん姐さん、素敵な簪挿してはりますなぁ?」「これは、この世で一番大切な方から貰うたんえ。」 そう言った歳三の髪には、勇から贈られたルビーの簪が光っていた。にほんブログ村
2021年05月30日
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このブログを開設してからもう14年目に突入しました。 何だかこんなにこのブログが続くなんて思っていなかったんですよね。
2021年05月29日
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読み応えがある短編集でした。 特に最後の話が。
2021年05月29日
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素材はコチラからお借りしました。「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「え、ホームパーティー?」「あぁ、今週の日曜日に、友達も誘っていいって、母さんが。」「わかった。」「じゃぁ勝っちゃん、またな!」「あぁ!」 剣道教室が終わり、歳三は由紀子に、勇をホームパーティーに誘っていいのかどうかを尋ねると、彼女は誘っても良いと答えた。「トシちゃんのお友達だから、パーティーに誘ってもいいに決まっているでしょう。トシちゃんのお友達にも一度会ってみたいし。」「ありがとう、母さん!」 日曜日、土方家でささやかなホームパーティーが開かれた。「うわぁ、すげぇ!ご馳走が沢山ある!」「勇君、沢山食べてね。」「はい!」 テーブルには、唐揚げやエビフライ、フライドポテトやオニオンリングなどが並べられていた。「勝っちゃん、向こうに行って遊ぼうぜ!」「あぁ!」 勇と歳三は、土方邸の中庭へと向かった。 そこには、美しい池があった。「トシの家は凄いな!」「大した事ねぇよ。」「トシは小さい頃から俺と生きる世界が違うんだなぁ。」「そんな事はねぇ!俺は、ずっと勝っちゃんを・・」「トシ、危ない!」 歳三は池の辺りの雑草に足を取られ、そのまま池へ転落した。 必死に池から上がろうとしたが、振袖の所為で身体が動かない。(畜生・・)「トシ!」 激しい水音と共に、勇が歳三を抱え、池から上がった。「トシちゃん、トシちゃん!」「すいません、池に落ちちゃって!」「トシちゃんを助けてくれてありがとう、勇さん。」「いいえ、当然の事をしただけです。」「ありがとう、本当にありがとう。」 病院に運ばれた歳三は、少し水を飲んだだけで、命に別条はなかった。「今日はうちに泊まっていって。」「え、でも・・」「いいわよね、あなた?」「あぁ、構わないさ。歳三の命の恩人だからな。」 歳三の父・隼人は、そう言って勇を歳三と同じ色の瞳で見た。「勝っちゃん!今夜は一緒に寝ようぜ!」「あぁ。」 その日の夜、歳三は勇と一晩中“昔”の話をして盛り上がった。「おやすみ、八郎。」「おやすみなさい、お母様・・」(トシさんに、会いたかったなぁ・・) 熱を出して土方家のホームパーティーに行けなかった八郎は、そう思いながら眠った。「おはよう、トシさん!」「八郎、風邪はもう治ったのか?」「うん。ホームパーティー、来られなくてごめんね。」「別に気にすんなって!」「ねぇトシさん、来週誕生日だよね?何か欲しい物はない?」「ねぇな。」「そう。」 五月五日。 その日は歳三の七歳の誕生日で、由紀子は朝から誕生会の準備をしていた。「母さん、朝から張り切っているな。」「まぁそうだろ、昔は七歳っていったら、神様にご報告をして、盛大に祝う日だからなぁ。」「だから俺、今日も女装しているのか・・」「もう女装しなくてもいいぞ、トシ。:「ふぅん・・」「トシさん、誕生日おめでとう!今日も綺麗だよ。」「ありがとう。」 その日、歳三は真紅の振袖姿で、真紅のリボンで黒髪を飾っていた。「トシちゃん、誕生日おめでとう。」「ありがとう。」「これからも元気で居てくれよ?」「うん、父さん!」「トシさん、大人になったら、僕と結婚して下さい!」「え・・」「こら、歳三君は男だぞ?」「僕達が大人になったら、男同士でも女同士でも結婚できる時代になるよ!」 それから、十五年の歳月が経った。「勝っちゃん!」「トシ!」 桜舞う季節、勇と歳三は警察学校の入学式で再会した。「これから一緒に頑張ろうぜ!」「あぁ!」 警察官の新しい制服に身を包んだ二人は、緊張した面持ちで校長の挨拶を聴いていた。「総代、伊庭八郎!」―え、あいつが・・―そんな・・―嘘だろ?「はい!」 そう言って壇上にあがったのは、幼馴染の伊庭八郎だった。 彼は、歳三と目が合った瞬間、嬉しそうな顔をして笑った。にほんブログ村~
2021年05月26日
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素材はコチラからお借りしました。「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「どうしたの、八郎?余り食べていないじゃない?」「うん・・ちょっと疲れてて・・」「受験が終わったから、疲れるのは当然よね。それにしても、八郎ちゃんは凄いわよね。一発合格なんて。」「ありがとうございます、お義母様。」 姑から八郎の事を褒められ、和子は頬を紅く染めながら彼女に礼を言った。「和子さんに、八郎ちゃんは似たのね。同じ血を分けた兄弟なのに、どうしてこうも頭の出来が違うのかしら?」「母さんっ!」「あら、ごめんなさいねぇ、折角のお祝いの席でこんな事を言うのは駄目よねぇ?」「・・大丈夫です、わたしは気にしていませんから。」 そう言った和子が、ナプキンを強く握り締めている事に、八郎は気づいた。「八郎ちゃん、もうお友達は出来たの?」「はい。」「まぁ、どんな子かしら?」「トシちゃんはね、凄く賢くて強いんだ!」「一度わたしも会ってみたいものだわ。今度その子をうちに連れて来なさい。わたしがクッキーを焼いてあげるわ。」「わ~、やった~!」「お義母様・・」「さぁ、今夜はもう遅いから寝なさい。」「は~い。」 八郎がそう言って自室へ向かうのを見送った後、和子は姑に、“トシちゃん”の事を話した。「まぁ、土方さんのところの子なのね。だったら、八郎ちゃんの友達としては大丈夫ね。」 姑はそう言うと、もう下がるよう和子に命じた。「和ちゃん、起きてる?」「何だよ、うるせぇな。」 和子が和貴の部屋のドアをノックすると、中から不機嫌な表情を浮かべた和貴が出て来た。「あのね、今週末うちでホームパーティーをする事になったの、だから・・」「俺はいい。」「でも・・」「あの人達は、俺の事を“伊庭家の恥”だと思ってんだろ?お受験で失敗した出来損ないだって。」「和貴・・」「俺の事は放っておいてくれよ!」 和子の目の前で、和貴は乱暴にドアを閉めた。「和子さん、何をしているの?早くお部屋にお戻りなさい。」「はい・・」 和子はやり切れない思いで和貴の部屋の前から去った。「トシちゃん、今週末伊庭さんの所でホームパーティーをするから、その日は空けておきなさいね!」「わかった!」「あ~もう、お風呂入った後はすぐに濡れた髪を乾かしなさいって言ったでしょう!」「わかったよ~。」「ドライヤー、そんなに当てないの!綺麗な髪が焦げちゃうでしょう!」「うるさいなぁ、わかってるって!」「トシさん、おはよう!」「おはよう。」「どうしたの、その髪?少し耳の辺りがはねているよ?」「昨夜、ドライヤーで髪を乾かすのを忘れたらこうなった。」「僕が直してあげるよ!」「悪い、頼む。」「任せて!」 八郎は歳三の髪を櫛で梳きながら、昔の事を思い出していた。 あれは、蝦夷共和国を樹立して間もない頃の事だった。『トシさん、その髪・・』『あぁ、ちょっとな。』 京に居た頃は腰下までの長さがあった歳三の髪は、洋装に合わせて短くなっていた。『どうした?』『何だか、綺麗な髪なのに勿体無いなぁって・・』『うるせぇな。』 そう言った歳三の顔は、何処か照れているように見えた。「終わったよ。」「ありがとう。それにしても長い髪はうっとうしいったらありゃしねぇ。」「僕は好きだよ、トシさんの髪。触ると心地良いんだもの。」「そうか?」「お前ら、本当に仲良いよな~」「付き合っているのかよ~?」「そうだよ~」 同じクラスの男子からそうからかわれ、八郎はとっさにそう言って歳三に抱きついた。「おい、離れろって。」「嫌だよ~。」(こうして、トシさんを独り占めできるなんて嬉しいなぁ・・)「トシさん、一緒に帰ろう!」「悪ぃ、俺今日剣道教室があるから。」「そう・・」「じゃぁ、また明日な!」 校門の前で歳三と別れた八郎は、彼が乗った車が次第に学校から遠ざかってゆくのを、雨の中静かに見送った。「勝っちゃん、久しぶりだな!」「あぁ、久しぶりだな、トシ!」 二週間振りに勇と剣道教室で会った歳三は、喜びを爆発させるかのように彼に抱きついた。「苦しい。」「済まねぇ、嬉しくて、つい・・」「そういう所は、昔から変わってないな。」 勇はそう言って歳三に向かって屈託の無い笑みを浮かべた。にほんブログ村~
2021年05月17日
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最後の事件は結末があっさりしていたので良かったですし、かえいときさらぎとの間に確かな信頼関係が出来ていて安心しました。 10巻が刊行されたそうなので、これからが楽しみです。
2021年05月15日
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色々と畳み掛けるような展開がありましたが、もうすぐ完結してしまうのがどこかさびしいですね。
2021年05月15日
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映画はコロナがあるのでなかなか観に行けないので、小説で映画の世界を楽しむことにしました。 活字だけでも作品の臨場感が味わえて面白かったです。 軽くネタバレですが、真純と沖矢昴に扮装した赤井さんとのジークンドーバトルシーンで沖矢さんのマスクがとれそうになった時、遂にばれるかも!?と思ってしまいました。 映画も機会があれば観に行きたいです。
2021年05月14日
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最後はほっとするような展開で良かったです。
2021年05月14日
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最近毎週月曜夜8時にBS朝日で放送されている「ウチ、断捨離しました」を観ては断捨離に目覚めて少しずつものを減らしています。 ・物を増やさない またここ一週間シャーペンを買ってしまいましたが、その分なんとなく置いていた使っていないシャーペン四本を売りましたし、半年以上読み返さない本を8冊売りました。 シャーペンはあまり高く売れませんでしたが、本はかなり高く売れました。 わたしが買うのは専ら本と文具、スナック菓子なので、文具とスナック菓子は買わないようにして、本は図書館で借りることにしています。 気になる本は昨年色々と単行本を買いすぎて金欠になってしまったので…
2021年05月11日
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近未来のNYを舞台にした警察小説。 主人公の刑事・イヴが、権力者にたいしても物怖じしない毅然とした態度をとっており、凛としていて好感が持てました。 このシリーズ、50冊くらいあるので、図書館で借りようかな。
2021年05月10日
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野茉莉ちゃんが可愛いですね。 ラストが不穏な感じで終わりましたね。
2021年05月08日
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アメリカ大統領の息子と英国の王子が恋におちたらーロマンスとしては斬新なLGBTQ小説。 犬猿の仲だった二人が惹かれ、恋人同士となり、厳格な女王と対峙する姿が毅然としていてとても読みごたえがありました。 アレックスのラストの台詞が良かったです。
2021年05月08日
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思い通りにならないのが人生、みたいなものなのでしょうか。
2021年05月04日
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なんだかますます緊迫した展開になっていますね。
2021年05月04日
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画像はコチラからお借りいたしました。「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「そうか。ここを辞めてしまうのは残念やなぁ。」「お世話になったのに、申し訳ありません。」 火月は菊にそう言って頭を下げると、彼女は突然大声で笑いだした。「女将さん?」「阿呆やなぁ。そないな事でうちが怒るかいな。」「えぇ・・」「あんたが人妻やったやなんて、知らんかったわ。」「火月ちゃん、ご主人と仲良うな。」「はい!」 こうして、火月は池田屋の女中を辞めた。「これから、お世話になります。」「あぁ、こちらこそ宜しく頼む。」 火月は隊の風紀を乱さぬよう、土方から男装を命じられたが、彼女は快く受け入れた。「本当にいいのか?」「はい。有匡様のお傍に居られるのなら、これ位苦ではありません。」「そうか。」 有匡は幹部隊士だけが持つことが出来る休息所を与えられ、そこに火月を住まわせるようになった。 突然現れた金髪紅眼の美少年に、隊士達は一斉に騒ぎ出した。―なぁ、あいつ一体誰なんだ?―さぁ・・ 金髪紅眼という珍しい容姿故なのか、火月は隊内では目立つ存在となっていた。「お前ぇを何でここに呼んだのか、わかるよな?」「はい・・」 火月が隊内で噂となっている事を聞いた土方は、有匡を呼び出した。「お前ぇの女房は良く働いてくれている。だがな、あの容姿はかなり目立つ。今、京では未だに尊王攘夷を叫んで異人斬りをする輩がうろついていやがるから、そいつらに目ぇつけられねぇようにしておけ。」「わかりました。」 有匡はそう言うと、土方に向かって頭を下げた。「そういえば、お前ぇの失踪した母親の消息だが・・監察方に色々と探って貰ってはいるが、中々掴めねぇ。」「そうか。」 有匡は、スウリヤが何故実の父親から命を狙われているのかがわからなかった。 一体どんな理由や事情があって実の娘を殺そうとしているのか―有匡は全てを知りたかった。「有匡さん、こちらにいらしたのですね。」「井上さん。」 井上源三郎は、厨で昼餉の支度をしている有匡の姿を見つけると、彼の元へと駆け寄って来た。「この文を、必ずあなたに渡すように言われたんだ。」「あぁ。」 井上から文を受け取った有匡は、それが母の字で書かれたものである事に気づいた。「井上さん、あなたに文を渡した人は・・」「あぁ、まだ屯所の近くに居ると思うけれど・・」「失礼!」「有匡さん!?」 屯所から飛び出した有匡がスウリヤの姿を探していると、少し離れた所に壺装束姿のスウリヤが立っていた。「久しいな、有匡。」「母上・・」 二十数年余の、母との再会に、有匡は何も言えなかった。 何故、自分達の元を去ったのか。 何故、実の父親から命を狙われているのか。 尋ねたい事は山程あったのに、いざ本人を前にすると有匡は何も尋ねられなかった。「今まで、お前達には辛い思いをさせてしまって済まなかった。」「母上・・」「わたしが伝えたい事は、全て文に書いてある。」「待ってください、母上!」「妻を大切にしろ、有匡。」 スウリヤはそう言うと、有匡の前から去っていった。「有匡様、どうかなさったのですか?先程から、浮かない顔をされているようですが・・」「実はな・・」 有匡がスウリヤに会った事を火月に話すと、彼女は驚きの余り目を丸くした。「お義母様は・・」「何も話してはくれなかった。」「そうですか。」「ただ、妻を大切にしろと言われた。」 有匡はそう言いながら皿を洗っていたが、手を滑らせてしまい、割れた皿の破片で指を切ってしまった。「大丈夫ですか!?」「あぁ、大丈夫だ。」 有匡がそう言いながら指先を見ると、そこにはある筈の傷口が塞がっていた。“わたし達は、誰にも知られてはならない秘密がある。それは―”「有匡様?」「何でもない。」 有匡は無理に笑顔を浮かべると、火月を安心させる為に切った指先を見せた。「ほら、大丈夫だろう?」「良かった。」 火月が安堵の表情を浮かべているのを見た有匡は、決して“秘密”を彼女には話さないでおこうと決めた。“火月、お前は・・” 何処からか、誰かの声が聞こえて来た。“お前は・・お前だけは、幸せに・・” 誰かが幼い自分を抱いてすすり泣いている。 鳴り響く銃声と村人達の悲鳴。「火月、どうした?うなされていたぞ?」「昔の夢を見ていたんです。」「そうか・・」 有匡はそう言うと、火月を抱き締めた。「これで眠れるか?」「はい・・」“お前は・・鬼なんだ。”にほんブログ村
2021年05月01日
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